メールマガジン バックナンバー

経営工学会MOT研究部会報告(2011/10/04配信)

*******************************************************************
  ものづくり工学通信    2011年10月4日号
*******************************************************************

ものづくりに日夜奮闘されている皆様、

競争戦略論で著名なハーバードスクールのM.ポーター教授が3年前に来日し
た時の講演録を見つけました。日本ものづくり企業の技術力に敬意を払った
上で、最高を目指すのではなくユニークであれと提言していました。
Kanoモデルで言えば、一元品質の競争から脱却して魅力品質を探索しろ、と
いう事になるでしょう。
今号の6項で紹介する濱口先生の「土俵ずらし」とも符合します。
体力勝負から頭脳勝負へと、社会は変質しています。

*******************************************************************
今号の内容
 1.経営工学会MOT研究部会報告
 2.標準化と品質管理全国大会のご案内
 3.品質管理学会年次大会のご案内
 4.開発エンジニアセミナーのご案内
 5.技法解説:#13 TRIZ(8)支援ソフトウェア
 6.書籍紹介「失敗学と創造学」(濱口哲也)
*******************************************************************

 1.経営工学会MOT研究部会報告
9月17日に開催された例会は「知の視点からIE~経営工学の諸技術の適用を
拡大する」というテーマで、クリエーション・プロジェクト代表の河野善
彌氏が講演しました。要旨は以下の通りです。
他の動物と異なり人類は言葉を操る事で有益な情報、知識を蓄積して高度
な判断が可能となった。一方でIEはプロセスの線形性を前提として生産
性の向上に寄与したが、複雑系のソフトウェア開発もその規模を対数軸と
する事で線形である。構造を階層化する事で開発の自動化が可能。
難解なお話でしたが、以前から気になっていた「習熟カーブ」が、単なる
経験則ではなく、対数正規分布という観点で知の集積の結果であるという
説明に得心がいきました。
 http://www.geocities.jp/motbukai/

 2.標準化と品質管理全国大会のご案内
10月17日(月)と18日(火)の二日に渡り、日本規格協会の主催で平河町の
都市センターホテルで開催されます。
1951年に始まる歴史ある大会で、今年は「グローバル社会における持続的
発展を目指して」というテーマで、環境、安全、BCPなどの講演が注目
されます。
品質、生産関連でもコニカミノルタによる品質工学の取り組みをはじめ、
トヨタ自動車、ディスコなどの先端企業の進歩的活動が報告されますので
ご参加下さい。
 http://www.jsa.or.jp/info_detail/zenkoku.asp

 3.品質管理学会年次大会のご案内
第41回年次大会が10月28日(金)・29日(土)名古屋工業大学にて開催され
ます。
全15セッション50発表の中では、統計解析4、医療のTQM3、TQM2
セッションと続き、マーケティングが2セッション7発表もあるのは、製
造品質よりも市場訴求に課題を抱える現代を反映しています。
個人的にはトヨタ自動車の渡辺氏が発表する、パラメータ設計と応答曲面
法の組合せ活用提案に注目しています。
 http://www.jsqc.org/q/news/events/index.html#111028

 4.開発エンジニアセミナーのご案内
研究開発リーダー(http://www.gijutu.co.jp/doc/magazine_research.htm)
8月号、9月号に執筆記事が掲載された(株)ロゴ社上條氏が、真のコスト感
覚を持つ技術者になるためのスキルを伝授します。
「エンジニアは決算書を読むな ~ゼニ勘定のできるエンジニアになるため
に~」と題してハード、ソフトに関わらず、エンジニアのコストに関連す
る意思決定や、簡潔で的を外さない計算ノウハウなどを10月20日(木)10時
~17時、お茶の水税経会議室にて解説します。
 http://www.logokk.com/images/20111020.pdf

 5.技法解説:#13 TRIZ(8)支援ソフトウェア
7回にわたりTRIZを説明してきましたが、50年前にアルトシュラーが始めた
時とは社会の様相が全く違っており、情報の取り扱いにコンピュータはじめ
IT技術は必須になっています。
今では「TRIZ=支援ソフトを使うもの」という感覚になっています。主な
ものは米国Inventio n Machine社のGoldfire、同じくIdeation社のInnova-
tion Workbench、ベルギーCreax社のInnovation Suiteがあります。
それぞれクラシックTRIZを独自に発展させて特徴がありますので、比較の
上で導入を検討して下さい。
下記リンクに比較表がありますが、6年前とはかなり状況が変化しています
ので情報を更新する必要があります。
 http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jlinksref/SWTools/Kasuya-

Tools050323.html

 6.書籍紹介「失敗学と創造学」(濱口哲也、日科技連出版、2009)
失敗学の元祖であり、福島第一原発の事故調査特別委員会トップに就任し
た畑村洋太郎教授のまな弟子である東京大学濱口教授の初単著です。
本書では失敗事例から原因の上位概念を探索し、類似の失敗を広く未然防
止する失敗学を解説した後、全く新しい機能を実現する創造学についても
同様の構造を使って可能になると主張します。すなわち、思考展開図とい
う形式により現在の要求機能を下位概念に展開してゆき、それでも新規性、
優位性がなければさらに下位に分解したり、並列の機能に移動したりして
競争優位のポジションを探索するというわけです。筆者は弁証法にも似る
この考えを「土俵ずらし」と呼び、大発明のためにはQFD/TRIZ以上
に有効であると訴えます。

*******************************************************************
10月に入ってめっきり涼しくなり、学校は後期授業が始まりました。
山梨学院大学のものづくり経営論Bでは、昨年同様に日本経営品質賞のフレ
ームワークを使い、ものづくり企業を題材にグループ討議をしています。
立候補した司会の学生はまだ慣れていないので、意見を引き出すのに四苦八
苦していますが、題材を変えて13回繰り返す頃にはしっかりこなせるよう
になります。手法は経験によって身につくものです。


 メールマガジン「ものづくり工学通信」