「Time to the Marketの短縮」です。この概念が意味するところは、オープンイノベーションにより、実現を目指す製品の市場投入時期を早め、自社が受け取る収益を拡大できるということです。
『価値づくり』の研究開発マネジメント (その13)
2016-10-28
今回も、前回から引き続きオープンイノベーションの経済学の4つ目、オープンイノベーションによる
「Time to the Marketの短縮」です。この概念が意味するところは、オープンイノベーションにより、実現を目指す製品の市場投入時期を早め、自社が受け取る収益を拡大できるということです。
「Time to the Marketの短縮」です。この概念が意味するところは、オープンイノベーションにより、実現を目指す製品の市場投入時期を早め、自社が受け取る収益を拡大できるということです。
「Time to the Marketの短縮」は自社の収益に大きくかつ確実な貢献があるのですが、この点が多くの企業においてその社員の間で明確に認識されていません。その収益へのインパクトは3つあり、それら一つ一つがいずれも大きなもので、そしてそれらが同時に実現できる訳ですので、この「Time to the Marketの短縮」の収益への複合的なインパクトには極めて大きなものがあります。それが、まさにオープンイノベーションの積極的な活用により実現できるのです。以下に一つ一つ議論していきたいと思います。
実現しようとする製品の市場は、時間が経てばいつかは消滅するものです。消滅する理由は、そもそもその市場を生み出す市場ドライバーがなくなったり、その市場ドライバーが継続して存在しても他の代替製品に置き換えられるということがあります。そのため、自社製品を早く市場に投入できれば、収益創出期間(市場ウインドウ)は確実に長くなり、結果的にROI(Return on Investment)、すなわち自社の開発や生産への投資に対するリターンが大きくなります。
自社が他社に先んじて製品を市場投入できれば、他社が参入するまでの期間は無競争になります。無競争の意味は2つあり、一つは、その間自社製品の市場シェアは100%となることと、もう一つは、その期間は製品が高く売れるということです。後者に関しては、競争がなければ顧客は顧客が認識する価値(例えば100円)で買ってもらえますが、競争が出現した瞬間にはもはや、顧客が認識する価値(100円)では買ってくれません。なぜならば、競合企業は自社の製品をその顧客に売りたいがために、本当は顧客が100円出していいと思っていても、競合企業より安い90円を提示するからです。
例えば、売値のたった5%の低下でも、自社の利益の大半を吹飛ばしてしまうインパクトがあるので、無競争の意味には極めて大きなものがあります。このように無競争の期間の享受は、収益に大きなインパクトがあります。
ここで言う「現在価値」とは、ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)の計算に基づく、その製品全体の財務的な価値を示す用語です。「現在価値」は、現金は早く生み出されるほど価値が大きくなります。
例えば、手元にある100万円と1年後の100万円では、手元にある100...
万円の方が価値が大きいということです。もし手元に100万円があればそれを銀行に預金することで、利子が付き1年後には101万円になることでも、手元の100万円の方が価値があることがわかると思います。つまり、仮に同じ金額を創出するにしても、その創出時期が早まれば早まる程、その価値(「現在価値」)は大きくなることになります。
以上のように、オープンイノベーションを活用して、市場投入時期を早める、すなわち「Time to the Marketの短縮」することで、大きな収益の拡大が可能になるのです。