多品種少量生産のため、開発設計の比重が高く、設計要因の品質不良も減少しないため、シックスシグマの導入を考えましたが、実践している企業は東芝、ソニーなど超大手ばかりで、我々が本当に使いこなせるのか心配です。
中小企業での導入が可能なのか、もしそうであれば注意すべき点をご教授下さい。
品質管理部門中心にQC研修を実施しており、社内にQC検定2級所持者が5名、3級が15名いるレベルです。
(これはものづくり革新ナビ運営会社による架空の質問です)
香港在住10年のモノづくりコンサルタント青山と申します。
日本と海外企業の橋渡し活動を行う中で、品質改善の指導も行ってきました。このような経験から以下のごとく回答申し上げます。
文面からは御社の品質管理に対する意識は、中小企業といえども非常に高いと推測できます。したがって既にISO9001 QMSの認証は受けられていると考えます。
シックスシグマ導入には、全社での組織的活動、対象の選択、目標設定とステップアップ、品質判定基準整備、設備や材料の条件・環境を考慮する必要があると考えます。
まず、組織的活動は、ISO9001を徹底的に有効活用することをお奨めします。設計品質の改善にはISO9001の7項目の内容、つまり設計内容の共有化の強化が有効だと思います。基本的なことは客先の承認を得るなどで共有化し、社内的には生産や品質部門が参加したデザインレビューで共有化を図るなどが活動となります。製造品質では購入部材を含んだPDCAの繰り返しはもちろん、特にモノの作りこみデータ(バラツキ、時系列、不良率などがキーワード)の各種統計的分析を応用した改善の繰り返しがポイントとなると考えます。更にISO9001を進化させてISO/TS16949の認証取得という目標を掲げれば、シックスシグマへ向けての組織活動は活性化されるに違いありません。
また、活動には対象製品や製造プロセスの適用順序を決める必要があると考えます。そして改善目標を決めて、それがクリヤーされれば、更にステップアップを図るという考えです。例えば半田づけポイント、機化工品のキズ、組み立て、完成品検査というプロセス、それらの不良率の把握と改善へのPDCAを回す活動などが事例です。
品質判定基準については、例えば半田付けやキズの良否判定は、アナログ的で非常に悩ましいものがあります。半田付けは電気的に導通していればOKというようなものではありません。筆者の経験では各社基準がありますが判定基準は微妙に異なり、しかも判定のサンプルは必ずしも豊富ではありません。現状では電子機器の組み立てで広く普及し、事例も充実しているのは、USAのIPC-A-610と思われます。既に華南地区では広く採用されていますので是非参考になさってください。多少余談となりましたが、とにかく良否判定基準を明確に整備することです。
シックスシグマの達成には製品の部材、製造設備や作業環境も大きく立ちはだかります。客先指定の材料では目標を満たすような精度が出ない、精度を上げるには刃型や設備を高精度なものに変える必要がある、温度・湿度や振動の影響を受けやすい、ヒトの作業ではどうしてもエラーが出るので自動化する必要がある、などが考えられます。
したがって、実態としては企業の経営条件の中で、如何にシックスシグマの品質を達成するかということになると考えます。
以上少しでもお役にたてば幸いに存じます。
青山利幸
|
株式会社メタ・フォーカスの倉田と申します。
リーン・シックスシグマの手法を使った業務プロセス、品質改善のコンサルティングをさせて頂いています。
「中小企業での導入が可能なのか?」と言うご質問に対する回答としましては「導入可能です。」
現在のシックスシグマは、モトローラがシックスシグマ活動として始めた第一世代、GEや東芝、ソニーが全社プロジェクトとして導入した第二世代を経て第三世代となっています。第三世代ではトヨタ生産システムの良いところを取り入れてリーン・シックスシグマと呼ばれています。第二世代のシックスシグマではトップマネジメントの意思を起点として現場の改善プロジェクトにトップダウンで繋げて行く導入規模の大きなものでした。第三世代のリーン・シックスシグマは現場の改善活動をベースとしたトヨタ生産システムを取り入れた事により、トップダウンとボトムアップ双方向のコミュニケーションを可能とした、より柔軟性の高いものとなっています。
最重要課題である、CTQ(Critical To Quality) を設定した後の改善プロジェクト活動の基本ユニットは数人で構成されたプロジェクトチームです。シックスシグマ活動を導入するのに2000人を超える大企業である必要は決してありません。
あと、御社のように多品種少量生産で、開発設計の比重が高いケースには DFSS(Design For Six Sigma) と呼ばれる手法が適切なのではないかと思います。開発プロセスのムダを無くし、多品種に共通の開発プロセスと個別対応が必要な開発プロセスを明確にする事により、個別対応をパラメータ化するような改善を行うのに最適な手法です。
|