COP21 パリ協定: 新環境経営 (その47)

  
 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。その44からCOP21パリ協定ついて紹介しています。前回は炭素予算、炭素の価格化を取り上げましたが、今回は投資の側面から捉えます。
 

1. 温暖化への適応策

 パリ協定では、温室効果ガスの排出削減策と並んで、温暖化で起こる被害を軽くする「適応策」も地球温暖化対策の柱に位置づけられました。小さな島国が危機感を募らせる海面上昇や、農作物に被害が出る干ばつや多雨など、すでに人々の暮らしや経済に深刻な影響が出ているためです。パリ協定では、温暖化に備えることを世界の共通目標に掲げ、各国はそれぞれ適応策をつくることになりました。さらに温暖化に弱い途上国への支援策も盛り込まれました。途上国の温暖化対策を支援する国連機関「緑の気候基金」は、資金の半分を適応にあてる方針です。
 
 アフリカ南東部のマラウイには気候情報と早期警戒システムをつくるそうです。国民の多くが農村地域の小規模自作農で、雨期の時期がずれ乾期が長くなり、農作物の収穫が減っているのです。又、バングラデシュの沿岸地域はサイクロンや洪水の危機にさらされているため、避難所や避難路をつくります。沿岸村落における気候変動災害リスクマネジメント開発モデル事業です。
 

2. 温暖化への適応策費用

 国連環境計画の報告書によれば、気温上昇を2度未満に抑えられたとしても、途上国での干ばつや洪水、海面上昇への適応策にかかる費用は、2050年に2500億~5000億ドル(約28兆~約57兆円)になる可能性があるということです。ここ数年でも、世界全体で年250億ドル(約3兆円)前後の公的資金が適応策に投じられています。世界の自然災害の損害を調べている独ミュンヘン再保険によると、9割以上は気象によるものです。適応策が必要なのは、インフラなどが脆弱(ぜいじゃく)で温暖化の被害を受けやすい途上国だけではありません。日本政府も昨年11月に「国家適応計画」をつくり、地方自治体でも対策が進められています。
 

3. 適用策費用の支援

 先進国による支援として、古くは地球規模の環境保全のためのプロジェクトへの無償資金協力を行う「地球環境ファシリティ」があります。その他にも京都議定書の枠組みにおいて認められた、途上国で...
温室効果ガスの削減プロジェクトを実施する代わりに先進国が排出権を得る「クリーン開発メカニズム」や、世界銀行を通じて途上国の気候変動に対する支援を行う「クリーン投資基金」等を通じた資金や技術の支援があります。そして今回、「緑の気候基金」が設立されることになりました。
 

4. 「緑の気候基金」への我が国の取組み

 「緑の気候基金(Green Climate Fund)」という新たな多国間基金に対して、日本として15億ドル(約1800億円)を拠出することが決まっています。次回は、温暖化への適応策、途上国支援について、紹介します。
  

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