塗料の開発において、要求品質から必要な配合設計をしました。設計から材料の候補をある程度絞り込んだ上で配合の検討をしようと思いますが、たとえば直交実験のようなことを実施すると、材料の分離が起こったり多くの水準でデータが得られなくなります。
このような実験初期段階でのスクリーニングでもっと有効な実験方法はないでしょうか?
失敗データがあったとしても、直交実験が最も効率的なのでしょうか?
「超実践品質工学」をコアとしたデータエンジニアリングで、設計・開発をお手伝する、
株式会社ジェダイトの鶴田(つるぞう)と申します。
ご質問の意図をくみ取りますと、より機能(材料の性能)が高くなるような設計を見つけるための最適化実験を直交表で実施される、ということでご回答します。(品質工学というよりは、実験計画法、応答曲面法などの分野です)
直交実験を実施した場合に、大半が機能しない(この場合分離がおこったりして、材料としてモノにならない)場合、以下のような対応が考えられます。そちらの実験の目的や内容の詳細が分かりませんので、状況に応じて判断してみてください。
※材料設計などの化学的実験の場合、制御因子の交互作用が大きいことも機能しない原因の1つとして挙げられますが、これはどの実験にも言えることですので、今回は割愛します。
1)機能設計(配合設計)に戻る
そもそも、少し制御因子を振っただけで機能しなくなるというのは、もとの機能の設計がきちんとできていないためです。仮に性能的に良い条件が見つかったとしても、少しの組成の変動や、使用条件の変動で機能が変化してしまい、安心して使用することができません。この状況の場合、必要なのは機能を実現させるためのアイデア(制御因子)です。
2)機能しない条件を欠測処理して最適化する
直交実験のいくつかの条件(行)が機能せず、性能のデータが取れない場合は、適切な欠測処理を行うことで、半ば強引に最適条件を推定する方法です。今回の場合は「機能しない」というデータが取れているわけで、正しくは欠測とは言いませんが、何等かの値で代用するということです。よく行われる方法としては、機能した条件のうち、最低(最悪)の値の半分(デシベル値の場合-3db)の値で代用するというものです。半数くらい欠測があってもなんとか条件を求められる場合もあります。
3)機能した条件の中から暫定条件を選び、再度最適化
仮にL18直交表実験を行った場合に、7つしか機能せず、2)の方法でもなかなか良い条件が見つからなかったとします。この場合、機能7つの条件のうち、もっともましな条件を暫定条件として1つ選び、この条件を基準にして(3水準系なら第2水準にして)、再度直交実験を行い、より良い条件を探します。
いずれにしましても、企画(要求品質の定義)→機能設計(性能の確保)→ロバスト設計(安定性の確保)→チューニング設計(製品スペックへの合わせ込み)の流れすなわち設計開発プロセスをきちんとステップバイステップで実施することが重要で、小手先の直交実験の方法だけで解決しようというのはお勧めできません。詳細はご相談いただければと思います。
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>企画から機能設計の部分で直交実験を使用するのは妥当なのかという疑問でした。
機能設計の探索時に直交表を使った実験計画法を行うのは妥当(というか普通)です。
>材料種という因子が6個くらいある場合は、変形した直交表を使えばいいのでしょうか。
交互作用を求めない場合、2水準が6因子ならL8直交表、3水準が6因子ならL18直交表を使用すればよいでしょう。4水準以上の場合、「変形した」直交表を使用することになります。初期の段階では交互作用を求めるために実験数を多くするよりは、因子数を増やして探索の範囲を広げたほうがよいと思います。
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