【中止】レアメタルレス・環境調和材料を用いた熱電変換材料・モジュール・システムの開発と実用化に向けた取り組み
★最近10年間で精力的に研究開発が行われてきた新しい熱電材料としての銅と硫黄を主成分とする物質について一貫して研究を進めてきた講師が、その経験や知見、データに基づいて、この材料系の長所や問題点、実用化に関する取り組みを紹介!
★多岐にわたる材料研究に従事し、NEDOの先導研究プログラムにおける研究代表者も務める講師が、温度差発電技術の社会実装を本気で目指し、そのために必要な材料を新たに開発した経緯や開発コンセプト、現状と課題について紹介!
★熱電発電を理解するうえでの基礎から最新の材料開発の現状や課題について、特に環境調和型熱電材料として世界最高の性能指数を達成した硫化物Cu2ZnSnS4開発の成果や裏話を紹介!
★熱電発電技術の実用化にあたり課題となるレアメタルを用いない熱電変換材料と熱電発電のシステム開発について、マグネシウムシリコンスズ材料及び本材料を用いたモジュールに関する開発状況、そして凝縮潜熱に着目した熱電発電システムの開発状況や課題について説明!
セミナープログラム
第1部 レアメタルレスで低毒性元素からなる銅–硫黄系熱電変換材料の開発と実用化に向けた取り組み
【10:30-11:45】
九州大学 大学院総合理工学研究院 物質科学部門 准教授 末國 晃一郎 氏
【講演主旨】
固体の「ゼーベック効果」という物理現象に基づいて熱エネルギー(温度差)を電気エネルギーに直接変換できる熱電変換材料が注目を集めています。従来はテルルという稀少元素を用いた材料が主流でしたが、近年では広範な応用を志向した、地殻埋蔵量が豊富な元素を主成分とする(つまりレアメタルレスな)材料の開発が進められています。本講座では、その様な材料の候補として有望視されている、銅と硫黄を主成分とする材料系に焦点をあて、我々の研究成果を中心にして、材料探索、合成方法、性能向上、実用化に向けた取り組みについて紹介します。また、熱電変換の基礎や最近注目されているレアメタルレス材料についても概説します。
【キーワード】
熱電発電、熱電変換、廃熱利用発電、温度差発電、ゼーベック効果、半導体
【講演のポイント】
本講演でとりあげる、銅と硫黄を主成分とする物質は、最近10年間で精力的に研究開発が行われてきた新しい熱電材料です。講演者は、この材料系について一貫して研究を進めてきました。その経験や知見、データに基づいて、この材料系の長所や問題点、実用化に関する取り組みを紹介します。
【習得できる知識】
・熱電変換(主に熱電発電)の基礎知識
・熱電材料の探索指針、性能向上方法
・銅–硫黄系熱電材料の開発動向の全体像
【プログラム】
- 熱電変換の基礎知識
- 熱電効果
- 熱電変換効率
- 熱電物性
- 熱電変換材料の開発動向
- 従来材料
- 新規材料
- 銅–硫黄系材料
- 銅–硫黄系材料の開発動向
- 材料探索
- 合成方法
- 熱電特性、性能向上
- 実用化に向けた取り組み
- まとめと将来展望
【質疑応答】
第2部 Fe-Al-Si系熱電材料(FAST材®)の開発と実用化に向けた取り組み
【13:00-13:45】
国立研究開発法人物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 熱電材料グループ, グループリーダー 博士(科学)
【講演主旨】
熱電発電(温度差発電)技術は、近年IoT機器駆動用の自立電源としての活用が期待されています。社会実装には、材料性能の高性能化だけではなく、材料の資源性、プロセスコスト、発電モジュール化技術、耐久性向上、熱マネジメント、シーズとニーズのマッチングなど取り組まなければならない課題が山積しています。本講演では、一材料研究者が温度差発電技術の社会実装を本気で目指し、そのために必要な材料を新たに開発した経緯や開発コンセプト、現状と課題についてお話できればと思います。
【キーワード】
温度差発電,環境調和型材料,IoT機器駆動用自立電源,デバイス化技術,量産技術
【講演ポイント】
講演者は、これまで多岐にわたる材料研究に従事しており、企業とも基礎研究から応用研究まで含めて積極的に推進してきました。また、NEDOの先導研究プログラム(エネルギー・環境技術新技術先導研究プログラム、新産業創出新技術先導研究プログラム)における研究代表者を務めており、熱電(温度差)発電技術の社会実装に向けた研究開発に取り組んでいます。
【習得できる知識】
熱電(温度差発電)材料の基礎から応用まで、材料・モジュール化研究開発の全体像を俯瞰できるようになります。
【プログラム】
- 熱電発電(温度差発電)技術とはー日本における製品化例とアプリケーション
- 評価指標と評価方法ー無次元熱電性能指数、最大エネルギー変換効率
- 材料開発のコンセプトと開発手法ービスマス・テルル系既存材料に学ぶ新材料開発の際のヒント
- Fe-Al-Si系新規材料(FAST材®)の紹介ー計算科学・実験・機械学習を用いた統合型材料研究開発の例
- FAST材の量産化プロセスーラボレベルからの脱却
- FAST材を用いた小型・高集積モジュール化技術の構築ー高耐久性モジュールの誕生
- 実証実験の紹介ー現状と課題
【質疑応答】
第3部 廃熱を有効活用する環境調和材料を用いた熱電変換デバイスの開発
【14:00-15:15】
宮崎大学 工学教育研究部 環境・エネルギー工学研究センター担当 准教授 永岡 章 氏
【講演主旨】
日本のみでさえ、年間排熱量は原子力発電所20~50基分とも試算されており、熱エネルギーはカーボンニュートラルを達成する上で非常に大きな役割を持ちます。特に、この排熱(温度差)を直接電気へ変換する熱電発電技術は、再生可能エネルギーの観点からも注目されています。本講座では熱電発電の基礎から、レアメタルフリーに基づく環境調和型熱電変換材料の開発と最近の動向、再生可能エネルギー分野における熱電発電の現状と課題について我々の研究結果を含めて紹介します。
【キーワード】
熱電発電、材料開発、熱エネルギー、排熱、再生可能エネルギー、太陽電池、環境調和、レアメタルフリー、カーボンニュートラル、スマート社会
【講演ポイント】
熱電発電を理解するうえでの基礎から最新の材料開発の現状や課題について解説します。特に環境調和型熱電材料として世界最高の性能指数を達成した硫化物Cu2ZnSnS4開発の成果や裏話も紹介します。
【習得できる知識】
・熱エネルギーの現状とカーボンニュートラル実現における役割に関する知識
・熱電変換材料開発における基本的な戦術、最新の開発指標、作製方法に関する知識
・熱電変換デバイスの基本原理と開発状況に関する知識
・当該分野における世界の研究開発動向
【プログラム】
- 熱電発電の基礎
- カーボンニュートラルに向けた方向性
- 熱エネルギーの現状とポテンシャル
- 太陽光発電と比較した熱電発電の現状
- 環境調和型熱電変換材料の開発
- 熱電材料開発の基本戦略
- 世界の熱電材料開発の現状
- 太陽電池材料から高効率熱電変換材料へ
- 環境調和型熱電デバイス開発の現状
- 熱電発電の将来展望とまとめ
- スマート社会における熱電発電
- 緊急電源としての熱電発電
- まとめ
【質疑応答】
第4部 環境調型MgSiSn熱電変換モジュールの開発と廃熱発電システムの実用化に向けた取り組み
【15:30-16:45】
株式会社白山 R&D本部 本部長 内田 健太郎 氏
【講演主旨】
脱炭素社会実現に向けて、エネルギー効率を高める省エネ技術、特に排熱を有効利用する技術は重要である。その技術の中で熱を電気に直接変換する熱電発電技術が注目されている。熱電発電技術が実用化されるためには二つの課題を解決する必要がある。一つはレアメタルを用いない熱電変換材料であり、もう一つが熱電発電のシステム開発である。熱電変換材料の現状及び株式会社白山が開発しているマグネシウムシリコンスズ材料及び本材料を用いたモジュールに関する開発状況や課題について説明する。また、システム開発とは、排熱を如何にモジュールに通過させるかの構造や組み合わせの開発である。株式会社白山で開発している凝縮潜熱に着目した熱電発電システムの開発状況や課題について説明する。
【キーワード】
熱電発電、環境調和型熱電材料、排熱発電、未利用熱
【講演ポイント】
熱電発電の実用化のためには、熱電材料から発電システムに至る広範囲な技術の最適化が必要です。材料-素子-モジュール-システムのそれぞれにおいて、熱電発電を開発する上で必要な技術について解説します。
【習得できる知識】
熱電変換材料の基礎、材料合成プロセス
熱電発電モジュールの開発における課題
熱電発電システムの全体像と課題
【プログラム】
- 環境調和型熱電変換材料
- Mg-Si-Sn熱電材料位置付け
- Mg-Si-Sn 熱電材料の特徴
- Mg-Si-Sn 熱電材料の合成プロセス
- Mg-Si-Sn 熱電材料の評価
- Mg-Si-Sn系熱電発電モジュール
- 素子及び接合部開発
- モジュール化
- 熱電発電モジュールの評価
- 熱電発電システムの開発
- 各社の熱電発電システム取り組みの現状
- 凝縮潜熱に着目した熱電発電システムの概要とその結果
- 熱電発電システム実用化への課題
【質疑応答】
セミナー講師
第1部 九州大学 大学院総合理工学研究院 物質科学部門 准教授 末國 晃一郎 氏
【経歴】
平成22年3月 広島大学大学院先端物質科学研究科 修了 博士(理学)
平成22年4月〜平成25年3月 北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科 助教
平成25年3月〜平成28年3月 広島大学大学院先端物質科学研究科 助教
平成28年4月〜 九州大学大学院総合理工学研究院 准教授
【受賞】
平成19(2007)年8月 2007年度 日本熱電学会 学術講演会講演奨励賞
平成26(2014)年3月 日本物理学会 第8回若手奨励賞(領域7)
平成30(2018)年8月 2018年 日本熱電学会 進歩賞
第2部 国立研究開発法人物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 熱電材料グループ, グループリーダー 博士(科学) 高際 良樹 氏
【経歴】
2022年4月 – 現在
国立研究開発法人物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 熱電材料グループ グループリーダー
2020年4月 – 2022年3月
国立研究開発法人物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 独立研究者(主幹研究員)
2016年4月 – 2020年3月
国立研究開発法人物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 熱電材料グループ 主任研究員
2015年4月 – 2016年3月
国立研究開発法人物質・材料研究機構 電池材料ユニット エコエネルギーグループ 研究員
2009年4月 – 2015年3月
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻 助教
2012年4月 – 2013年3月
カリフォルニア工科大学 材料科学部門 Visiting Associate
2006年4月 – 2009年3月
日本学術振興会 特別研究員(DC1) [東京大学 大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻]
【受賞】
本多記念会 第41回本多記念研究奨励賞 (2020)
Mission Innovation表彰制度 Mission Innovation Champion (2020)
Journal of Alloys and Compounds, Outstanding Contribution in Reviewing (2017)
Applied Energy, Outstanding Contribution in Reviewing (2017)
日本熱電学会 進歩賞 (2017)
日本物理学会 第11回若手奨励賞 (2017)
日本熱電学会 第9回欧文論文賞 (2015)
国際熱電学会 The 2014 ITS Outstanding Poster Award (2014)
日本熱電学会 第8回講演奨励賞 (2011)
日本熱電学会 第5回欧文論文賞 (2011)
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 研究科長賞 (2009)
【著作】
高際 良樹.第7章 機械学習を用いたFe-Al-Si系新規材料(FAST材®)の材料研究.シーエムシー出版, 2022
高際 良樹. 第6章第6節:熱電材料におけるマテリアルズ・インフォマティクスの応用事例~Fe-Al-Si系新規材料(FAST材料)の性能向上~. 技術情報協会, 2021
高際 良樹. 計算科学・実験・機械学習を用いたIoT機器駆動用新規熱電材料の開発. シーエムシー出版, 2020
黒崎 健, TAKAGIWA, Yoshiki, Xun Shi. Thermoelectric Materials -Principles and Concepts for Enhanced Properties-. DE GRUYTER, 2020
第3部 宮崎大学 工学教育研究部 環境・エネルギー工学研究センター担当 准教授 永岡 章 氏
【経歴】
2014年宮崎大学大学院農学工学総合研究科修了 博士(工学)
2013年~2018年まで日本学術振興会特別研究員DC2(宮崎大学)、PD(京都大学)、海外特別研究員(米国ユタ大学)を経て、2018年11月より宮崎大学工学部環境・エネルギー工学研究センター助教、2021年4月より同准教授。専門は、多元系化合物単結晶に基づく太陽電池と熱電変換材料の開発。近年は、太陽光発電システムを用いたスマートソリューションとしてZero Energy Building (ZEB)の開発にも注力している。
【最近の受賞】
2021年 CGCT Young Scientist Award
2020年 高柳健次郎財団研究奨励賞
2019年 第46回応用物理学会講演奨励賞
2019年 第16回日本熱電学会学術講演会優秀講演賞
2019年 第16回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウムイノベイティブPV賞
2019年 第32回安藤博記念学術奨励賞
2018年 第15回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウムイノベイティブPV奨励賞
第4部 株式会社白山 R&D本部 本部長 内田 健太郎 氏
【経歴】
2006年 金沢大学卒業
プラントエンジニアリング会社及び化学系メーカー等を経て2017年に株式会社白山に入社。
以後、熱電開発の研究開発及び事業化に従事
技術士(機械部門)、エネルギー管理士
セミナー受講料
【1名の場合】55,000円(税込、テキスト費用を含む)
2名以上は一人につき、11,000円が加算されます。