特許情報からみた固体/半固体電池を巡る技術/事業開発競争とその動向分析[2024]~日本・米国・中国・韓国における企業/スタートアップの取り組みを俯瞰~

硫化物系をはじめ、酸化物系・ハライド系など、固体電池関連の各種材料・部材や製造方法・用途展開まで踏み込み、各企業の取り組みを詳述! ご自身でも必要となる情報を調査できるよう、特許情報や公開情報をもとに動向を分析/把握する手法・ノウハウもふまえ解説します! 

セミナー趣旨

  脱炭素が求められる社会情勢の中、さまざまな課題を抱えながらも、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を実現することが求められています。再生可能エネルギーから得られた電力の有効活用には、電池というエネルギー貯蔵手段はなくてならない存在になります。電池は、既にさまざまな製品に搭載されており、車載用電池では、液体電解質を用いたリチウムイオン電池(液系LIB)が主流となっています。現在の液系LIBには、「エネルギー密度の向上・広範囲な温度での特性維持・性能の長寿命化・より一層の安全性」が求められています。これらの課題を解決する手段として、「電解質が固体状やゲル状の電池」の技術開発が積極的に進められています。
  従来の液体電解質を固体に置き換えた電池は、固体電池(あるいは全固体電池)と称されています。固体電池では、液体電解質を用いる電池のような電解液の漏れは生じないため、安全性が高まるメリットがあります。固体電池では、形状の自由度も高まり、薄型化や大容量化が可能になり、長寿命化も図れます。そこで、自動車や電池に係る企業およびスタートアップでは、車載向け固体電池をめざした、積極的な取り組みがなされています。
  固体電解質は、硫化物系・酸化物系・ポリマー系・ハライド系・オキシハライド系に大別されます。車載向け固体電解質には、出光興産などが取り組む硫化物系と、NIO(上海蔚来汽車)などが取り組むゲル化電解質(半固体電池とも称される)などがあります。負極材料としては、工夫が施されたSi系と金属Li系のいずれかに取り組む企業が多く、負極への金属Li採用は大容量化に寄与しています。
  正極材料としては、大容量化の観点からNMC(Ni-Mn-Co)系での、ハイNiに取り組む企業が多くあります。硫化物系固体電解質では、硫化物の扱いに熟達した出光興産との連携を図る企業だけでなく、新たな製造法を公表する企業もあります。車載をめざす硫化物系では、HV(ハイブリッド車)にも採用された多層構造による出力向上、更にはH2S(硫化水素)対策などの、安全に関する技術も公開されています。車載用固体電池に対する日本企業の動向を静観していた感のある、中国や韓国の企業も、積極的な技術開発と事業化構想を公開しつつあり、実用化をめざす新たな競争段階に進んでいます。
  硫化物系以外では、固体電池の特徴を活かして、ドローンや小型モビリティなどへの搭載、更にはその安全性を活かしたウェアラブルに向けた用途開発が進められています。酸化物系では、EU電池規制の対象となるコイン電池の置き換えをめざす企業の動きも既に始まっています。
  本セミナーでは、まず固体電池を取り巻く環境や本講座の背景として、企業の戦略的活動や特許情報・技術開発情報の入手・動向把握方法について言及した後、「自動車EV化と電池産業育成が、EUの産業政策に基づくものである」ことを踏まえ、公開情報や特許情報から固体電池関連の各種材料・部材や製造方法・用途展開まで踏み込み各企業の取り組みを詳述、そこから予測される技術/事業開発競争の現状と今後の展開の俯瞰を試みます。

セミナープログラム

1. はじめに
 1.1 企業活動の根幹 ~企業に課せられた課題は?
 1.2 貴社:どちらで事業参入? ~事業開発では時間軸に注目!
    参考)既存企業のInnovation:知の深化*知の探索
 1.3 企業経営における意思決定 ~知財情報:未来予測の洞察に活用
 1.4 企業活動と知的財産 ~知的財産の位置づけ
 1.5 企業における特許の役割 ~ビジネス発想で時空を超える!
 1.6 知的財産権:「技術進化の方向性」までも支配可能!
    参考)特許権:条件付き無償開放の「罠」
 1.7 Patent:企業におけるInventionの源泉 ~特許=課題×解決手段
    視点)特許出願:知的財産への投資 ~特許1件=100万円
    視点)「戦略的外国特許出願」とは? ~どの国/地域から?
    視点)特許訴訟と弁護士費用
 1.8 事業開発をめざす企業戦略:立案の基本指針
 1.9 社会課題解決*ルール形成/活用:新たな市場形成へ
    視点)欧州グリーンディール(2019年12月):欧州成長戦略
    視点)社会課題解決をビジネスに!
 1.10 脱炭素・SDGs:欧州が仕掛けるゲームチェンジと新たな錬金術
 1.11 欧州EV化政策の目的は?
    参考)「非市場戦略」への取り組み
    視点)具体的な今/目の前のFocus vs. 抽象化された大局
2. 公開情報:業界/企業/技術開発動向の入手・把握
 2.1 業界情報 ~日経系新聞、日経BP、企業公開情報、・・・
 2.2 無料公開情報の活用 ~政府資料、調査会社報告書概要/目次、・・・
 2.3 企業HPの活用 ~沿革、求人情報(注力事業分野、開発拠点)、・・・
 2.4 競合に関わる企業情報 ~有価証券報告書、Form 10-K、・・・
 2.5 有価証券報告書 ~項目一覧
    参考)非上場企業のビジネス情報
 2.6 Form 10-K(米国:SEC)
    参考)米国:Form 10-K vs. 日本:有価証券報告書
 2.7 OSINT(Open Source Intelligence):過去・現在・未来?
3. 固体/半固体電池への取り組み:特許情報検索
  ~業界/企業/技術開発の動向把握
 3.1 利用可能な特許分類 ~FI/IPC、Fターム、CPC
    参考)欧州/米国特許検索 ~CPCも活用できるが・・・
 3.2 特許情報検索 ~技術用語の選択
    参考)特許情報を「技術用語」で検索:どう取り組む?
 3.3 業界動向を知る ~出願人/現在の権利者から知る
 3.4 企業動向を知る ~出願人*要求特性(*特許分類)
    参考)古株:出願人名で絞る vs. 新顔:要求特性で探索
 3.5 特許情報の検索:指針 ~技術用語=注目材料*用途*特徴*課題
    参考)特許明細書:効率的な読み解き方
 3.6 技術情報 vs. 特許情報
    ~事業開発をめざす企業:「技術の詳細を伏せた先行公表」を実施
 3.7 企業の新たな動きを察知するには?
    ~「出願件数の少ない最新動向特許」にどう取り組む?
 3.8 特許情報の更なる有効活用 ~新規事業企画のヒントにも!
    事例)「企業の技術開発史」を知る ~審査官引用/被引用ツリーに注目 
4. 固体電池:メリットと求められる用途
 4.1 固体電解質のメリット ~液系との比較
 4.2 固体電池のメリットが活かせる分野 ~その切り口はどこに?
5. 特許情報からみた車載用固体電池への取り組み
 5.1 日産自動車:硫化物系
    ・LGPS*高精度・高速積層構造
    ・金属Li負極と固体電解質の界面に発生する剥離やLiデンドライトの抑制
 5.2 トヨタ自動車:硫化物系
    ・電解質:出光興産との共同開発/共同特許出願
    ・バイポーラ型電池(HVでも採用済)
    ・H2S(硫化水素)対策
 5.3 出光興産:硫化物系
    ・硫化物固体電解質で協業:トヨタ自動車・Umicore
    ・強みは製造技術と特許(出光興産プレゼン)
    視点&事例)先行企業:「特許出願」にどう取り組むべきか?
 5.4 Umicore:硫化物系
    ・Catholyte(正極活物質と固体電解質の組み合わせ):出光興産と共同開発
    ・正極用材料:BASFとクロスライセンス
    ・負極:自社特許出願
 5.5 BASF:硫化物系
    ・正極:Umicoreとクロスライセンス
    ・電池パックコンセプトの共同開発
     ~Yangtze River Delta Physics Research Center (IOPLY:長江デルタ物理研究センター)、
              Welion New Energy Technologyと
 5.6 Blue Current:硫化物系
    ・Silicon Elastic Composite負極:Umicoreとの共同開発(1年間:延長は?)
 5.7 三井金属鉱業:硫化物系
    ・アルジロダイト型の電池性能向上を図る製造方法 ~「国内優先権主張」の活用も
    ・EU電池規制/リサイクル対応をめざす取り組みも ~「分割出願」の活用も
    ・トヨタ自動車も認めた技術開発力(2015年)
    ・マクセルに固体電解質を供給(2023年:事業創造本部説明会)
    視点)材料系企業は「国内優先権制度」を有効活用すべき
    視点&事例)「攻めと守り」を分割出願で実現
 5.8 AGC:硫化物系
    ・LIBリサイクル原料の利用が容易な量産法(製造時間:従来法の1/10)
     ~「早期審査請求」の活用も(早期事業化時の対応策)
 5.9 三菱マテリアル:硫化物系
    ・シンプルな製造技術を開発
    視点&事例)後発企業:「特許出願」にどう取り組むべきか?
 5.10 広州汽車(GAC)
    ・第3世代スポンジSi負極
    ・高表面積大容量正極
    ・高強度高密度固体電解質
 5.11 NIO(蔚来汽車):酸化物系
    ・BASFとの共同開発
    ・固体電池パートナー:WeLion(北京卫蓝新能源)
 5.12 Samsung SDI
    ・負極フリー固体電池
 5.13 LG Energy Solution
    ・SBS利用の固体電解質膜を採用
6. 特許情報からみた米国スタートアップの動向
 6.1 QuantumScape:Stanford大からのスピンアウト
    ・セラミックセパレータの採用でLi負極に
    ・量産に向けた協業合意:PowerCo、Volkswagen
 6.2 SolidPower:Colorad大からスピンオフ(2013年)
    ・電解質セパレータ・金属Li負極を採用
    ・BMWと共同開発
    ・SK On(韓国)が技術導入
 6.3 SES(旧:SolidEnergy Systems):MITからスピンオフ(2012年)
    ・固体電池から半固体電池にシフト
    ・塩に配位した高濃度電解質(塩・溶剤・添加物)
     視点)米国特許制度:継続性特許出願には要注意! ~分割・継続・一部継続
7. 特許情報からみたモビリティへの搭載をめざす取り組み
 7.1 パナソニック:ハライド系
    ・ハライド系、そしてオキシハライド系も
     ~ハライド系:「引用ツリー」が技術開発の起点を示唆
    ・ドローンに最適(エネルギー密度よりも充放電の速さを優先)
 7.2 Enpower Japan:東京工大発のベンチャー(2016年)
    ・EnPowerグループの一員
    ・ソフトバンクと組む(共同特許出願も)
    ・硫化物系、金属LI負極を採用
 7.3 ソフトバンク
    ・Enpower Japanや国研と組む(共同特許出願も)
    ・固体電解質の均質化を実現
8. 特許情報からみたウェアラブル対応をめざす取り組み
 8.1 TDK:酸化物系
    ・Li合金負極を採用
    ・実装はSMDからSMTへ
    ・EU電池規制対応 ~コイン型一次電池の代替に(環境負荷低減に貢献)
    ・ハライド系にも取り組む ~「国内優先権制度」の活用も
 8.2 村田製作所;酸化物系
    ・実装はSMDからSMTへ
9. まとめ ~ビジネスモデルの視点から
<質疑応答>


■お願い
前もって「ご質問事項」「リクエスト」などをお送りいただければ、可能な範囲で「配布資料」に反映させていただきます。
ご参加者の方々とのディスカッションを交えながら、解説と事例紹介を進めることで、
セミナーをより実践的なものにしたいと考えております。ぜひ「事前リクエスト」をご活用ください。

セミナー講師

 知財コンサルタント&アナリスト  菅田 正夫 氏

■ご略歴・ご活動
キヤノン株式会社にて、上流系技術開発(a-Si系薄膜、a-Si-TFT-LCD、薄膜材料〔例:インクジェット用〕など)に従事後、
技術企画部門(海外の技術開発動向調査など)をへて、知的財産法務本部特許・技術動向分析室室長(部長職)など、
技術開発戦略部門を歴任。
現在は、知的財産権のリサーチ・コンサルティングやセミナー業務に従事する傍ら、
「特許情報までも活用した企業活動の調査・分析」、さらには活動の幅を広げ、知財情報をベースとする連載執筆など、
知財アナリストの知見を活かした業界動向分析を多分野にわたり行っている。
■ご寄稿
2010年「企業活動における知財マネジメントの重要性―クローズドとオープンの観点から」
『赤門マネジメント・レビュー』 9(6), 405-436
http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR9-6.html
2011年~「知財コンサルタントが教える業界事情」(第6回以降担当)
http://www.itmedia.co.jp/keywords/mono_ipconsultant.html
2012年~「知財で学ぶエレクトロニクス」
http://www.itmedia.co.jp/keywords/fpro_electronics_ip.html
2014年6月28日 弁理士の記念日講演会
『3Dプリンタ技術の新潮流 ~温故知新で知財とともに次世代ビジネスに挑む~』(大阪)
「基調講演2:3Dプリンタの技術開発動向と知的財産戦略」
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201412/jpaapatent201412_118-127.pdf
「パネルディスカッション」
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201412/jpaapatent201412_136-147.pdf
他多数

セミナー受講料

【オンラインセミナー(見逃し視聴なし)】:1名47,300円(税込(消費税10%)、資料付)
*1社2名以上同時申込の場合、1名につき36,300円

【オンラインセミナー(見逃し視聴あり)】:1名52,800円(税込(消費税10%)、資料付)
*1社2名以上同時申込の場合、1名につき41,800円

*学校法人割引;学生、教員のご参加は受講料50%割引。 

受講について

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受講料

47,300円(税込)/人

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※銀行振込、コンビニ払い

開催場所

全国

主催者

キーワード

電気化学   知的財産マネジメント一般   事業戦略

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