今、ものづくりの現場が目指すべきは「データ指向ものづくり」だと思います。 今回は、インダストリー4.0のような次世代ものづくりの大波への備えともなる 「データ指向ものづくり」とは何かと、それを実現するためには何をすればよいのかについてご説明します。
IoT やビックデータは、ものづくりの世界も大きく変えるのは間違いありません。実際、ドイツを中心としたインダストリー4.0 や米国を中心としたインダストリアル・インターネットという大波は、すでに日本に押し寄せており、日本の製造業は大手も中小も、この変化に否応なく対応を迫られています。
1. データ指向ものづくり
この変化の大波の本質は、開発・製造における人やモノのすべてとその動きをデータ化しネットワークでつなぐことで、いつでもどこからでもデータを活用して、革新的な高効率化、高付加価値化を実現するということです。この本質を明確にするために、私は「データ指向ものづくり」という言い方をしています。
インダストリー4.0 やインダストリアル・インターネットに対応したものづくりを進めている欧米を中心としたメーカーは、ものづくりに関する様々な管理データ(管理指標)を簡単に把握することができます。たとえば、次のような質問にすぐに答えることができるのです。
「現場で必要となる帳票の数は?」
「検査作業にかかっている工数は?」
「設備別の稼働率は?」
「製品別、工程別のリードタイムは?」
「工程別、部品別の不良率は?」
「工程別の労務費は?」
一方、日本メーカーは、これらの質問に答えることができないところがほとんどです。時間をかけて調べればわかるデータもありますが、多くの開発現場では誰もが参照できるような状態になっていませんし、ましてや、必要な人が必要なタイミングで必要なデータを参照したり活用したりできるネットワーク化はできていません。
インダストリー4.0 やインダストリアル・インターネットという次世代のものづくりに必要不可欠なのは、先ほどの質問に「ここを見ればすぐにわかるよ」と答えることができる開発・製造の仕組みです。すなわち、開発・製造に関するあらゆるデータが、ネットワークでつながった開発・製造のどこからでもリアルタイムにアクセスできるようになっている、データ化とネットワーク化にもとづいた「データ指向ものづくり」です。
2. データ指向がもたらす高い生産性
では、データ指向ものづくりを実現するためには何をすればいいのでしょうか? まずは、次の2つから取り組むことだと考えます。ひとつは、製造現場に散在したり重複したりしている部品やユニットの材料費、加工費、納期、不具合、作業時間、リードタイムなどのデータを整理して、常に決まったところから参照できるようにすることです。ここを見ればいつでも製造に関する最新の正しいデータがわかるという仕組みです。
そしてもうひとつは、その整理された製造データを利用して、設計図面や部品表を作っているときにはいつでも、材料費、加工費、納期、組立時間、製造工程不良率などを知ることができる(予測できる)ようにするということです。設計段階で生産しやすいかどうか、すなわち、生産容易性を分析・確認できる仕組みです。
この2つの仕組みを整備することで、設計図面を作っている最中に、原価や組立時間、不良率などがわかるので、レビューミーティングや生産技術との打ち合わせをする...
までもなく、最初から高い製造生産性となる設計が可能になり、生産開始後の手戻りやトラブルを減らすことで製造におけるコストやリードタイムを大幅に改善することができます。
データ指向ものづくりとは、開発・製造におけるすべての人やモノなどのリソースとその動きをデータ化し、そのデータをネットワークでつなぐことでどこからでも活用できる仕組みであり、高い開発効率や生産性を実現するだけでなく、インダストリー4.0 のような次世代ものづくりの大波への備えなのです。今、ものづくりの現場が目指すべきはデータ指向ものづくりではないでしょうか。