日本の物流の向かう道(その1)
2017-12-04
物流総合施策大綱 2017-2020が閣議決定されました。この大綱こそが日本の物流の進むべき道を示唆してくれているものです。国としては有識者を集めて何度も論議し、今日本が直面している問題を踏まえての方向性を示しているのだと思います。しかし、今の物流の動きは国の政策と民間の活動系が必ずしもリンクしているとはいえない気がします。最近もっぱら話題になるのは高齢化に伴うトラックドライバーの不足の問題や、宅配荷物の急増による物流サービス水準の低下です。これらの問題は想定外ということはありません。十数年も前から当然予測できていたことです。問題点が顕在化してから国の対策を出すということはあまりにも稚拙な気がしてなりません。
物流はいろいろな省庁での取り組みに分散されています。国の産業を支える血流としての物流として考えれば経済産業省、道路や港湾などの物流インフラの観点から国土交通省、日々のオペレーションを担う人材の観点からは厚生労働省、その他の省庁も絡む形で物流は成り立っているわけです。
視点を変えれば「物流」という機能で見たときに主導的にリードする国の組織が曖昧な気がします。物流というかサプライチェーンの視点では当然経済産業省が旗を振るべきだと思うのですが。日本の物流インフラは世界各国と比べて非常に脆弱です。たとえば国際港湾ですが、かつて横浜港や神戸港などが賑やかだった時代もありました。
しかし、最近では中国やシンガポール、韓国にその座は奪われ、船が日本の港に寄港しない「ジャパン・パッシング」が起きています。旅客だとわかりやすいと思いますが、今まで長い間「成田空港」が国際空港でした。世界でも有数の不便で高価な空港でしたが、最近では羽田空港が復活しようやく顧客視点でのサービスが叶いつつあります。
このように旅客・貨物ともに日本の物流は世界各国に後れを取っている事実を認識しなければならないと思います。この問題は民間の物流を担う会社やスタッフだけの責任ではありません。やはり国としてどのような物流を展開していくべきかの指針と行動が確実に求められているといえるでしょう。
皆さんもご存知の通り中国では「一帯一路」政策が掲げられました。これは、グローバルロジスティクスルートを開拓することで中国を中心とした経済発展を導く基本思想だと思います。この基本思想が各地域における物流の開発と発展を促すことになります。その経済効果たるや計り知れないものがあるでしょう。物流インフラ整備計画も具体的に立案され実行されることでしょう。かつてのシルクロードの再現であり、東西をつなぐ巨大サプライチェーンが生まれます。
また、中国には物流園区があり、その中ではさまざまな優遇制度があり企業を引き付ける誘因力を備えています。これも国家戦略の一つです。日本における保税地域や経済特区が似ているかもしれませんが、物流園区としてのプラットフォームを整備することで共通の高付加価値サービスをユーザーに提供しようとしている点では大きく異なります。
国の物流を発展させていくためにはこのように明確な国の戦略とそれに沿った優遇措置、そしてユーザーのニーズに見合ったプラットフォームが重要です。この点で日本はどうであるかを考えなければなりません。たとえばトラックドライバーの高齢化がもたらす影響についてどうすべきでしょうか。
全国の主要高速道路にトラック専用レーンを設けて、自動運転で荷物を運ぶのでしょうか。そこまでいかずとも、公共のトラックスイッチングポイントを設けて、そこでドライバーが交代できる仕組みを構築するのでしょうか。あるいは...
鉄道を有効に活用するために新幹線の線路に高速貨物列車を走らせるのでしょうか。夜間の未使用時間帯ならこのようなことも考えられます。いずれも国家戦略として考えていかねばならない項目です。
もちろん、民間企業としてもできうる限りのことは考えたうえで実行していかなければなりません。インターネットを活用し、今どこにどれだけの在庫があるのかを常時把握することが可能です。ユーザーからのオーダーに対して、どこの倉庫から届けることがリードタイム的にもコスト的にも有利なのかを判断することは可能です。これによって物流サービス水準を向上させることが可能になります。日本の得意とする品質もさらに向上させていくことが可能となります。今まで人の検査で防いでいた物流不良を今後は機械によって行うことで精度を向上させていくことも可能かもしれません。
次回は、新たな視点での学問と物流人財について述べます。