人的資源マネジメント:強みを知り活用して逆境に備える(その1)

 この連載では、レジリエンスを高める方法について解説を続けています。今回はその5つ目、「徳性の強み(Character Strengths)」です。徳性の強みについては、「自分の『徳』を知って成果を出す」でも解説しましたが、今回はレジリエンスの側面から解説します。
 

1. 徳性の強み(Character Strengths)

 
 ペンシルベニア大学のクリストファー・ピーターソンは、全世界の様々な時代の宗教、哲学、文化などを調査することで、時代や民族、国などによって変わらない普遍的な人間としての「徳」があることを発見し、それを図141のように、24の「徳性の強み」に分類しました。
 
図141. 徳性の強み
 
 この24の「徳性の強み」は VIA(Values in Action)と呼ばれており、ペンシルベニア大学のホームページで自己診断することができるということは第41回でお伝えしました。アカウント作成する必要があったり、回答に20 - 30分程度かかる面倒さはありますが、学術的な研究実績にもとづいたものですし、日本語で表示できますから診断してみてください。
 
 Authentic Happiness | 強みに関する調査票(VIA)
 
 自分の強みは自分のことですから誰もがわかっていると思われがちですが、現実には、自分の強みを知っている人は3割程度しかいないといわれています。実際、「あなたの強みは何ですか?」と聞かれて5つ回答できる人は少ないはずです。まずは、客観的に自分の強みを知るために VIA アセスメントをやってみることをお勧めします。
 

2. 強みの活用

 
 いくつかの研究によれば、「強み」を活かすと図に示しているような効果があることがわかっています。
 
図142. 強みを活かしたときの効果
 
 このリストを見るだけでも「強み」がレジリエンスに関係していることがよくわかると思いますが、レジリエンスの観点では「強み」を行動につなげることが重要です。次のようなスキルを身につけて「強み」を活用することができるようになることを狙っています。
 
・自分の上位5つの強みを理解し、試練や目標に立ち向かう際に活用できる
・自分の強み、才能、能力を信頼できる
・自分は強い人間だという姿勢がとれる
 
 自分の強みを知っている人は3割程度といいましたが、強みを活かしている人になるとその割合はさらに少なくなります。この状況を変えるには、人の成長やパフォーマンス向上に強みを活かすことが大切だということを共通認識とする必要があると思いますが、会社でも学校でも「レベルアップのためにはまずは弱点克服」というアドバイスや指導になりがちなことや、個人でもまずは弱点をどうにかしなくてはと思う人が多いことが「強み」の活用の障害となっています。
 
 ある企業の2万人の従業員を対象にした研究によれば、「強み」の活用にフォーカスした場合は従業員のパフォーマンスが平均 36.4% 向上し、「弱み」の...
克服にフォーカスした場合は 26.8% の向上にとどまったというようなデータもあります。弱みを克服するアプローチでは平均的なレベルまでしか狙えないのです。
 
 「強み」の活用の重要性を強調するために、図143に、ピーター・ドラッカーの言葉も紹介しておきましょう。自分に対しても他者に対しても、フォーカスすべきは「強み」なのです。
 
図143. ピーター・ドラッカーの名言
 
 次回もこのテーマを続けます。
  
◆関連解説『人的資源マネジメントとは』

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