メーカー物流の改善ポイント (その1)
2017-03-29
メーカーは物流の塊のようなものです。協力会社から部品や資材を調達するときに調達物流が発生します。そして工場の中では部品供給や完成品の引き取り物流、出荷物流があります。そして製品をユーザーに運ぶ販売物流があり、通い箱などの回収物流も発生させています。こういった一連の物流を持つメーカーは物流改善に力を入れれば入れるほど、自社サプライチェーンが向上していくことになるわけです。特に自動車メーカーはいわゆる物流の総合商社のようなもので、いろいろな物流パターンが存在します。日本で有数の「物流会社」ともいえるのではないでしょうか。このメーカーにおいて、どのような物流改善に取り組んでいるのかを調査すると、その一番に「在庫削減」が挙がります。この改善アイテムはどこの会社でも発生している欠かせない取り組みだといえます。そこでこの在庫削減につながる取り組みについて考えてみたいと思います。
在庫はすべての行為の結果として発生します。受注予測が外れたために完成品の余剰在庫が発生します。つくりすぎたため、生産着手が早すぎたためでも完成品の在庫は生じます。生産に必要な資材や部品を買いすぎるとその分だけ部品在庫が生じます。まとめて買うと安いからということで、買いすぎによる在庫も発生します。このようにさまざまな要因の結果として発生する在庫。その中でも、まず調達品である部品在庫について考えていきたいと思います。
皆さんの会社ではどの部署が部品発注を行っていますでしょうか。また在庫評価に使う指標は何でしょうか。多くの会社では購買部門が「事務所で」部品を発注し、「在庫金額」を評価指標として使っているようです。もちろん事務所で在庫金額を評価指標として在庫管理を行うこと自体は間違っていることではありません。しかしこの管理方法が生産運営に支障をきたしているとしたら、それは改善する必要があります。在庫はこの管理の仕方でいかようにも変わってくるのです。
在庫を金額で評価すること自体は間違っていませんが、物流の観点からは現物在庫を見ていく方がより実際的な管理ができると思われます。部品発注を事務所で行うと、現場にどれくらいの在庫があるかリアルでわかりません。端末には在庫数と在庫金額が示されていますが、そのボリュームがどれくらいあるのかはなかなか想像がつかないのではないでしょうか。在庫金額は小さくても、嵩が張るもので数量が大きいと在庫管理に苦労します。置ききれない在庫をあっちに持って行き、こっちに移動させ、と物流現場の労力も大きいものとなります。ですから原則として実際に現物管理を行う部署で部品発注を行うことをお勧めします。この役割変更がメーカー物流改善に寄与することは間違いありません。
物流現場では日々在庫を動かしていますから、いつ、どれだけ発注すれば生産現場に支障が出ないのかは肌感覚で分かっています。そういった人たちに管理を任せることがベストなのです。これは外部倉庫でも同様です。外部倉庫で在庫保管と入出庫作業をやっている場合です。このケースでは物流業務をアウトソースしていますので、部品発注業務も併せてアウトソースすることになります。物流現場で在庫の数量管理をやってはいるものの、在庫コントロールまでは手を出していないケースが見受けられます。在庫コントロールとは、生産や発注行為を通して実際に在庫を増減させることです。もちろん、生産や発注の戦略というものもあるでしょう。したがって物流現場では戦略情報も知っている必要があります。その考え方の範囲内で生産指示や発注をかけていくことになります。
メーカーの物流改善では在庫改善が最も重要です。そこで発注の次には生産管理を考えていきましょう。生産現場で在庫コントロールするためには物流でしくみ化することも必要です。生産現場では在庫数を一定とし、その数量を切ったところで自動的に生産指示がかかるようにすることが望まれます。台車を使った在庫コントロールがよく行われています。そのしくみを説明しておきましょう。まず在庫数量を定めます。たとえば在庫数を120個と決めたとします...
。台車には40個載せられるとすると、3台の台車が定量ということになります。この内、1台の台車が出荷されたとします。そうすると1台車分在庫が減りますから、出荷された後の空になった台車を生産工程に届けます。生産工程はその台車分だけ生産することになります。台車を使って在庫コントロールする方式を「台車カンバン方式」と呼びます。海外の会社では日本に学びよく取り入れています。これを導入することで秩序ある生産につながります。そもそも空台車が生産工程に戻ってこなければ生産できないことになりますので。つくりすぎの防止につながるのです。
次回は、サプライヤー支援と人財育成のポイントを解説します。