新規事業を始めるときには、成功すると確信しているからこそ、始めるわけですが、外部環境の想定外の変化などにより、所期の目標が達成できない場合もあります。このような場合、撤退も選択肢のひとつとして考える必要があるのは、ご指摘のとおりです。
しかし、事業がうまくいなくなった時点で、撤退の決断をするのは意外に難しいものです。撤退は事業を始めたという過去の決断を否定することでもありますし、ここまで頑張ったのだからもう少し辛抱すれば事態は改善するかもしれないという期待も捨て難くなります。こうして、撤退の決断を先延ばしにした結果、損害が拡大していき、財務状況が極端に悪化して、会社全体が危うくなることも時としてあることです。
このような事態を避けるには、事業を始めるときから、当初の事業計画であるプランAがうまくいかなかった場合に備えた別の計画であるプランBを用意したり、プランBでも失敗したときに撤退を決断するための判断基準を設定したりしておくことが重要です。
これは、例えば、株式投資で、投資する時点で「損失が投資額の10%を越えたら処分して損切をする」とルールを決めるのと同様です。10%の含み損となった時点でどうしようか迷っていると、その間に損失は20%に拡大するかもしれません。一方、投資時に撤退ルールを決め、それを厳格に守れば損失は最悪でも10%に抑えられます。
また、事業からの撤退の判断基準としては、売上や利益などの財務指標がよく使われますが、財務に悪影響が出るのは、事業がうまくいかなくなってしばらく時間を経てからです。つまり、財務指標は事業状況の遅行指標と言えます。できれば、売上より受注、受注より営業実績や顧客・市場動向など財務よりも早く状況を把握できる先行指標も取り入れ、できるだけ早い時点で判断できるようにしておくことも重要です。
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