人的資源マネジメント:やる気の見える化(その1)
2017-12-14
技術者はもとより管理者も含めた現場のレベルアップが話題になることが多くなったと感じます。受注したい案件や契約はあるのに、現場がいっぱいいっぱいで受けることができない状況になっていて、一人ひとりのスキルをあげることが喫緊の課題になっているところが増えているようです。
スキルアップというと技術やマネジメントなどの専門教育や、実務を通じたOJTの話になりがちなのですが、以前に紹介したように、トレーニングを受ける本人のやる気や意欲が伴わないと、トレーニングにかける時間や費用は無駄なものになってしまいます。やる気や意欲を「エンゲージメント」というのですが、頭ではわかっててもエンゲージメントを意識してトレーニングなどを行っているところはほとんどありません。
今回は、やる気や意欲、すなわち、エンゲージメントを見える化を紹介します。
エンゲージメントとは何かについては、人的資源マネジメント:「エンゲージメント」の計測(その1)をご覧ください。
エンゲージメントを測定する方法の一つにアンケート調査があります。エンゲージメントの3側面である活力、熱意、没頭の度合いを調べるものです。あるメーカーの約40名の技術者を対象に、このアンケートによるエンゲージメント調査を毎月実施しているのでその結果を紹介したいと思います。
アンケートは図のようなもので、「仕事は私に良い刺激を与えてくれると思う」というような、仕事に対してどのように感じたのかを聞く9つの質問からなります。選択式でオンラインで回答するので、回答には1分ほどしかかかりません。
毎月このアンケートを実施し、この1ヶ月の仕事を振り返ってみたとき、どのような思いや感情が表れるのか、そして、それがどう変化したのかを調査しています。回答は点数化して、エンゲージメントの3側面ごとに集計し、点数によって「高い」「中間」「低い」の3段階に分けます。3側面それぞれとトータルのエンゲージメントを点数と評価にして見える化します。
この調査を実施して興味深かったのが、気分や感情を聞いているので、整合性や正確性を気にすることなくまったくの主観で回答してもらって大丈夫だという説明をしたのですが、それでも「先月はどう回答したのか忘れたので、整合性がない回答になっているかもしれません」とか、「そう思った頻度を聞かれていますが正確なことは思い出せません」というような質問をたびたび受けたことです。技術者は、自分の感情を確かめることに慣れていないことの表れだと思っています。パフォーマンスは感情によって左右されますから、技術者にも感情の大切さを知ってもらいたい。この調査がそのきっかけになればと思っ...
ています。
設問が感情や気持ちを聞くという曖昧な文章ということもあると思いますが、「意味がわからない」という質問が多かったのも印象的でした。しっかりと設問を理解してきちんと答えたいという技術者の真面目さが表れているのだと思います。調査を実施する側も補足説明資料を用意するなどサポートを積み重ねて真面目にサポートすることが大切です。このメーカーでは全員が毎月回答してくれています。
次回も、やる気の見える化の解説を続けます。