今回は、「イノベーティブな組織を強く求める」について解説します。
1. 多くの企業がイノベーションを真剣には考えていない
現在ほど、イノベーションという言葉が頻繁に使われる時代はありません。一方で、この言葉ほど日々の経営や活動において、忘れられている言葉もないように思えます。なぜ日々の経営や活動の中でイノベーションが忘れられるのか、それは、企業が収益を挙げることを目的として日々活動しているからでしょうか。収益を計画通りに挙げることについては、様々な想定されない事態が次々起こることが常態化しているビジネス環境において、目先の収益を挙げることだけでも大変なことです。時間軸の面では「将来」の収益の柱を生み出すために必要となる、イノベーションの仕組みにまで、経営資源や経営陣や社員のエネルギーを投入する余裕がないのが実態です。
その結果、常に視野は短期的になり、そして自転車操業が続くという状況に陥ってしまいます。経営陣は自分達の任期内で収益面での実績をあげることが最大の関心事であり、任期の後に効果がでるような活動はおざなりになるのが人間の心理というものです。その象徴的な例が東芝の粉飾決算であり、粉飾決算が露呈した時のリスクを過小評価して、短期の収益を取り繕うということが日本を代表するような企業でも現実に起こるということです。つまり、残念ながら現実には、多くの企業がイノベーションを真剣には考えていないということです。
そのため、私などは、メディアなどで「イノベーション」という言葉を聞くだけで、なにか心の奥底で、空虚感や抵抗感すら感じてしまします。つまり、さして真剣に考え、実現のために大きなエネルギーを投入してもいないのに、外面を取り繕うために、というと言い過ぎかもしれませんが、イノベーションという耳触りの良い言葉を使っているのではないかと感じてしまうからです。
2. イノベーションと自己達成的予言(self-fulfilling prophecy)
心理学の言葉で、自己達成的予言という言葉があります。将来の自己の姿を強く思うことで、それが日々の活動の中に継続的に反映され、その自己の姿が達成されるという意味です。組織も同様で、組織のリーダーや構成員がその将来の姿を強く思えば、それが達成される可能性が高くなります。これは戦略や計画の重要性を示す言葉であり、多くの人にとっ...
て腹落ちのする概念だと思います。
イノベーションを生み出す組織にこの考え方を当てはめてみると、まさに多くの企業はイノベーションの実現のためにそれを真剣に考えていないということが、イノベーティブな組織を造る上での第一のそして最大の阻害要因と言うことができます。裏を返せば、企業の経営陣がイノベーティブな組織を構築することを強く思えば、それはが達成できるということです。イノベーティブな組織を実現するためには、まずは経営陣の強い思いが必要となるのです。