前回は回答ありがとうございました。
前回の続きになりますが、宜しくお願い致します。
「不適合品管理手順書」に量産品と切り離して以下の様にしましたが如何でしょうか?
「試作段階での不適合品管理は対象外」とする。
試作品の機能特性、品質・信頼性が目標レベルに達成したことを確認するためである。
お答えいたします。
質問の意味がわかりません。
試作段階をISO9001対象からはずしたということですが、試作品の機能特性、品質・信頼性が目標レベルに達成したことを確認するためであるならば、対象になっているという意味ではありませんか。
試作段階などの不適合情報は製品開発では重要な情報になります。対象として管理した方が組織の成長に役立つと考えます。ご検討ください。
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伊藤コンサルティングの伊藤と申します。
ご質問の件ですが、量産品は「量産品製造プロセス」、試作品は「設計・開発プロセス」と「プロセス」が違います。
このように、プロセスを明確にし、プロセス毎に「PDCAサイクル」を回す事を「プロセスアプローチ」といい、ISO 9001:2015では、この「プロセスアプローチ」を要求しております。
「設計・開発プロセス」には、例えば、「設計・開発規程」等があり、その規程に付随して試作品の管理や妥当性を判断する手順書や記録等が必要となりますので、試作品の管理はそれらの規程や手順書に従うことになります。
即ち、ご質問にありました「試作段階での不適合品管理は対象外」ということではなく、試作品は別のプロセスによりそのプロセスの規程、手順書に従って管理する必要があります。
そういった観点で、手順書を整備された方がよろしいかと存じます。
ご参考になれば幸甚です。
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試作品の不適合の件
「不適合品管理手順書」から「試作段階での不適合品管理は対象外」としたいこと、及びその理由として、「試作品の機能特性、品質・信頼性が目標レベルに達成したことを確認するため」としています。
これから矛盾する2つのことを述べます。
1つ目は、そもそもISO9001規格の対象とする製品は「1.適用範囲の注記1」に記載されているように、「顧客向けに意図された製品、又は顧客に要求された製品」が製品なのです。従って、試作品は顧客に引き渡すことを意図した製品で無いため規格の適用範囲内では無いのです。
試作品はもともと対象とする製品ではなく、対象外することを宣言しなければならないものではありません。
2つ目は、1つ目と矛盾する内容になります。
不適合品管理の規格要求事項は、
①誤って使用したり、引き渡すことを防止するための識別をすること。
②不適合品を、a.手直しする、b.特別採用する、c.廃棄処分すること。
③手直し、特別採用した場合は再検査を実施すること。
④不適合の内容、実施した処置の内容を記録すること。
です。試作中の不適合製品でも、間違って使用したり、試作・開発を続けるために改造を行なったり、再使用しないで処分することが考えられます。
また、試作結果を記録し、どのような成果を得たかは記録していきますので、「不適合製品の管理」に則て管理が行われているはずです。
従って「不適合品管理手順書」から除外しなければならない理由はありません。除外を宣言するより、失敗に終わった試作品を識別し、失敗内容を明確にして管理していきましょう。
規格に沿えばもともと対象製品ではないので除外を宣言する必要はないが、試作品といえどもその製品を識別し、試作結果を記録していくことで不適合品管理手順に沿うことは可能と思います。
除外を検討しなければならないのは「是正処置」の適用ではないでしょうか。不適合品は全て是正処置を行う手順になっていると、運用が難しくなります。試作品は計画した仕様を満たさなければ、原因を探り、改良されてくるので「是正処置」は行われますが、試作品そのものが改良されるとは限りません。原因が特定できるとも限りません。
それが理由で「不適合品管理手順書」から試作品を除外したい、と考えていると思います。試作品は、試作・実験の中から法則を見いだし、使用を決定する作業であり、顧客に引き渡す製品で無いので是正処置から除外する、が望ましいのではないでしょうか。
是正処置には、c)不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価、となっています。試作は不確実性があるから試作するので、試作が要らない(再発防止)ようにはできないので、試作の不適合品の是正処置はいらない・できないと評価することと思います。
ISO規格を経営改善に翻訳する中小企業診断士
竹田将文
mh55takeda@agate.plala.or.jp
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