商品説明
熱エネルギーから電気エネルギーへまたはその逆と自由に行き来させ、発電や冷却に有効に活用できる熱電変換技術は、地球環境と人類との調和的発展の時代の実現に貢献できる技術の一つであると言えるでしょう。
大きな可能性と潜在力を持つと期待される熱電変換技術を、何とか早く生活・社会経済の中で、その力を発揮させるためにはどうすればよいか・・・
そのキーワードは、“高性能化”に尽きるといってもよいでしょう。熱電材料分野と熱電変換システム分野、それぞれでの高性能化が不可欠です。また、どこまで高性能化できるのかという問題と、どこまで高性能化すればよいのかという問題があり、その解は、前者では、技術(シーズ)に、後者は、市場(ニーズ)にあります。
本書は、この 『高性能化』 技術を軸にすえ、熱電基礎理論と評価技術を、高性能化実現のための基礎と位置づけています。更に、技術だけにとどまらず一歩踏み込んで、この熱電変換技術が社会で活用されるために必要なこと、すなわち、“ダーウインの海”を乗り切るための海図となる技術の成熟過程の手順としての 『熱電変換の市場』 の体系化への切り込みを試みています。
熱電科学と工学並びにその市場の考察を包含した熱電学の総論として、熱電の科学技術の体系とその発展の方向性並びに社会での位置づけを具体的に知るためにお役立ていただける1冊です。
発刊にあたって
梶川 武信 湘南工科大学
吉野 淳二 東京工業大学
山中 伸介 大阪大学
河本 邦仁 名古屋大学
小原 春彦 (独)産業技術総合研究所
寺崎 一郎 早稲田大学
海部 宏昌 (株)小松製作所
八馬 弘邦 (株)KELK
Lon E. Bell BSST LLC
内容紹介
1章 熱電変換の基礎
1節 熱電変換の基礎理論
1. 熱電現象とその原理
2. 熱電現象の熱力学
2.1 現象論的輸送方程式
2.2 熱電3現象の導出
2.3 熱磁効果
3. 熱電効果および熱磁効果を用いるエネルギー変換の効率
3.1 ゼーベック-ペルチェ効果を利用する発電・冷却の効率
3.2 エッチングハウゼン-ネルンスト効果を利用する発電・冷却の効率
4. ボルツマン方程式の近似解に基づく輸送係数
5. 電子系の輸送係数
5.1 B=0の場合のボルツマン方程式の近似解
5.2 微分電気伝導率の構成要素
5.3 複数のバンドが輸送に寄与する場合
5.4 B≠0の場合のボルツマン方程式の近似解
6. フォノン系の輸送係数
7. SiGe系の熱電物性のシミュレーション
8. 電子系の近似
8.1 非縮退の近似
8.2 縮退の近似
8.3 緩和時間一定の近似
2節 熱電材料の探索と設計指針
1. 熱電材料探索の指針
1.1 一般的な指針
1.2 物質因子
1.3 電子構造の最適設計
2. 熱電物性の設計・制御に関する展開
2.1 キャリア系の輸送係数の設計・制御
2.2 フォノン系の輸送係数の設計・制御
2.3 従来の熱電材料の概念を超えて
2章 熱電材料の高性能化と今後の展開
1節 バルク熱電材料
1. これまでに開発・研究されてきた代表的なバルク熱電材料
1.1 テルライド
1.2 高温材料
1.3 酸化物
1.4 新材料
1.5 ナノ材料
2. 注目新材料系
2.1 異常低熱伝導率物質
2.2 ハーフホイスラー化合物
2.3 自然ナノ構造熱電材料
3. 熱電材料研究における注意点
2節 酸化物材料
1. 結晶本来の性質に基づくバルク材料
1.1 等方構造結晶
1.1.1 高効率材料の設計指針
1.1.2 n型SrTiO3
1.1.3 n型ZnO
1.2 異方構造結晶
1.2.1 ナノブロックインテグレーションの概念
1.2.2 層状コバルト酸化物
1.2.3 層状ペロブスカイト型RP-STO
2. ナノ・ミクロ構造効果に基づく材料
2.1 低次元ナノ構造材料
2.1.1 低次元量子効果
2.1.2 STO/STO:Nb系人工超格子
2.1.3 ナノ界面フォノン散乱
2.2 ナノ構造内臓バルク材料
2.2.1 ナノボイド分散ZnO
2.2.2 粒子配向材料
2.2.3 シナジー的ナノ構造化
3節 薄膜・低次元系材料
1. 薄膜・低次元系熱電変換材料の出現
1.1 理論の提唱
1.2 実験による検証
2. 合成・作製技術
2.1 MBE法
2.2 MOCVD法
2.3 PLD法
2.4 その他の合成・作製技術
3. 性能の評価
3.1 電気抵抗・ゼーベック係数の測定
3.2 熱伝導率の測定
3.3 ハーマン法
4. 実用化研究
4.1 デバイス開発事例
4.2 今後の展開
3章 熱電変換の評価
1節 材料物性の評価
1. はじめに何を知るべきか
2. 構造・組成の評価
2.1 X線回折
2.2 顕微鏡
2.3 組成分析
3. 物性の評価
3.1 電気特性
3.2 磁性
3.3 フォノン物性
4. ナノ材料の物性評価
2節 熱電物性の評価
1. 3つの熱電パラメタ
2. 抵抗率
2.1 測定原理
2.2 測定装置
2.3 測定結果の解析
3. 熱伝導率
3.1 測定原理
3.2 測定装置の実際
3.3 測定結果の解析
4. ゼーベック係数
4.1 測定原理
4.2 測定装置の実際
4.3 測定結果の解析の例
5. 性能指数の測定
6. ナノ材料の計測
3節 モジュール評価
1. 発電特性(モジュール特性)
1.1 熱流量計(金属ブロック)を用いるモジュール評価法
1.2 ダブルヒータを用いるモジュール評価法
4節 冷却評価
1. サーモモジュールの基礎式
1.1 性能指数
1.2 吸熱量・放熱量
1.3 吸放熱に必要な電力と成績係数
1.4 最大温度差
2. サーモモジュールの特性図
3. 熱電材料の物性評価
3.1 ゼーベック係数の測定
3.2 電気抵抗率の測定
3.3 熱伝導率の測定
4. サーモモジュールの性能評価
5. ハーマン法
4章 熱電発電・熱電冷却の高性能化
1節 熱電発電システムの高性能化
1. 熱電発電システム
1.1 基本構成と方式
1.2 熱源と素子材料
2. 熱源温度差を基にした熱電発電システム設計
2.1 熱電発電システムでの出力の概算
2.2 熱源温度差を基にした熱電発電システム設計
3. 熱電発電における素子化技術と高性能化
4. 熱取得と熱放出技術
5. 電力変換技術による熱電発電システムの高性能化
6. 将来展望
2節 熱電冷却システムの高性能化
1. 材料性能の高性能化への寄与
2. サーモモジュールの性能低下要因
2.1 基板の熱抵抗
2.2 モジュール接合の熱抵抗
2.3 熱リーク
2.4 電源リップル
3. サーモモジュール信頼性の向上
3.1 サーモモジュールの故障モード
3.2 サーモモジュールを用いた熱交換器のタイプと信頼性
3.3 温度制御と信頼性
4. 半導体製造プロセスへの適用
4.1 直接循環式薬液恒温装置(ケミカルサーキュレータ)
4.2 クーリングプレート
4.3 エッチングプロセスチャンバ温調器
5. 多段モジュール
5.1 赤外線センサ
5.2 CCD(Charge Coupled Device)カメラ
5章 市場と動向
1節 発電への市場と動向
1. 熱電発電の実用化・事業化へのアプローチ
2. 市場創成のシナリオ
3. 市場展開への課題と展望
2節 冷却への市場と動向
1. 背景
2. 主な応用製品の現状
3. 環境及び社会的影響要因
4. 新しい発電の開発
5. チャレンジ
6. 熱電マーケットの現状
6.1 短期的
6.1.1 自動車内の冷却・加熱システムの拡張利用
6.1.2 電子部品内蔵品の冷却
6.1.3 電子部品内蔵品の冷却
6.2 中期的
6.2.1 電子チップ冷却
6.2.2 自動車用、家庭用、小型産業用ヒートポンプ
6.2.3 個人用冷却・加熱製品
6.2.4 個人用局所用温度制御
6.2.5 可搬型定置式医療デバイスの温度制御
6.2.6 LEDディスプレイ
6.2.7 電池温度制御
6.3 長期的
6.3.1 超伝導関連の冷却
6.3.2 冷蔵システム
6.3.3 オンデマンド飲み物冷却
7. 結論