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QUESTION 質問No.17

パラメーター設計とMT法について

設計・開発品質工学(タグチメソッド) |投稿日時:
初めて投稿させていただきます。

 化学メーカーにて開発を担当している者です。
パラメーター設計やMT法について、今後の業務に役立つ手法ではないかと関心を持っております。

 当然のことではありますが、課題の原因が既知だとしても、対応する現実解は実験からしか得られないことがあります。例えば、私の業務分野では、古くから油脂の劣化原因はラジカル反応による過酸化物産生がその一因であることは知られていますが、その対策は、酸化防止剤やキレート作用のある酸を添加するといったものであります。
 
 具体的には、油脂組成やその存在状態(油脂そのもの、乳化状態、酸素との接触有無等)によって、『酸化防止剤の種類』☓『酸化防止剤の添加量』☓『製造方法』を変える必要があり、褒められたことではありませんが、絨毯爆撃実験の結果から後付けで理論を構築することが常となっています。

ご教授頂きたいのは、以下の例についてです。
<目的>
 ラボ実験にて、油脂の酸化防止に最適な酸化防止剤の処方及び製造方法に関する知見を得る
<ケース>
 1.実験をゼロから始める(既存の情報は適用不可)
 2.実験対象とする油脂に関して、いくばくかの実験データーが存在する

上記2種類のケースについて、パラメータ設計とMT法はどちらが適していると考えられますでしょうか。
また、相互利用は可能な手法なのでしょうか。

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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

sakura様

ご質問の内容は、使用目的などによって多種多様になる油脂の酸化防止処方を、効率的に設計できるようにしたい。そのためにラボ実験で知見を整理したい、ということですね。
パラメータ設計とMT法のどちらが適しているかというご質問ですので、まず二つの違いを説明しましょう。

自分たちが扱っている現象がどんな内容なのかを知りたいと思えば、関係する制御因子(処方などの設計パラメータ)をいろいろに変化させたときに、全体としてはどのような現象変化になるのかを実験で確認すると思います。この場合、油脂組成を絨毯爆撃的に検討するよりは、パラメータ設計を活用する方が役立ちます。どのパラメータの水準をどのように動かすと、全体の結果はどう変化するかが分かりますから。

一方、直交表を使ったきちんとしたパラメータ設計をやりたくても、パラメータの種類が大変に多くL18などでは入りきらない、または製造設備を使い生産を続けながら同時に解析も行いたい、などという事情がある場合は、MT法を活用します。MT法は多変量解析の一種ですから、要因が直交表に従って振られていなくても、十分に多くのデータをつかって要因の寄与を解析してしまう方法です。ですからパラメータ実験を組む必要はありませんが、その代わりに結果の信頼性を確保するには十分に多くのデータが必要になります。信用できる結果を得られるデータ数は、少なくとも検討するパラメータ数の3~4倍は必要でしょう。

以上のような認識を持って、ご質問を考えてみましょう。
制御因子(設計パラメータ)としては、酸化防止剤の種類と添加量と製造方法とありますが、このうち製造方法は何種類に分けられますか。つまり、酸化防止剤の種類のように、実験する水準数は多いかもしれないが、パラメータの種類としては一種類と考えてよいものと、製造条件のように水準は少ないかもしれないが、新しいアイデアも入れると種類が多いものとに分けられるでしょう。
詳細は分かりませんが、パラメータの種類はそれほど多くなさそうですね。したがって、パラメータ設計の方が適しているように思えます。わざわざ精度の低いMT法を使う必要はないと思います。(精度が低いという意味は、パラメータが系統だって振られていないからです)

パラメータ設計で使用する直交表を決めるのは、まずパラメータの種類数です。酸化防止剤の種類、その添加量そして製造条件が4種類なら、L18で実験可能ということになります。ただし、酸化防止剤の種類が多い場合には、L18実験を繰り返すか、まずは傾向を知ればいいのだったら、二水準系の直交表の多水準型を使うなどのやり方になります。たとえばL16を使うなら、酸化防止剤は8水準(8種類)入れることができ、添加量や製造条件と組み合わせた実験が可能です。
詳しくは、このフォームで文章だけで表現するのは困難ですから、別途打ち合わせる必要があるでしょう。

既存の情報があるかないかは、検討方法を決めるにはそれほど関係しないでしょう。もちろん実験の詳細を決める場合に参考にはなりますが。

ご質問への回答は以上です。
さて、実験したい要因の話は書いてありますが、何を測定するかつまり評価法について何も書かれていないので、追加のコメントをします。

パラメータの数が多いと、普通は実験に手間と時間がかかりますから、パラメータ設計やMT法などのツールを使いたいということだと思います。酸化防止の機能は、効果の判定に時間がかかるかもしれませんね。使用条件の組合せで、確認すべきテスト数が多いのかもしれません。長時間のテストを行なっても、実際に市場に出てから想定外の条件で問題が起きるかもしれません。それらすべてを評価するのは、大変なことです。
通常の実用化検討とは、このような様々な条件での確認作業が付きまといます。これがあるので、商品化や品質保証が大変なのです。

このような商品化全体の効率化を図るために、品質工学では次のような工夫をするのです。パラメータ設計などの手順に入る前に、何を測定するのが一番効率的かを議論します。そして、様々なテスト条件をどのように簡素化するかも議論するのです。数か月かかっていた確認テストを数日でできるようになれば、開発効率は格段に向上するからです。開発設計の時間は、テストに費やすのでなくアイデア出しや実験に費やすべきでしょう。

品質工学の興味を持たれているとのこと、単なるツールとしてではなく、開発の考え方についても検討される方が良いと思います。




ANSWER
回答No2 | 投稿日時:

油脂の劣化はどのように計測しているでしょうか?
何等かの計測値があるのか、あるいは感覚的な評価なのかです。

以下、計測値がある前提ですが:
「いくばくかの実験データが存在する」とのことですが、データが欠測なく揃っている場合、まずはMTシステムの中のT法(1)を適用できるか検討すべきです。

富士フイルムさんが、処理液の混合に関してMT法を適用された事例があり、参考になると思います。

品質工学MTシステムによる感光性組成物の故障診断(以下サイトにあります)
http://www.fujifilm.co.jp/rd/report/rd051/pack/pdf/ff_rd051_016.pdf

また、MT法による解析事例として以下があります。
MTSによる処理液診断システムの構築
金沢幸彦 (富士写真フイルム)、岡本潤 (富士写真フイルム)、岸本伸三 (富士写真フイルム)
品質工学 巻:6 号:6 頁:47-52

MTシステム、パラメータ設計のどちらが適するかは現段階では不明です。
相互利用は可能ですが、前提条件もありますから、ここでは断定はできません。

回答者 アングルトライ(株) 手島昌一