直交表の交互作用は、純粋に数学的な意味です。このフォームでは図が使用できないようなので、言葉で説明します。少し面倒ですが、図を描きながら読んでください。
XY直交座標系に四角形を描いてください。Y軸は測定値(実験値)です。X軸が因子軸で、A・Bの二水準を決め、四角形の左右の辺に一致させます。四角形の左右の辺が因子1・2に対応しすることになります。四角形の上下の辺を水準A・Bに対応させます。すると四角形の四つの頂点が、L4直交表によるデータに対応することになります。つまり原点に一番近い頂点が実験1の結果(因子1と2の水準がともにA)、右側の下側の頂点が実験2の結果(因子1がAで因子2がB)、右上の頂点が実験4の結果のようになるはずです。
この四角形で、解析の意味を考えます。まず、実験1,2の平均と実験3,4の平均を比較することは、四角形の左右それぞれの辺の中点同士の値を比較することです。もし同じ値(水平)なら因子1の効果はないことになります。次に、実験1,3の平均と実験2,4の平均を比較することは、四角形の上下の辺の中点の値同士を比較することです。この値の差は上下の辺の平均的な距離になりますから、因子2の効果を表現しています。
では、実験1,4の平均と実験2,3の平均を比較することは、何を意味しているのでしょうか。実験1,4の平均と実験2,3の平均とは、それぞれが対角線の中点に対応しますね。したがって四角形が平行四辺形なら、この二つの値は一致します。しかし平行四辺形でなかったら、一致しません。つまり第三列目の計算は、四角形が平行かどうかを確認しているのです。平行でなかったら、上下の辺はどこかで必ず交差します。これが交互作用という意味です。
もちろん実際の実験には必ず測定誤差やバラツキがありますから、二つの因子に全く交互作用がなくても平行四辺形にはならないでしょう。この場合は、交互作用でなく実験ばらつきを表現することになります。
交互作用か実験誤差かは、区別できません。何故なら、自由度の限界があるからです。自由度とは、データに含まれる情報の数と考えてください。データ数が4個のL4直交表実験では、データに含まれる情報は4つあると考えられます。一つは平均値の情報です。残りの三つを二つの因子1・2と交互作用ないしは実験誤差に割り付けるので、交互作用と実験誤差が分離できないのです。どうしても分離したいのなら、自由度つまりデータの個数を増やさなければなりません。
以上が数学の話です。
さて少し品質工学の考え方を追加します。学術研究が目的でなければ、交互作用と実験誤差を厳密に分離することは、あまり意味がありません。現実世界では、交互作用や各種のばらつきは当たり前に存在します。その雑音に埋もれず効果を発揮する有意義な因子を探すのが、設計開発工学の目的だからです。ですから、因子の3を三番目の因子として使うのがパラメータ設計の考えになります。もちろん交互作用が少なくなるような工夫はしておきます。自由度を目一杯に活用するのです。
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実験計画法や多変量解析のコンサルをしております、村島です。
私の方からは、もっと簡単な説明をさせていただきます。
L4というのは、実際にはまず使われることはありませんが、勉強するには結構分かり易い題材です。
本件は、おそらく、第一列目と第二列目の意味は主効果を割り付けることで、その効果を平均比較で表現するというのはわかるが、第三列目って、なによ?という意味かと思われます。
簡単に言えば、交互作用なんですが、どうしてかといえば、第一列目の実験1と2に対応する水準は同水準ですが、第二列目を見てください。異水準ですね。同様に、第一列の実験3、4に対応する第二列目も、異水準です。このことは、第三列目の実験1と実験4は第一列と第二列の水準組み合わせが同等(ホモという)で、第三列の実験2と実験3は第一列と第二列の水準組み合わせが異なる(ヘテロという)ということです。同等の場合と、異水準の場合の差を表しているのが、第三列の実験1、4の平均と実験2,3の平均の差になります。これが小さければ、交互作用は小さい。大きければ、交互作用は大きいという意味になります。残念ながら、自由度の関係で、それが有意か、誤差との区別はできるのか、それはできません。不可能といっても過言ではありません。勉強だけの世界にとどめましょう。
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村島です。再度の質問への答えです。分離できませんので、不可能です。
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交互作用と実験誤差が分離できない点について、統計的には上記お二人の説明通りなのですが、技術者には統計とは別次元の経験と知識があります。
交互作用列が大きい場合は、因子1の水準別に因子2の要因効果図を書いてみてください。2本の直線が描かれます。交互作用があるということは、2本が平行でないということです。交互作用が小さければ、少しだけ傾きが違い、交互作用が大きい場合は、傾きの違いが大きく、2本の線が交差することもあります。
その2本の線の傾きの違いが、技術的に明解な説明ができる場合は、交互作用の可能性が高く、どう考えても説明がつかない場合は、実験誤差の可能性が高くなります。
また今回は最小の直交表L4の例ですが、L8、L16、L18など因子数がある程度多い直交表の場合は、因子を割り付けた列よりも誤差列の効果が大きいならば誤差とは考えにくく、交互作用の可能性が高まると考えられます。
もちろん技術者によって見解が違う場合もあり、全員一致の見解すら間違っている場合もありますが、統計的に分離不能と即断する前に、ちょっとだけ考えてみてください。
いずれにしても交互作用100%、あるいは実験誤差100%ということはなく、両者の比率を推測することになります。
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