その会社が、現在の窮状を招いた原因について多くが語られていますが、そのほとんどが液晶事業に対する過剰投資に関するものです。
しかし、これは単なる“現象”であって、真の原因ではないと思うのです。
ブルーオーシャン戦略を支え、シャープの成長を可能にしてきた、本でも紹介されている、社長直轄の「緊急プロジェクト」(略称:緊プロ)を、片山社長が、ご自身が深くかかわった液晶事業に対する過信から、レッドオーシャン戦略に使ったことが真の原因であると言うのが私の見解ですが、残念ながら、それを検証する手段がありません。
そこで、質問と言うか、お願いは、上記の見解に対する“検証”に当たる情報が欲しいのです。
そのようなお願いをする最大の理由は、これからの企業にとって、この「緊プロ」の考え方は、貴重であり重用されてしかるべきなのに、今のままだと、へたをすると「緊プロが原因」として、ネガティブ思考になりかねないことで、それは産業界にとって由々しきことだと思うからです。
勝手なお願いですがよろしくお願いいたします。
なかなか難しくて、内部事情を知らないと回答できない質問のように思われますので、質問者の期待とはずれるかもしれませんが、私の個人的見解を提供します。
事業戦略は言ってみれば多元連立方程式を解くようなもので、必要なデータが正確に集まれば必然的に答えが求まるのですが、数学と違ってデータが時々刻々変化したり、場合によっては想定外の変数が隠れていたりして、方程式が複雑になるほど結論を誤る危険性が高まります。
しかし、AかBか判断が非常に難しい場合、それはどちらの解もほぼ同程度の期待値を持っていると言えるため、極端な話どっちでも良いと私は思っています。
一般には上位者ほどより多くの正確な情報を持つことが可能なため、より良い判断ができるはずです。情報提供者が恣意的に不正確な情報を上げたり、決断者が明らかに低い期待値の決定を下せば、当然悪い結果となって現れます。
むしろその決断に至った理由と決定事項に対して、社員初め関係者が十分に賛同して、全力を挙げて達成に向かうならば、必ずしや計算による期待値以上の成果が出るでしょう。
反対に、たとえ決断自体の初期期待値が高くとも、社員の納得感が無く、疑問を持ちながら中途半端な業務を進めるならば、絶対に計算通りの結果が出るようには思えません。
また時々刻々変化する情勢に対して、タイムリーに適切な修正を加える事も重要です。
質問にあるシャープの液晶戦略に関して、私は一般常識程度の情報しか持っておりませんが、結果論として想定通りに売れなかったから過剰投資と呼ばれるのであり、関係部門が一致団結して売りまくったならば、その投資戦略は大絶賛されていたはずです。
野村監督の口癖「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」は誠に至言で、シャープの失敗には何らかの原因があったには違いありませんが、たった一つのエラーで負けたとは思いにくく、それを挽回する幾度かのチャンスをいずれも活かせなかったものと思われます。
その意味で「緊プロ」に原因の一端があったとしても、そこだけに押し付けることは不適切でしょう。
非常に概念的な見解で申し訳ありませんが、ご参考になれば幸いです。
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