人的資源マネジメント:「エンゲージメント」の計測(その2)

 前回のその1に続いて解説します。
 

2. エンゲージメントの調査結果

 
 3つの側面について少し説明しておきましょう。
 
図89. エンゲージメントの3つの側面
 
 シャウフェリ教授のモデルにもとづいたエンゲージメントを測定するツールに「ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント・スケール (UWES)」というものがあります。UWES を使って様々な国の様々な職業を対象にした調査結果によれば、エンゲージメントは、年齢や性別による相関は低いこと、エンゲージメントが高い人の割合は全体の 20% で、低い人の割合も 20% 程度だということがわかっています。また、国別、職業別ではエンゲージメントに差があることがわかっていて、日本は最も低いという結果になっています。
 
図90.エンゲージメントの国際比較
 

3. ある設計部門でのエンゲージメント

 
 それでは、エンゲージメントについての事例を紹介しましょう。次の円グラフは、ある B to B ビジネスをやっているメーカーの設計部門を対象にしたエンゲージメント調査の結果です。対象者は、マネジャーとリーダーの約 20 人です。
 
図91.ある設計部門のエンゲージメント調査結果
 
 一般的にマネジャーやリーダーはエンゲージメントが高い傾向があるはずなのですが、この組織では「高い」は 20% 程度で平均的なものの、部長や部門長はショックを受けたのですが、「低い」が約 60% にもなっていました。ただ、改善活動をはじめる理由のひとつに、技術者のモチベーションが低いということが上がっていましたので、予想外だったわけではありません。
 
 意外だったのが、次のグラフが示している個人ごとのエンゲージメントです。
 
図92. 個人別エンゲージメント
 
 ある程度ばらつきがあるとは思っていましたが、結果は想像以上でした。低い人は本当に低く、そんな人が何人もいます。仕事に対するモチベーションにこれほどの違いがあるということは、全員一律の仕組みや教育では効果を出すことは難しいといえます。また、ハードスキルやソフトスキルの面では高いスキルを持っていると考えられるマネジャーやリーダーに、これほどのばらつきがあるということは、一般の設計者への影響は相当大きいはずです。
 
 業務改善やスキル向上のための取り組みの前に、まずエンゲージメントの底上げに取り組む必要があります。そして、その取り組みは、全員一律の取り組みではなく、個人の特性に合わせたものでなくてはなりません。
 
 実際、この会社ではワーキンググループを作って設計の仕組み改善活動を進めている...
のですが、並行してエンゲージメント向上のための取り組みを行っています。機会があれば取り組み結果も紹介したいと思います。
 
 また、今回の記事が、自分、そして、職場の一人ひとりのエンゲージメントについて考えてみるきっかけになればと思っています。エンゲージメントを無視していては、改善や教育の取り組みの効果を期待することは難しいでしょう。
 
  
◆関連解説『人的資源マネジメントとは』

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