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QUESTION 質問No.52

新任の開発課長がまず初めに学ぶべきこと

設計・開発人的資源マネジメント |投稿日時:
電子工学系の大学院を卒業後、大手の電気電子製品メーカーに勤めて12年になります。
自動車積載製品の電子回路設計者として、それなりに充実した仕事をやってきましたが、来月の人事異動で突然現部門の課長昇進の内示があり驚いています。
技術者としての自信はありますが、30名の組織をまとめて成果を出すことは全く別の能力であり、これまで技術管理の勉強をしてきたこともなく、極めて不安です。
どうやら同じタイミングで部長に昇進する現上司が引き上げてくれたらしいので、彼のサポートは期待していますが、あと3週間で取りあえず勉強すべきこと、準備すべきこと、さらにその後継続して努力していくべき考え方などについて、是非専門家の皆様のご意見をお聞かせください。

【これは事務局が用意した仮想の質問です】

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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

 技術者の人材戦略、教育体系、e-learning教材の開発などに携わってきた経験から、留意点をアドバイスします。御社のような大手企業の場合、人事教育システムとして、階層別教育が行われているのではないでしょうか。基本的には、会社の階層別管理職研修を受講すれば済む場合がほとんどであると考えます。なぜなら、いきなり、一般社員から課長になるということは、まずないはずです。その助走期間として、少なくとも数人レベルの部下を任されたチームリーダーや係長の役割を経験していると思います。ほとんどの人は、その延長線上で、OJTでケーススタディを学んでいけばよいのです。本件は、特殊なケースと考え、新任管理職として、何を学ばなければいけないのかも考えてみましょう。

 一般論では、雲をつかむような話になりかねませんので、ここでは、著者らが技術者の人材戦略に基づき作成した最新の新任管理職研修の狙いとメニューを紹介してみましょう。まず、管理職として期待される素養として、経営方針・ビジョンの理解、変革リーダーシップ、人事制度・労務管理の理解、お客様志向の醸成、グローバル対応力などを設定しています。それに対応して、教育メニューとして、経営ビジョンの理解、新任管理職の期待役割とは、人事制度・労務管理の理解、企業倫理、メンタルヘルス、リスクマネジメント、経理・財務基本知識、情報・資産管理、異文化コミュニケーションなどを実施しています。ただ、注意していただきたいことは、これらの知識は、座学で学ぶのではなく、これらの知識を素養として、適宜上長や同僚などにも意見を求めながら、OJTで訓練されるべきものなのです。

 さらに、会社のの階層別教育の事前学習として、3週間で、基本的なことを学習する方法も紹介します。まず、会社のビジョンは、配布資料や冊子等で再確認してください。そして、財務知識は、易しく書かれた本(漫画でもよい)を1冊熟読して理解されればよいでしょう。その他の知識は、技術者向けe-learning 教材として無料で学習できる「Webラーニングプラザ」のサイトがあります。これらは、基本てきなことを10分程度に簡潔にまとめられて、理解しやすい教材となっています。
<Webラーニングプラザのe-learningメニューの例>
①人間関係管理(ホーソンの実験、組織、動機づけ、コミュニケーションなど)
②労働関係法と労務管理
③労働時間と賃金管理
④プロジェクト管理に関する人的資源管理
⑤人の行動モデルとインセンティブ
⑥組織形態と組織文化
⑦リーダーシップ
⑧人的資源開発
⑨教育訓練管理
⑩人事考課管理
⑪リスク管理と危機管理
⑫情報管理
⑬企業倫理

回答者:ぷろえんじにあ代表 粕谷茂




ANSWER
回答No2 | 投稿日時:

 ものづくり企業のR&Dを専門としてコンサルティングをしている立場から、新任の開発課長が学ぶべきこと、残り3週間で準備をすべきこと、さらには課長就任後に取り組むべきことについてアドバイスします。

 開発課長として学ぶべきこととして、大きく捉えて5つの分野があります。
(1)戦略マネジメント
(2)プロジェクトマネジメント
(3)技術マネジメント
(4)チームマネジメント
(5)リーダーシップ
 この中でも、最初に学ぶべきことは、チームマネジメントとリーダーシップです。あなたは、これから開発課長として30名の組織を動かすわけですから、チームマネジメントとリーダーシップが特に重要になります。しかし、慌てて関連書籍を読む、セミナーを受けるなどといった座学の学習をする必要はありません。残り3週間は、開発課長としてチームマネジメントを実践し、スムーズにチームを立ち上げるための準備期間として時間を使ってください。そこで、残された期間を1週間単位で3つのステージに区切り、それぞれ以下のことに取り組んでください。

■ステージ1(1週目) 「チームのビジョンとミッションをまとめる」
 これからあなたが担当するチームについて、ビジョン(将来のありたい姿)とミッション(本来の役割・使命)を考えてください。「自分はどんなチームをつくりたいのか」、「自分のチームは何を期待され、どのような貢献が求められているのか」、自分なりの考えをまとめてください。

■ステージ2(2週目) 「チームの目標を設定する」
 チームの目標を設定するうえで、押さえておくべきポイントは2つあります。
①少なくとも3年以上先を見据えて目標を立てること。
②「達成目標」と「学習目標」の2つの目標と立てること。
「達成目標」とは、チームが実現すべき事業業績に直結した目標です。「学習目標」とは、仕事をとおしてチームがどのような能力を磨いていくのかを視点とした目標です。

■ステージ3(3週目) 「メンバーへの期待を書き出す」
 メンバー一人ひとりの顔を思い浮かべながら、「ベテランのAさんには、自分の仕事だけでなく、チームのまとめ役や後輩の指導などの役割を担ってほしい」「中堅のBさんには、チームの技術力を高めるために新しい技術の習得を積極的にリードしてほしい」など、各人がチームの中でどのような役割を果たしてほしいのかを具体的に書き出してください。

 事前準備でまとめた内容については、上司に見てもらうことをお奨めします。特に、チームのビジョン、ミッション、目標について上司としての意見や考えを反映させておくは、具体的なサポートを引き出すことにつながります。
以上が、3週間の準備期間で、あなたにぜひ取り組んでいただきたい内容です。

 次に、開発課長として仕事をスタートさせた直後の1ヶ月間に、チームを立ち上げるためにぜひ取り組んでいただいきたいことをアドバイスします。
最初は、メンバー一人ひとりとの面談です。時間は1人あたり20分程度でよいと思います。1日に2人くらいを目安に行い、就任度2~3週間で全員面談するようにください。
面談では、「仕事の上で困ったことや悩んでいることはない?」「やりにくいことはない?」などの質問をして、メンバーが思っていることをできるだけ引き出し、聞くようにしてください。また、メンバーが話す内容について、「その考えは、おかしい」とか「間違えている」といった指摘は極力しないでください。メンバーの話に多少違和感を覚えることもあると思いますが、ここでは相手の話を聞くことに専念してください。面談時間の内15分間はメンバーの話を聞くことに専念し、最後の5分間だけ使い、課長として考えているチームのビジョン、ミッション、目標、個々のメンバーに期待することを話してください。その際、決して「これは決定事項だ」というような話し方ではなく、「課長としてこう考えているのだがどうだろうか」といった投げかけのスタンスで話してください。そして、最後に「キックオフミーティングまでに、チームのために自分が果たすべき役割について考えておいて欲しい」と伝えてください。

 全員の面談が終わったタイミングで、チームメンバー全員を集めたキックオフミーティングを行ってください。キックオフミーティングでは、まず、課長であるあなたからチームのビジョン、ミッション、目標について説明し、そのあと、「自分がチームの中でどのような役割を果たしていくのか」について、メンバー一人ひとりに発表してもらってください。さらに、「チームの目標を達成していくために取り組むべきこと」というテーマで、メンバー同士でディスカッションをしてもらうことも効果的です。課長からメンバーへ向けた一方通行型ではなく、できるだけメンバーが主体的に参加するミーティングになるように実施することを心掛けてください。

 最後に、チームを運営するうえで、特に気をつけていただいたいことをアドバイスします。それは、「朝令暮改をためらわない」ということです。事前準備の期間で考えた内容(ビジョン、ミッション、目標、メンバーの期待など)に、こだわりすぎないようにしましょう。これらは、言わば実践前に考えた仮説ですので、メンバーの意見や状況の変化なども踏まえて柔軟に変更していく姿勢が大切です。とかく人は自分が考えて決めたことには執着したくなるものですが、しっかりと基軸を定めたうえで、状況に合わせて変えるべきところは柔軟に変えていく能力を身につけることは、マネジメントを行う者にとって非常に重要です。

 今回は、チームマネジメントとリーダーシップに焦点を当ててアドバイスしましたが、戦略マネジメント、プロジェクトマネジメント、技術マネジメントなど、開発課長として学ぶべき分野はまだまだあります。また別の機会にご紹介したいと思います。