スマートメーター:新環境経営 (その32) 

 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。これまでは、環境経営の視点で、過去に積み上げられてきた知恵を整理してきましたが、これからは、それら知恵の基盤の上に、ICTの支援を受けて、更に効率よく、同じ間違いを繰り返さないことを実現する時代に入りました。前回からスマートXXXXです。スマートハウス、スマートグリッド、スマートタウンに続いて最後はスマートメーターです。
 

1. スマートメーター (Smart Meter)

 スマートメーターは、需要家と電力会社との間での双方向通信を可能にし、エネルギーマネジメントのための機能を備えた「次世代電力量計(電気メーター)」です。 従来のアナログ式誘導型電力量計と異なり、電力をデジタルで計測し、メーター内に通信機能を持たせています。需要家の消費電力や太陽光発電などによる発電量がリアルタイムに把握でき、そのデータを、送配電網を通じて、電力会社に送信します。また、スマートメーターを住宅やオフィス内のHEMS・BEMSと接続し、家電・設備機器と通信し、そのON/OFFや送配電量の調整が可能です。これにより、電力会社管内での電力逼迫時に使用制限をかけるなど、コミュニティレベルでのエネルギー需給制御が可能です。これをデマンドレスポンスと言います。
 

2. スマ-トメーターの機能

(1) 自動検針

 従来、月に1度検針員が直接需要場所に行き、電力量計の指示数を読み取ることで、毎月の電気料金を確定していました。スマートメーターでは、通信回線を利用して電力会社が電力使用量を把握でき、人力による検針作業が不要になるため、人件費の削減・電力使用量の見える化などが期待出来ます。
 

(2) リモート接続・切断

 従来の業務体系では消費者と供給契約を締結したあとに作業員が現地へ赴き、配線の接続を行っていました。スマートメーターでは、予め配線の接続を済ませておいて、通信機能を使って管理箇所からのリモート接続・切断が可能になり、人件費の削減が出来ます。
 

(3) 電力消費量の見える化

 従来の電力量計では1か月に1度、電力使用量の通知を受けるだけで、リアルタイムに消費量を把握することが困難でした。スマートメーターでは、家庭内ネットワークを介してリアルタイムに電力使用量を確認することができます。
 

(4) 家電との連携

 家庭内ネットワークを介し、スマートメーターと家電が通信し、供給状況の最適化を図ることが期待されています。特にデマンドレスポンス技術との連携によって、需要家側が電力の使用を抑制するようスマートメーターを介して家電を制御する技術の研究が進んでいます。この技術により、ピークカットによる負荷平準化ができ、エネルギー使用の効率化が可能になります。
 

(5) 電力消費量データを利用した各種サービス

 電気製品は、機器ごとに特有の消費電力量に傾向を示すので、その消費電力を詳しく分析すれば、家庭やオフィスにおいてどのように電気製品を使用したのかを推定することができます。これらのデータを蓄積することで、顧客に最適な消費パターンを提供することが可能です。
 

3. スマートメーターの課題

 電力使用量データは個人情報を多く...
含んでおり、家庭内ネットワークを介し家電などと通信し供給状況を把握することが可能となる為にプライバシーの侵害が大きな問題とされています。更に、人体に悪影響を及ぼす低周波の電磁波を発する為に欧米では殺人メーターと呼ばれ、電力会社による強制的な設置に反対する動きもあります。また、スマートメーターの導入が進むと検針業務の必要がなくなり、雇用問題が発生すると考えられています。もう一つの問題点は、メーターを通る電力のみしか計量されないので、違法に回路を迂回し、盗電をされている場合は計量されません。現地での検診業務が行われなくなった事により、電力盗難のセキュリティーの面で問題が発生していますが、将来的には電力会社の基本インフラとして機能させなければならず、解決すべき課題です。
 
 次回は、畜エネ補足として、マグネシウム電池について解説します。
 

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