正直②の方が実行に移しやすそうな印象です。(①の検定の場合、効果量やn数の設定など事前準備が面倒そうです)
①両方の設備で生産した製品品質が同等であるか確かめる為に検定を行う
②製品の規格は決まっているので、新設備で生産した製品品質で十分な工程能力が確保できるか確認する
もみじさん、どちらも正しそうで悩ましいですね。
自明ながら実行しやすいかよりも、正当である方を選ぶべきですよね。
その点でいえばこれも自明ながら②が正当です。
ただし評価の手間は①とさほど変わりません。
なぜなら少数のサンプルで工程能力を判定しても信頼性が低いですから、①で検定の危険率を設定するように、②では工程能力の(結局標準偏差の)推定に危険率を設定する必要があるからです。
同じ工程能力1.5といってもその推定には幅があり、それは危険率を低く設定するほど広くなり、狭めるには相当数のデータが必要となります。
むしろ外野から指摘されそうなのは、現状設備の工程能力が非常に高かった場合、たとえ新規設備の工程能力が十分であっても、「現状より悪いのに大丈夫か?」という懸念です。
もちろん論理的に大丈夫なのですが、元々の規格が甘く設定されていた場合は、品質問題を起こすリスクがあります。
この際ですから、経験ではなく「損失関数」を考慮した正しい規格値を導入することで、大きな品質問題を防ぎたいものです。
|
もみじさん、このような問題は生産現場では茶飯事ですね。
何故,新規の設備に更新する必要があるのでしょう。
1)単純に旧設備の老朽化に伴う→可能であれば移管したい。
2)もっと生産能力を上げたい。→コストダウンに寄与したい。
3)従来の品質より高めた製品を生産したい。→目標の品質を確保したい。
4)新規の設備を使用する必要が生じた。→移管することが目的。
それぞれの理由により、評価の方法は異なりますよね。
検定を用いる場合は,
1)(コストダウンが目的なので)差が無ければ移管したい。(両側検定)で有意とならないなら採用。
2)品質向上が目的なので統計的有意差(片側検定)が欲しい。
などが理由になります。
工程能力を用いる場合は,
新旧で品質水準に差があるのか知りたい。
どちらもサンプル数や危険率,検出力などの制限はあります。
検定や推定の結果にはサンプル数の影響が出ます。サンプル数が無限大になれば,わずかな差でも有意となります。その反対にサンプル数が少なければ差があっても有意になりません。医薬の世界なのでは事前に有意となる差の基準値を決めて実験します。一般的にはd=1以上(標準偏差以上の差があること)として行います。
以下参照ください。
永田氏は「入門統計解析法」の中で,以下のように述べている.
例えば母平均の差の検定を行った場合,”検定結果“と”固有技術的な観点から見た差の大きさ“とが合わない場合がある.つまり,
①検定結果は有意だが,平均値の差は固有技術的に意味があるとは思えない場合
②検定結果は有意ではないが,平均値の差は固有技術的に意味のある差と思える場合
①の場合は,区間推定まで行ってみてやはり意味のない差しか得られないのなら固有技術的な観点を優先してもよい.検定ではデータのばらつきを基にして判定しているから,平均値の差が固有技術的に意味のないものであっても,”有意差あり“となり得る(データ数が大きい場合に発生しやすい).しかし,有意差があっても,アクションに繋げた時効果がない程度の差なら無視してもよい.但し,解析者にとって都合の良い判断・早計な判断を避けるため,区間推定まで行って考慮する方が良い.
②の場合は少し厄介である.固有技術的に意味のある差を”有意差なし“と判定するくらいのデータのばらつきが大きい,という解釈の仕方がまずある.したがって,そのばらつきの大きさについて検討する必要がある.ばらつきを減少させる努力をしなければ固有技術的な差は生きてこないからである.しかし,データのばらつきが大きくて有意差がないということは,その固有技術的に意味のある差が見かけ上のものにしか過ぎないかもしれないことも認識しておく必要がある.また,データ数が少なくて検出力が低かったということも考えられるが,この点は参考程度にしておいた方が良い.有意になるまでデータを取り続けるようなことをしてはいけない.→平均値の差が小さくても,サンプル数が大きいと結果的に”有意差あり“となる.
以上,参考になれば幸いです。
|