パラメータ設計で、安い部品の組み合わせで高性能な商品を実現出来ると思うのですが
使用するパーツが低価格のため長期信頼の確保が難しく、結果的に商品の寿命にバラツキが
堅調になるように思います。
実際には、二段階設計で、バラツキの少ない条件を選んでから良い特性値を探すと思うのですが
このようにしても、平均特性の目標が達成できない時はどうするのでしょうか。
又、損失関数という方法で、品質とコストをバランスさせる考え方についても、教えて下さい。
確かに、安い部品を使って高性能な製品を実現することが、品質工学の狙いの一つです。
横森さんが仰るように、その結果、目標値を達成できないことも起こり得ます。当然ですね。
その場合どうすればいいでしょうか。
工業製品とは、お客様(ユーザー)がお金を払って購入するものです。お客様は、支払った金額に見合った性能や品質を要求します。ですから、横森さんが設計した製品が、他社の競合製品と比べて、値段や性能、品質が劣っていなければいいのです。競合品と比べて見劣りしないならば、性能かコストの目標値を見直すことも一案です。
そうすると競争に負ける危険がある場合や、見直すことが許されない場合は、設計の内容を考え直すしかありません。もっとパフォーマンスを上げられる設計案を考え出すのです。設計に時間的な余裕があるなら、本来はこちらを選ぶべきでしょう。
性能とコストのバランス(コストパフォーマンス)は、結局は高い技術力や良いアイデアでしか達成できません。パラメータ設計は、それらのアイデアを早く正しく判定する方法でしかないのです。アイデア創出の方法ではありません。
しかし実際には、良いアイデアを引き出すきっかけになる場合が多いことも確かです。何故でしょうか。
人間という生き物は、自分のアイデアが本当にダメだと納得しない限り、次のアイデアを発想できないものです。私自身もそうでした。技術者にはこだわりや粘り強さが必要ですから、そういう人が多いのですよ。
設計者は、うまく行かなくても簡単にはあきらめません。いろいろな方面から試しますから、どうしても開発期間が長くなってしまいます。その場合にパラメータ設計を行うと、多くのアイデアの広い範囲でのデータが一度に得られますから、限界が早く分かります。限界が分かれば優秀な技術者は、次のアイデアを考え始めます。そして、本当に良いアイデアを早くたどり着けるのです。
パラメータ設計とは、実験や確認という作業の時間をできるだけ少なくし、技術者に創造的に考える時間を多くするためのツールです。ですから、最終的にどの位の性能や品質になるかは、技術者の技術力の勝負なのです。
次に損失関数の説明です。簡単に説明するのは難しいのですが、次のように考えてください。
損失関数とは、適正な品質レベルを決めるための手段です。過剰品質で企業が損をすることでもなく、低品質でお客様が損をしてもなりません。
さきほど、お客様はお金を支払って工業製品を購入すると言いました。お客様は購入金額に見合ったメリット(製品の機能を利用したり、満足するなど)を得ます。企業はそのメリットを創り出すためにコストをかけます。そのコストは、最終的に商品の代金で回収しますから、双方のやり取りは金額で比較できるのです。
お客様が支払う購入費や、その後に必要となる消耗品費や維持費や廃棄料などをすべて金額で計算します。一方、企業側でかかる費用、開発設計費用、材料費や部品費など生産のための費用を計算します。このように計算した製品一個当たりの金額が、企業とお客様でバランスする点が適正価格であり適正品質であると見なす考え方です。
もちろん厳密な計算は大変ですから、概算で構いません。その数字を戦略的に活用することが、経営的な大筋を見失わないために重要なのです。たとえば、品質の低い安価な部品を使ってコストを下げて同じ価格で売ったら、バランス点が変化するのでお客さまに迷惑をかけることになります。
以上のような大きな範囲で考えると理解しにくいので、実際には、もっと小さい範囲で活用することが多いですね。
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