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QUESTION 質問No.15

市場品質の「想定外」とは何か?

市場品質品質工学(タグチメソッド) |投稿日時:
最近、オスプレイのモロッコでの墜落事故は、操縦ミスで「機体異常なし」と結論されたが、「強風で期待が前のめりであることを気付かなかったマニュアル通りの操作をしていなかった」と発表された。
このことは、気象条件や人間の操作ミスはノイズ原因とは考えておらず、極めて安定性の弱い飛行機だということを物語っている。 このことを政府はマニュアル通りにしておれば問題は起こらなかったはずと決めつけているのである。
すなわち、人間がマニュアルを守らなかったときは、想定外のことで、事故が起きても仕方がないと考えているのである。

品質工学では、システムの構築は、ノイズに対する安定性のロバスト設計を行うと同時に、事故が起きた時に被害が最小になるような「安全設計」を行うことを提唱している。人間の能力に頼ることは危険なことである。
原発も事故でも同じことが起きたが、市場で問題が起こってからの再発防止対策は「想定内」の問題がほとんどである。失敗学で考えている「再発防止対策」は必要であるが、「未然防止対策」には不十分なのである。
皆さんは「想定外」といわれる限界をどのように考えますか。

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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

Kazzさま
 オスプレイの想定外に関する質問についてお答えします。 想定という言葉は、広辞苑的に言うと「ある一定の状況や条件を仮に思い描くこと」であり、例えば「事故を想定して訓練する」という使い方をします。 したがって、オスプレイの事故の場合には「設計時に思い描いていなかったような操作をされたので、事故が起きた」ということになります。 だから「マニュアル通りに操作すればオスプレイの機体の設計には問題がなく、したがって安全である」という政府見解になっているのです。

この政府の認識が間違いであることは、Kazzさんの指摘通りです。 意識するしないに関わらずマニュアルを守らない可能性があるのが人間です。 その人間が操作する機械ならば、「想定外」の条件に対応できないオスプレイは問題だからです。 オスプレイの危険性は、実はここにあるのです。

今回の政府発表で、オスプレイの設計に大きな問題があることが、一層明確になりましたね。 つまり、マニュアル通りならば事故が起きないという政府発表を逆に解釈すれば、想定外の使い方をした場合には事故が起きる可能性が高いということです。 そして、その事故に関しては「想定外だから、責任はない」ということですからね。 こわい!

では、オスプレイのような機械を安全に設計するには、どのようにすべきなのでしょうか。 これについてもKazzさんが指摘しています。 マニュアルと異なる操作をした場合にも、重大な事故が起きないようなシステムにしておかねばならない事がポイントです。 

国民が期待している発表は、たとえばマニュアル通りでない操作をした場合には、操作を無視し安全に飛行できる条件に自動設定されるシステムになっている(フェイルセーフ)。 さらに、そのシステムは誤動作を回避するため多重化されているので安全である、というようなことです。

工業製品などを設計時するには、次の二つの場合を考えます。 正しく機能する前提条件を決め、その条件内では確実に機能するように設計します。 そしてもう1つ、条件を外れた場合にも、事故などの問題が起きにくいように設計しなければなりません。 前者が信頼性の設計であり、後者が安全性の設計です。 要するに、オスプレイの場合は、信頼性の設計はしてあるかもしれないが、安全性の設計は考えていないということになります。 したがって、間違いを犯す可能性がある人間が操作する限り、今後も事故が起きるだろうと予測されるのです。

Kazzさんの想定外という質問の答えると、正しく機能する範囲を想定内と考えるのでなく、機能しなくなる条件でも安全が確保できるように想定する必要がある、ということになります。
機能する範囲(機能限界内)と、機能しなくなる範囲(機能限界外)を区別し、その両方を想定しておけば現在のような混乱はないのです。 機能限界外も考慮する設計を、品質工学ではロバスト設計と言います。

現在のように、機能する範囲のみを想定して設計する場合に比べ、機能限界外も考慮するロバスト設計では、未然防止ができる可能性も高くなるのです。