人的資源マネジメント:褒める気持ちを伝えるには技術が必要(その2)

 前回のその1に続いて解説します。
 

3. 効果的な褒め方

 
 効果的な褒め方のためにはこの3つのポイントを押さえていればいいのですが、具体的な手順も紹介しておきましょう。少々マニュアル的になりますが知っておくと参考になるはずです。
 
図153. 効果的な褒め方の手順
 
 褒める目的が、その人に褒める対象となった行動をより強化して欲しいときの褒め方と、その人に自信を持ってもらいたいときの褒め方に違いがあることに注意してください。さらに、褒めるときには次のことにも注意しておくと、より効果的な褒め方になります。
 
・目標を達成した後ではなく、目標に向かってがんばっているときに褒める
・批判的な言葉は一切入れない
・相手の性格や立場を考慮した表現にする

 

 
 少し補足説明しておきましょう。目標に向かっているときに褒めるというのは、その人の自信を高め、目標達成への意欲をより高くすることになり、良い結果につながる可能性が高くなるからです。さらに、その人は目標達成のためにより多くのアドバイスを聞き入れる余地が大きくなり、さらなる成長につながることが期待できます。
 
 耳に痛い批判や注意は褒めることとセットにすることで受け入れやすくなると考えたり、褒めてばかりでは調子に乗ってしまうと考えて、褒めることと注意することを一緒に伝える人がいます。しかし、実験によれば、両方を一緒にすると人は批判や注意を受けたことに意識が向いてしまい、褒めた効果が小さくなることがわかっています。また、批判や注意はその問題の行為をとったそのときに伝えるのが効果的だということがわかっています。つまり、褒めるときは褒める。注意するときは注意する。完全に分けるのが効果的なのです。
 
 相手の性格や立場を考慮するのは当然です。たとえば同じプロジェクト・チームであっても経験が長いメンバーと新しく入ったばかりのメンバーでは褒める内容も表現も違ったものになるはずです。その人の性格にも注意を払う必要があります。また、たとえば内向的な人と外交的な人とでは褒めるときの表現や伝え方は変えるべきです。
 
 褒められてやる気になった経験は誰もが持っていて、褒めることが大切なのは誰もがわかっているはずですが、実践は簡単ではありません。
 
「がんばっているのに上司はダメ出しばかりで褒められることがない」
「親からはいつも怒られていて褒められた覚えがない」
 
 上司やリーダーとの関係、親との関係を個別に聞く機会があるのですが、程度はありますがこんな感想を持っている人は多いのです。しかもやっかいなことに、上司やリーダー、そして...
、親に話を聞くと、褒めることが大切だと考えて、日頃から褒めるようにしているという場合が少なくありません。
 
 せっかくの褒めるという行為が彼らに伝わっていないのは、お互いに残念なことです。よりやる気になってもらうことはもちろん、より良好な関係を築くためには、効果的な褒め方を知り、実践することは大切です。まずは、振り返ることからはじめてみましょう。
 
   
◆関連解説『人的資源マネジメントとは』

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