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QUESTION 質問No.43

新事業開発段階での特許活動

企画技術マネジメント |投稿日時:
一部上場製造企業の地方工場で、現在の主力事業は部品加工ですが、私の部署は6名で現在の高精度加工技術をシーズとした新事業の開発がミッションです。ある程度企画が固まった段階で、製品設計部に試作品を作ってもらうのですが、当然その段階で新たな課題がみつかり、場合によってはマーケティングまで遡って企画を練り直し、すでに18か月経過していますがまだ最終製品は見えていません。
ひとつの成果として特許取得を考えていますが、製品化が決まっていない現時点で、どのような点に留意してどのような技術を特許化すべきなのか、ご指導いただければありがたいです。

【これは事務局による架空の(しかしありがちな)質問です】

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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

 高精度加工技術をシーズとした新事業の開発がミッションといことですが、具体的加工技術が何なのか不明であるため、一般論に近くなりますが、できるだけ具体例を交えアドバイスします。例えば、半導体を中心とした精密金型メーカーでは、サブミクロンの精密研削加工技術が強みで、新分野の新規事業を模索していました。外部専門家の支援、大学の支援および国からの補助金などを得て、新規事業開発プロジェクトを立ち上げました。その中で、市場調査を実施し、加工技術の応用分野を絞り込み、具体的製品をイメージしながらアイデア出しを網羅的に行いました。その結果、いろいろな用途に汎用性のある髪の毛より細い精密研削ピン、携帯電話やプリンターの高精度ガラスレンズ金型などを作れるようになりました。そして、極細径ピン加工法の特許取得までつなげています。

 では、どのような点に注意して技術を特許化すべきか、いくつかの新規事業開発プロジェクトの中で議論した中から、重点的留意点を整理してみました。
①競合の少ない分野を選択する
 市場規模の大きな既存分野には多くの企業が参入しており、リスクが大きくなります。新分野を開拓できれば、市場の先行者利益を得ることができ、特許権で参入障壁を築けます。
②技術分野を絞リ込む
 一つの分野に集中した方が威力を発揮しやすくなります。多数のアイデアが出たとしても、SWOP分析(自社の強み、弱み、機会、脅威)で本当に実行して成功する確立の高いアイデアを特定しましょう。
③戦略的に特許出願しない方が差別化できる技術もある
 製法やノウハウの場合、これがかなり重要です。実際に、筆者が担当したノウハウの塊である基板実装技術や半導体技術も、戦略的に特許出願しないで差別化を図ってきた事例です。工場内で社外の人の目に触れない製法特許は、実際の侵害を発見することができません。製法などで著しい効果があるが製品を見てもその内容がわからないようなものなどはノウハウとして秘密にすることを検討するべきです。

 さらに、プロジェクトの進め方と分析ツールについても参考意見を述べます。「18か月経過しているがまだ最終製品は見えていない。」ということから、自社内のプロジェクトチームだけで新規事業を考えているのではないでしょうか。この場合には、客観的に多くの事業分野を俯瞰できる専門家や大学・公設機関の研究者などの力も借りてはいかがでしょうか。新たな用途を考えて事業展開をしたい、特定技術の応用技術の全体像を知りたい、競合分析がしたいという時、優れものの特許情報分析ソフトを試してみるのも有益です。例えば、カーボンナノチューブの事業化に向けた応用先を検索すると、多数の特許を確認できます。等高線の高い領域を観ると、「ディスプレイ」「プローブ顕微鏡」「リチウム2次電池」「材料」「トランジスタ」「コンピュータ」「フィルム」「燃料電池」などを応用先として示してくれます。

回答者:ぷろえんじにあ代表 粕谷茂