人的資源マネジメント:思考のクセやワナを知って強くなる(その1)
2018-01-23
レジリエンスを高める方法について解説を続けていますが、今回はレジリエンスを高める4つ目の方法「心理的柔軟性(Mental Agility)」を解説します。
以前、ABCモデルを紹介し「思い込みシート」を書いてみることを勧めましたが、如何でしたか。 心理的柔軟性を身につけるには、まず自分の思考のクセ(思い込み)を把握することも大切です。今からでも「思い込みシート」をやってみることをお勧めします。
思考スタイルを知って「逆境力」を高める(その2)で使用した図129 の思い込みワークシートを書くと、A(Activating Event, 出来事)に対してB(Brief, 思考)という考え方をすることが、C(Consequences, 結果)という感情や行動に結びつくことが実感できます。BとCとがセットになっていることもわかると思います。また、思い込みシートをいくつか書いてみると、自分の思考パターンには一定の傾向があることに気づくと思います。これが「楽観性」のときに解説した「説明スタイル」とよばれるものです。
ここで、図131 に示す代替思考ワークシートをやってみてください。まず、左欄に「自分は普段はそう考えないけど、こういうことも考えることができるな」というBをできるだけたくさんリストアップします。ひとりではなかなか出ないときは家族や友人に聞いてみると良いと思います。
次に、リストアップしたBの一つひとつについて、そう考えるとどのような感情が生まれ、どのような行動になるのかというCを右欄に書きます。
代替思考ワークシートを書いてみると、ひとつの出来事(A)に対して、驚くほどいろいろな思考(B)があることが実感できると思います。この演習は、出来事、思考、結果(感情、行動)というように分けて考えるスキルを身につけ、Aに対していろいろなBとそれに関連するCがあることを頭に刻み込むことを目的としています。
次に、誰もが陥りやすい「6つの思考の罠」とよばれる思い込みを紹介したいと思います。
深く考えずに結論を出してしまうことです。たとえば、声をかけたのに返事がなかったことでその人から嫌われていると考えたり、ひとつのことをダメ出しされただけで自分にはこの仕事は向いていないと考えたりすることです。
このようなときは、出来事に対して結論を出すまでの途中段階を無視していますし、極端な結論になっていることが多いものです。声をかけたのに返事がないのは、こちらの声が聞こえなかったのかもしれないですし、ダメ出しされたのは仕事に対する適性の問題ではなく、確認が足りなかっただけかもしれません。
意識して、広い視野を持ってどのような可能性があるのかを考え、論理的に結論を導いているかどうかを確認することが大切です。
1度のことや数回同じことが続いたことで、いつも同じことになると考えてしまうことです。たとえば、後輩を一緒に飲みに行こうと誘ったのにあっさりと断られたことで、どうせまた誘っても断られるに違いないと決めつけ...
るようなことです。
永久に同じことを繰り返すに違いないと考えてしまうわけですが、相手にも事情があるわけで、いつも同じ状況だとは限りません。その後輩は、断る理由を言いづらくてついそっけない態度になっただけで、別の日には快く誘いに乗るかもしれません。
「いつも」と一般化できるほど事例や証拠は十分なのか、別の可能性もあるのではないかと、意識して考えることが大切です。
次回も、思考のクセやワナを知って強くなるの解説を続けます。