〇制約:予算
〇変数:3種類の金属の配分量(金属は単価が異なる)
〇最適化(最小化したい)したい指標:排ガス3種類(合計するか優先つけるかなど要検討)
最終的には金属の配分量の水準を設定して直交実験(どの変数も効果があることは分かっているので2水準粗ふるいはせず3水準で)によって最適水準をもとめようと考えているのですが、過去のデータ(ある走行モード(速度と排ガスの瞬時値)とその金属配分)は取れている状態なので、そこから多変量解析などを行って、水準幅のあたりをつけようとしています。解析の初動含めて進め方全体のアドバイスなどがあれば教えていただけると幸いです。
多変量解析、品質工学、SQC、QC手法全般におけるコンサルをしております、村島技術士事務所の村島です。
ご質問の件、過去データを生かした実験計画へのフィードバックというとらえ方から、アドバイスさせていただきます。
解析に当たっては、よくあるのは、異常値の除外です。なぜ、異常値が出たかどうかは重要ですし、異常値がもとで改善ができたという話も聞きます。ただ、各パラメータのなにがどれだけ効いていて、どのあたりが最適水準なのかという話の場合には、異常値は除外したほうがいいでしょう。
つぎに、重回帰分析のような手法で解析する場合には、相関行列から入り、説明変数間どうしの相関係数が高いものは、どちらかを除外すべきです。(多重共線性による式の不安定性を除くため)
又、重回帰分析の偏回帰係数の大きさは、効果の大小とは関係ありません。注意しましょう。標準偏回帰係数を求めましょう。
もっと、危ないのは、重回帰分析での偏回帰係数の±からは、正相関や負相関の判定は難しいことです。単相関と傾向が一致するとは限りません。
以上のような理由で、重回帰分析のような多変量解析は、実は、初心者向きではありません。
この意味で、品質工学の中のT法が、非常に役に立ちます。
ちなみに、わたしは、多変量解析の重回帰分析を使う場合には、必ずT法と結果を比較して、解釈しています。
最終的に、実験で振るべき水準については、重回帰分析なら信頼区間(もしくは予測区間)でいいように思えますが、前述の理由により、かなり複雑な計算となります。
T法あたりで攻めて、効果の高いパラメータの平均水準あたりで±2σ程度の水準幅で実験計画法へ持ち込むのが無難だと思います。
(T法の場合、各パラメータと目的変数との相関は、単相関の場合とほぼ同じの為、固有技術的にも解釈しやすいです。)
以上ですが、ご参考になさってください。
|
QE Compassの細川と申します
状況を十分に把握できてませんので適切ではない部分もあるかもしれませんが、何点かコメントさせていただきます.
過去のデータを最大限活かすことはとても効果的です.多変量解析で最も一般的に使われている重回帰分析は予測を目的とした手法ですから、本テーマの目的である要因解析には使えません.また、精度確保のために多くのサンプル数が必要となることから、実験回数を減らしたい技術開発や製品設計ではとても不便です.経験的には調べたい項目数の3倍以上のサンプルが必要になります.
少ないサンプル数で多くの項目の解析を可能にする品質工学の多変量解析T法はとても優れたツールです.特に、要因解析では単位空間の概念を無くしたTa法がおすすめです.ただし、T法もTa法も注意が必要です.項目数/サンプル数の値が大きくなればなるほど偶然の相関が発生しやすくなり解析結果の信頼性が低下します.
対策方法はT法解析における標準的な指標である総合推定SN比に加えて、説明率を算出し、説明率のサンプル数依存を評価することです.さらに、今年の品質工学会の大会(RQES2023)で、Ta法の解析結果の信頼性確保の目安となる項目数とサンプル数の関係を明らかにした発表がありました.そちらも参考にしてください.いずれにしても説明率を算出することが大切です.詳細は以下の参照をお願いします.
細川哲夫:“タグチメソッドによる技術開発 ~基本機能を探索できるCS-T法”,日科技連,(2020)
細川哲夫, 岡室昭男,佐々木康夫, 多田幸司:パラメータ設計とT法を融合した開発手法の提案,品質 Vol.45, No.2 pp.64-72 (2015年)
QE Compass HP
https://qecompass.com/
次に実験方法についてコメントします.組成や配合比などの制御因子は交互作用が発生しやすい傾向があります.対策方法は大きく2つです。 一つは技術的な意味のある制御因子を定義することです.例えばTbFeCoという3元系の磁気記録材料があるのですが、単純にTbの量、Feの量のように制御因子を定義すると水準の組み合わせで良い条件が存在してしまうので交互作用が増加します.よって、Tb/(FeCo)やFe/Coのように技術的な意味のある比率のような制御因子を定義することが重要です.もしそれができない場合は単純な制御因子を直交表に割り付けて、新たに比率の制御因子を中間的な特性として定義してTa法解析を実施するCS-T法の活用も効果的です.さらに物性値やセンシングデータなども中間特性として追加で計測し、改善メカニズムを把握することも可能です.CS-T法についても上記を参考にしていただければと思います.
二つ目は評価する特性の加法性を確保することです.それが品質工学の目的機能や基本異能です.どの排ガスも低減効果を得たいのでガス種類はノイズ因子です.また触媒には機能があるはずです.化学反応であれば時間軸上での反応の速度とロバスト性になります.動的な機能の感度とロバスト性を評価することが全体最適化と交互作用を減らす効果を待ちます.
参考になれば幸いです.
|
再び、村島です。T法についての回答には、別の講師からもコメントがいっています。私も大いに賛同ですので、同じく参考になさってください。
ここでは、私への回答への再質問にお答えさせていただきます。
①T法はMT法という、品質工学の中の一分野ですが、広い目からみて、多変量解析と考えてかまいません。
②計算はエクセルで十分可能です。
③留意点ですが、単位空間をどうとるか、信号空間をどうとるかといったことで、初心者は悩まされます。結果も違ってくるので、結構厄介です。ただし、予測に使うのであれば、現在、Ta法と呼ばれるもので、単位空間を設定しないやり方で十分です。
なお、T法の場合でも、説明変数間に相関関係がある場合は要注意です。効果のダブルカウントになるからです。重回帰分析の場合にも、マズイのですが、これは多重共線性による回帰式の不安定につながるからです。理由が違います。
現実には、T法のほうが重回帰分析よりも優れていると、個人見解ですが、言いきっていいと思います。私は、今も、月に2回、データ解析の仕事をしていて、重回帰とT法の双方で同じデータを解析していますが、重回帰分析は、習熟しても解釈が難しいです。
一例ですが、たとえば、重回帰分析の結果、(yを目的変数とし、アップしたい。x1,x2は制御系の説明変数)
y=1+x1-x2
となったとします。この結果から、何を読み解くかです。以下のような読み方をしがちです。
①yをアップさせるにはx1をアップし、x2をダウンさせればよい。
②x1とx2の係数は、1とー1なので、効果の影響は同等である。
③よって、次の実験では、x1もx2もともに確認が必要で、かつ、x1にはアップした水準を、x2にはダウンした水準を入れて、実験計画を組むこととする。
もし、こう思われていたなら、全て間違いであることに気が付いてほしいです。逆に、その程度は理解されているなら、大丈夫かと思います。
なお、もうひとつ。重回帰は、逆回帰しないと、目標値から説明変数の値を出すことは間違いですが、これもよくやる間違いです。
ようは、重回帰分析は、エクセルの標準装備なので、使いやすいですが、解釈や判断を間違えやすいのです。
(完全な予測にのみ使うのであれば、そこそこ大丈夫です。)
以上、再質問への回答とさせていただきます。
よろしくお願いします。
|