デザインによる知的資産経営:各部門の役割(その4)
2016-07-14
前回のその3に続いて解説します。知的資産経営において、企業の知的資産を集積して利用することが重要であり、全部門の力が必要です。今回は、製造担当部門と技術部門がどのように知的資産経営に関わるかについて解説します。
近年ではアップルをはじめ、工場を持たないメーカー(fabless)も多く、自社工場があっても海外の企業に製造委託する場合が増えています。外部の製造者(工場)を選定し、指示を与える製造担当部門は何をすべきでしょうか。良い工場を選択するのはもちろんのこと、選択した工場が「秘密」を漏らさないことが重要です。それには「守秘義務契約」の締結は必須ですが、いくら契約を締結しても秘密は漏れたら元には戻りません。
筆者は、中国の工場に試作を頼んだところ、自社が発売する前に試作品が量産されて中国で販売されてしまった事例に遭遇したことがあります。秘密を守る信頼できる工場を探し出すことが必要です。そして、そのような工場を探し出したならば、その工場と深い信頼関係を構築し、前述したような製造部門における情報を入手できるようにすることです。
なお、外部の工場に製造を委託する場合、「守秘義務契約」だけでは足りません。「自社のみに納品する」という契約や型枠の取り扱いに関する契約も必要です。型枠の取り扱い(所有権の帰属など)が曖昧だったため、委託先の工場で勝手に製造することを止められなかったという事例もあります。実際に委託先の工場で勝手に製造されて第三者経由で日本に入っている商品もあるようです。
中小企業では多くの場合、技術部門は製造部門と緊密な関係にあります。故に、技術部門が第一にやるべきことは、製造部門と共同して「今、自社ができること」の開示です。
もう一つは、近い将来に商品化が可能な開発中の技術の開示。こうした技術は、新商品開発の契機になるでしょう。本稿で「イノベーションと新技術の開発は異なる」と述べたことがありますが、それは、「技術開発に頼っていたのではイノベ...
ーションは起こせない」という意味であって、技術開発がイノベーションの契機になることは多々あるはずです。そして、開発する技術は企業理念に沿っていなければなりません。技術部門が特許管理も行っているのであれば、他社の特許出願情報の提供も重要な仕事になります。
次回は、開発部門と管理部門の解説です。