こうする事で共通と出来る8回の実験は行わずに24回の実験で評価した時は何か問題はあるでしょうか?
「超実践品質工学」をコアとしたデータエンジニアリングで、設計・開発をお手伝する、
株式会社ジェダイトの鶴田(つるぞう)と申します。
実験の目的が不明ですが、因子A~Eの要因効果を知りたいということでお答えします。
ご質問の実験計画は以下のとおりと認識しています。
No.1~16がL16(4^5)、No.1~8+17~24がL16(4^5)になっており、No.1~8は共通で繰り返さない。
これによってできるだけ実験数を減らしたいというのが、狙いであるととらえました。
No. A B C D E
1 1 1 1 1 1
2 1 2 2 2 2
3 1 3 3 3 3
4 1 4 4 4 4
5 2 1 2 3 4
6 2 2 1 4 3
7 2 3 4 1 2
8 2 4 3 2 1
9 3 1 3 4 2
10 3 2 4 3 1
11 3 3 1 2 4
12 3 4 2 1 3
13 4 1 4 2 3
14 4 2 3 1 4
15 4 3 2 4 1
16 4 4 1 3 2
17 5 1 3 4 2
18 5 2 4 3 1
19 5 3 1 2 4
20 5 4 2 1 3
21 6 1 4 2 3
22 6 2 3 1 4
23 6 3 2 4 1
24 6 4 1 3 2
この実験では以下に留意する必要があります。
おのおののL16実験計画では、因子の自由度が(4-1)×5=15ですので、L16直交表の自由度をすべて使っており、残差eの自由度がありません。したがってこのままでは検定できないことになります。1因子プールしたくらいでも、自由度が小さくおそらく有意にならないでしょう。繰り返しをとるなどして実験の自由度を増やすかですが、もともと実験数を減らしたいことが目的なので、そのあたりがどうかです。
また因子間の交互作用が割り付けられていないので、交互作用があった場合に、各因子の要因効果が正しく求まりません。交互作用が無い前提で、求めたい条件(最適条件など)の工程平均を点推定して、確認実験によって再現するかどうかを見る方法がありますが、これとて各要因効果が正しいことの必要条件にすぎません(最適条件を知りたい、などの場合は有効)。
さらに、共通としているNo.1~8の実験は繰り返さないのですから、前半のL16と、後半のL16(うち8条件)の「場」が同じであることが必要です。これは24条件をランダム化することで、ある程度担保することができます。
いずれにせよ、5つの因子に交互作用がない(小さい)場合にしか、正しい要因効果や、最適条件が得られないわけですから、交互作用がないことを前提とするのであれば、直交表を用いなくても一因子実験でよいわけです。その場合だと、6+4×4=22条件で、ご提案の24条件よりさらに2つ条件を減らすことができます。
このような実験数を無理に減らす工夫について、ご質問を受けることがたびたびありますが、実験数を減らすということは、検定力を弱めたり、知りたい交互作用を見えなくしたりすることとのトレードオフになるわけです。
実験のリソースが限られている場合は、実験数を無理に減らすよりも、モデルの作り方(テストピース、シミュレーション)、計測する特性値の工夫により交互作用を発生しにくくする、ノイズ(誤差)因子の導入による無用な繰り返しの排除などでも効率化を行うことができます。これらは品質工学の考え方のなかにエッセンスが入っていますから、ぜひご検討願えればと思います。
そのようなデータの創出方法や活用方法(データエンジニアリング)についてご相談等ありましたら、弊社までご連絡いただければ幸いです。
|