宅配物流について考える (その3)
2017-04-18
宅配サービスの基本は配送先で手渡しすることで仕事を完了することにあります。これは海外に比べると高いサービスだと考えられます。アメリカなどは軒先に置いて配送完了とすると聞いています。ですから再配達などは基本的に発生しないのです。これが日本と海外との違いですが、日本は手渡しが前提で業務設計されています。消費者もその前提の下、サービスを購入しているのです。当然価格にも入っています。ある程度の再配達はコストに織り込み済みのはずです。そこでこのビジネスモデルを前提にすると消費者が受けるサービス水準も課題となるのです。それは配送品質です。ほとんどのケースでは問題と感じる事例は少ないようですが、時に大きな不満を招くことがあります。
一つの例として、宅配ボックスの悪用が挙げられます。在宅なのに玄関先まで届けずに、宅配ボックスに放り込んで帰ってしまう業者がいるようです。特にお米や水といった重量物でこの問題が発生しているようです。筆者も直接その事例にあたった人に聞いたことがありますが、すぐに配送業者を変えて欲しいと通販事業者に要請したそうです。また、配送担当者の態度や服装も課題です。店舗ではありえないような態度や服装、汗やたばこの臭いなどの問題配送員がいます。
あくまでも消費者にとっては配送員だろうが実店舗の店員だろうと関係ありません。これは物流に携わるものとしてはプライドを持ってきちんとした対応をする必要があると思います。また午前の約束が連絡もなく午後になってみたり、伝票を忘れてきたりと、だらしのない配送員がいることも事実です。これは配送を担当する物流会社による差がありそうです。きちんと教育できている会社と、そうでない会社との差は歴然としてあることも問題視すべきでしょう。最近では配送を自社の社員にやらせる会社も出てきました。サービスレベルをキープする狙いでしょう。
今後の宅配物流ですが、余分な梱包資材を持ち帰るといったサービスが出てきてもよいのではないかと思います。廃棄物の回収業務にあたりますので一定の資格が必要ですが、顧客が真に求めている物流サービスを提供できるとさらによいビジネスモデルとなることでしょう。
ニーズが高まる宅配物流。今後市場が拡大していくことが予測されます。一方でご紹介してきたさまざまな障害。この解決抜きに市場拡大は望めません。今後考えていかなければならないことは配送効率でしょう。ドライバー一人が配達できる件数を増やしていくことです。ユーザーのニーズから考えると高齢者や買物難民に対するサービスを優先させる必要がありそうです。そのニーズは食事の宅配であり、日用生活必需品の宅配であります。これらを着実に配送できるようにしていくことが求められます。高齢者や買物難民の在宅率は高いと思いますので、通常の通販のような再配達比率は高くないものと思われます。
そしてこれらのサービスに対しても適正な対価は必要です。店舗で買っても宅配で頼んでも支払う金額は同じということになれば、ユーザーはより宅配サービスに流れることでしょう。購入金額に応じて配送料を変えていくことはありだと思います。一般的にユーザーは配送料を負担せずに通販業者や小売店が物流コストを負担するケースが見られます。ここは企業戦略によるでしょうが、物流コストがかかっていること自体は消費者に知ってもらう必要はあると思います。
次に不在による再配達対策です。時間指定をにもかかわらず不在というケースがあります。この場合には再配達料を請求することがあってもよいのではないでしょうか。また、在宅にもかかわらず宅配ボッ...
クスに入れて帰ってしまうようなケースでは配送料を返金させるべきでしょう。宅配はビジネスです。それを存続させ、さらに伸ばしていくためには「対価」の問題はあいまいにしない方がいいような気がします。
「配送料無料」という謳い文句で拡大を続けている通販ですが、「配送料分ディスカウント」というような表現に変えて「対価」は発生していることを認識してもらうことも存続のカギとなるでしょう。さらに宅配ボックスや駅の宅配ロッカー、受け取り可能な場所の拡大など、今できることを少しずつ実行していくことが必要です。そしてアマゾンが考えているようなトラックの中を工場にしてつくりながら配達するような時代も来ることでしょう。特に調理品では物理的には可能でしょうから。消費者が便利でぜひお金を払ってでも実施して欲しいと思うニーズを把握しましょう。その延長線上に宅配物流の将来型が見えてくる気がします。