金型自体は、鋳造用・プラスチック用(射出用)・ロストWAX・ダイキャスト用など
多種多様にあると思いますが、型自体を非破壊検査することは私はまずないと思っております。
しかしながら、金型の耐久性及び耐用年数に関して顧客からご質問があった場合など
金型の非破壊検査(NDI)などによる一般的なデータというものはあるのでしょうか?
また型素材やショット数、成形用機械により型に掛る圧力や熱などにより全く異なるはずです。
鋳造に関しては、風土や気候によっても製品の伸び尺が微妙に変わります。
そのような事も含めて、耐久性や耐用年数の研究がなされており
設計等の段階で耐久性などはある程度計算出来、数値化出来るのでしょうか?
顧客への品質保証として、又新規製作をお奨めするデータとして
例を挙げられるようなものがあれば知りたいと思っております。
そのようなデータを取っているところ、
もしくは閲覧出来るようなところがあれば教えて頂けないでしょうか?
また、設計段階での計算方法が確定されているのであれば教えて頂けますか?
どうぞよろしくお願い致します。
補足1
ご回答ありがとうございます。
品質工学上では型とショット数により、ある程度の推定可能だと考えられるわけですね。
成型品の変化率は考えが及びませんでした。
確かに教えて頂くとその成型品変化により、精度が出ていないことが判断出来ると思います。
たただやはり一般的な推定数値は厳しい感じですね。
一般的な数値が出せない理由の説明が出来そうです。
参考になりました。ありがとうございます。
金型の寿命推定について品質工学の面から回答申し上げます。
ご質問にあるように、金型の寿命は、型素材やショット数、成形用機械により型に掛る圧力や熱などによって、金型の伸び尺は変わり、それに伴って成形品の寸法も変わるのは当然の結果だと思います。
たとえば、プラスチック成形の場合でいえば、金型寸法と成形寸法の「転写性」で成形品の品質を評価しますが、初期の成形品の寸法が金型の劣化で変化する「変化率」が、成形品の「機能限界」を超えたところで金型の寿命を判断すればよいと考えています。
金型自身の寿命の判断は、成形品の品質の変化で判断すればよいと考えています。
品質工学では、変化率のことを「機能性(機能の安定性)」で評価しますが、評価尺度はSN比で表して、寸法変化は感度(金型と成形品の寸法の比)で表して、感度の変化率が機能限界を超えたときの金型の寿命を推定すればよいと考えています。
ご質問の「設計等の段階で耐久性などはある程度計算出来、数値化出来るのでしょうか?」
設計段階で、成形品の寸法が変化するショット回数が分かっておれば、感度の変化率を回数で外挿して、機能限界を超えるときのショット回数で金型の寿命を推定するしかないと思います。
その場合、機能性評価におけるノイズは相当厳しいものを選んで実験する必要があります。
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成形品の寸法変化率は、昔は(yt-y0)/ y0×100%で評価していたのですが、0%付近では加法生がありませんので、Ω変換を用いて対数変換で加法性を高めて精度を推定できますが、最近の品質工学では望目特性のSN比と感度で変化率を求めることが普通です。
成形品寸法の精度の変化が金型寿命と相関性があるかはわかりませんが、正確な寿命などわかるはずがありませんから、出力された成形品の精度の「機能限界」で推定評価するしかないと考えています。
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海外モノ作りコンサルタントの青山です。香港を拠点に華南での電子機器製造に10年余り携わっておりました。ご質問の金型耐久性、耐用年数につきましては、非常に広い要素を持っていると考えます。実際に携わりました現地現場での経験に基づき、一連の管理を含めた実態ベースで回答させていただきます。
●使用材料: 電子機器の多くは成形でいえば押し出し圧が250t程度以下の小型の金型である。華南での金型製造には従来日本企業の多くがSKH鋼(JIS-G-4403)やSKD鋼(JIS-G-4404)を指定していた。最近は指定が少なく、現地企業が香港やシンガポールから鋼材を購入することが多くなったといえる。この材料の選択も耐用年数に影響を与えると思われる。
●金型設計と耐用年数:メカ的な設計をするうえで、金型材料の選択、成形や金属材料の種類、摩耗の位置、生産ロット数量などが想定されているであろうから、耐用年数は設計に大きく依存すると言える。耐久性も机上計算できるかもしれないが、経験的要素も大きいと思われる。
●金型製造と評価: 設計データは現地メーカに移転可能である。現地メーカの設計では図面あるいは3Dデータで顧客承認が行われる。切削設備や精密計測設備も備えられており特殊な精度や形状でない限り日本とそん色ない品質と言える。通常トライ1とトライ2により、その使用金型の製品サンプルで評価される。承認されれば量産へのステップとなる。サンプル以外のたとえば非破壊検査データ取得による評価は当方も経験がない。
●金型費用の支払い: 金型は初度費用として製品とは別発注の形態がとられる。現地金型メーカはキャッシュフロー管理が厳しい傾向にあり、発注と同時の金額支払いを求められる場合もある。多くは設計の承認とサンプルの承認後など、複数回の支払いが採用されている。
●資産: 資産登録や管理は金型の発注元となる。棚卸資産管理も必要となるので、金型の形式や製造年月日、価値、用途、形状、写真は現地メーカから取得しておくべきである。しかし、中には人事異動や組織の変更が原因で、現地へ都度の棚卸資産の確認・管理が漏れることも多いのが実態である。生産完了時には、金型も抹消・廃棄すべきであるが、これも伝えられず、古く永年使用されない金型がメーカの倉庫に眠っているのも実態である。
●日常管理:運用中の使用時期、製品型名、使用ロット番号、ショット数、条件設定などの履歴管理は比較的よくなされているメーカが多い。しかし耐用年数の推測データとしてまでは認識・使用されていない。
●移動: 中国では客先の資産の金型でも、生産設備として税関に登録している。引き上げや他メーカへの移動は税関への届け出が必要であり、手続きや説明に時間や人手を要することを認識せねばならない。
●耐用年数と保証: 耐用年数は金型材料や焼き入れなどの処理、製品材料、使用回数、使用条件に依存する。数十万回の使用に耐えるものもあれば、1万回くらいでバリが出てくるものもあるが、一概に不良とは言えない。金型を決めるときには、当然製品ライフ、生産数量計画やプラスチック類など製品材料の種類により、金型材料と処理を選択しなければならない。取扱い上の不具合による保証はできるものの、寿命保証契約の締結はあまり意味をなさないと言える。保証となれば鋼材の品質や処理価格は上げざるを得ず、海外生産の場合はコスト低減という意図に必ずしもそぐわないと思われる。
●現地現場での耐久性判定: 光学的な高精度の設備を使用したデータ取得も考えられるが、測定場所への搬入、時間や費用を要し実施は現実離れしている。実態としては、バリや勘合具合で使用の可否を判定している。例えば当方は0.2mmのバリまでは品質や安全上許容できるとしてメーカや客先に伝えてきた。幼児が触れても切創しない数値とされる。許容できないまでのバリや外見となれば金型補修が必要となり、日本企業に不具合データを提示し、補修の認可をとり有償のもとに行っている。電子機器の生産では、これによりほとんどのケースで解決できており、改めて金型を製作することはほとんどない。
●予備金型: 金型の補修不可というレベルの不慮の破損も起こりうる。生産を一時とも止められないというケースについては、リスク対応として複数の準備が必要と考える。
以上、日本企業が華南などで現地生産する場合の留意事項を含め、実例をご紹介いたしました。ご質問に対する回答には必ずしもマッチングしていない部分があるかもしれませんが、実情など少しでもお役にたてば幸いに存じます。
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