当社においてはかなり重要な新製品で、開発部長が後見人という事になっていますが、主任である自分が課長4名を含む35人のプロジェクトをうまく仕切ることができるのか、極めて不安です。
製品のカギになる技術は、自分が2年かけて開発してきたため自信がありますが、製品としての設計はこれからであり、市場で安定して動作するのか?生産技術や品質保証体制、マーケティングなどの分野は自信がありません。
どのような点に注意してリーダーシップを取ればよいのか、ご意見をお願いいたします。
(これはものづくり革新ナビ運営会社による仮の質問です)
開発段階のマネジメントについて回答申し上げます。
ご心配の市場における品質の安定化はもっとも大切な問題です。
品質工学のマネジメント戦略について申し上げます。
市場品質の大半は源流の技術開発や上流の製品開発でほとんど決まってしまうと考えてください。
最も重要なことは、「テーマ選択」ですが、技術者が決めるのではなく、プロジェクトマネージャーが決めることです。
テーマが決まったら、技術者はコンセプトやたくさんのシステムを創造します。(システム選択)
その次には、システムの安定化のために、「機能性評価とパラメータ設計」を行います。
市場品質はこの段階で決まってしまうのです。
市場クレームを100%とした場合、、安全率(機能限界/出荷規格)を4と考えると、設計責任は94%で、製造責任は6%に過ぎないのです。
「技術開発段階」では要素技術や製造技術の安定化を「機能性評価」で行います。製品設計の前に、市場における品質を作ることが大切で、それが顧客の目的機能を満足する技術手段の基本機能(Generic Function)について機能性評価を行い、パラメータ設計では直交表を活用して、設計定数(パラメータ)の最適化を行います。
この段階で、市場品質の安定化が決まってしまうのです。品質の安定化の尺度を「SN比」で行います。
他社から設備や部品などのモノを購入する場合でも、ベンチマークと比較して機能性評価を行います。
(具体的には下記のホームページの品質工学のパラメータ設計について学んでください)
http://kaz7227.art.coocan.jp
品質工学では、「開発期間の短縮化」と「クレームの撲滅」と「コスト低減」を同時に達成することを考えています。
そのためには、安定した品質の経済的評価が必要で、その値を「損失関数(SN比の逆数)」で表して、損失コストの評価を行います。そこでは「投資コスト」と「損失コスト」を求めて、両者の和が最小になるようなマネジメントを行います。この段階は、プロジェクトマネージャーの責任です。
設計段階では、上記の「安定化設計(信頼性評価)」のほかに、「安全設計」のマネジメントが大切です。
安全設計では、故障率100%と考えて、事故が起きたとき被害が最小になるような「システム設計」を行います。
設計段階でもっとも大切なことは、コスト改善が目的であって、品質改善は手段似すぎないのです。
プロジェクトマネージャーの役割は、技術者の設計の効率化を図るために、コンピュータや各種解析ソフトや機能性評価のための計測設備を準備することです。
プロジェクトリーダは、もぐらたたきの「問題解決型」の開発を止めて、未然防止方の「技術開発型」の開発体制を行うことが大切です。関係部署を巻き込んだコンカレント体制の構築を考えることが大切なのです。
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いくつかのプロジェクトリーダー、プロジェクト支援経験から、この質問に有効と考えられる意見を述べます。今回のプロジェクトは、比較的大きな規模であるため、プロジェクトマネジメントの主要プロセスを導入してはいかがでしょうか。その前にまず、自信をつけていただくために、プロジェクトマネジメント・セミナーを受講するかまたは易しく書かれた書物を熟読するのがよいと思います。主要プロセスを分かり易い言葉で列記すると、目的と目標の明確化、WBSを用いたテーマの抜け漏れのないブレークダウン、コストと工数の見積、各実施項目どうしの連関性をチェックできるスケジュール管理、リスク対応策の立案、進捗管理、完了レビューで蓄積ノウハウを整理することなどです。「製品のカギになる技術は、自分が2年かけて開発してきたため自信がある。」とのことですので、このプロジェクトの成否を分けるのは、コミュニケーションとリスクマネジメントになりそうです。なお、生産技術、品質保証体制、マーケティングなどの自信のない分野の細かい部分は、エキスパートに任せて、リーダーの役割に徹すればよいのです。
プロジェクトの問題点、コンサルティングで質問の多かった点について、経験則から、要点を列挙しておきます。
①失敗したプロジェクトの問題点は、個人負荷のアンバランス、部門間のコミュニケーション、マネージャーのリーダーシップ、スケジュール管理の甘さ、目的・目標の不明確さなどです。
②最初に押さえるべき重要なポイントは、プロジェクトは何のためにやるのかをよく議論しておきましょう。
③プロジェクトを実行する場合、誰が何をいつまでに行うかを、あいまいにしておかないことです。
④忘れがちになってしまうのが、役員や部門長長クラスの責任問題です。責任分担表を作成して責任のなすりあいを防ぎましょう。
⑤不確実性の時代には何が起きるかわかりません。例えば、コンティンジェンシープランのようなリスク対策を具体的にスケジュールに落とし込んでおきます。
最後に、成功したプロジェクトの隠された要因を、補足しておきます。
①黙っていると、プロジェクトメンバーが、エキスパートの高年齢層が多くなります。プロジェクトメンバー選定で、意識的に若い人をある割合参画してもらいましょう。違った視点でブレークスルーしやすくなります。
②課題検討会などでは、例えば、TRIZのプロダクト分析のように、課題をできるだけ図解してください。課題が共有されやすくなり、コミュニケーションも良好になり、新しいアイデアも生まれやすくなります。
回答者:ぷろえんじにあ代表 粕谷茂
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