目標管理と能力開発の問題 中小メーカ向け経営改革の考察(その21)

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1.経営方針と能力開発の関連性

 前回のその20に続いて解説します。経営方針が明確になっていると、知識の習得はその方向に沿わせればいいので、社外研修等での努力目標を明らかにする事ができ、従業員に能力開発の展望を抱かせることが可能になります。事業計画では、経営方針を実現させるために年次別の課題を設定し、その課題を達成するために部門別の目標を設定することで、担当別に克服すべき問題点が明らかになります。
 
 事業計画に示されている課題解決に取り組むことで能力開発が図られ、併せて、業績向上を図ることの両立が可能になります。能力開発(人材育成)を経営の中心に据えている企業では、なんらかの判断の誤りで経営に支障が生じるような事態に遭遇しても、危機を乗り切るのが早く救いがあり、やがて完成度の高い経営方針に磨き上げられていく状況が見られます。
 

2.目標管理の意味

 目標管理では事業計画で示した課題を達成するために、部門別に細分化した分担内容を明らかにして、部門目標を部門長が設定します。その上で部門目標達成のために克服しなければならない問題点を現状調査に基づき明確にし、対策を立案して改善活動を行います。経験不足の管理者がいる場合には、経営層が事前に担当すべき課題を提示することから始めて、課題設定の方法を学習するように導き、漸次自主申告に移行させるのが適切です。
 
 事業計画を踏まえて部門長が起案した分担内容は、部門間の整合性を図り、事業計画が確実に達成される見通しが立つように、代表者を始めとした経営層の参加により調整を行った上で目標管理の課題を決定します。各部門内では、決定した部門目標を更に細分化して班別の役割分担を決め、全社上げての目標管理の取り組みができあがるようになります。決定した目標管理の課題は、更に月次の活動計画に展開され、部門内での役割分担ができあがる。これにより部門上げての活動の基盤が整います。
 
 事業計画に掲げられている目標は、何らかの問題点や障害を克服することで目標達成が可能になります。問題点を見つけ出すことが何よりも大切であり、そのためには現状調査が必要になります。調査なしにいきなり問題解決に取り組む事は無謀です。事業計画の目標達成のために複数の問題点を解決しなければならない場合は、一度に複数の問題を取り上げるのではなく、リーダーが中心になって取り組む順序を決め、ひとつずつ重点的に取り組むようにします。一度に複数のテ-マを掲げて「あれもしなければ、これもしなければ」と焦り、集中的に問題解決に取り組む事ができなくなるような事態は、避けなければなりません。
 
 5S・QC等のグル-プ活動の目標設定では、目標管理の流れに沿って運営されることで全員参加の経営システムができるが、その活性化のためには、グループ活動のリーダー育成を先行させることが欠かせない。目標達成のために克服しなければならない問題点を明らかにし、その解決に取り組むことは能力開発の過程そのものであり、最も有用な方法です。このような認識が希薄で、研修会に派遣する事が能力の向上になると解釈している事例が多過ぎます。研修会などで学ぶ事は基礎的な知識やその応用例でしかありません。実際の応用力は、社内の問題解決の体験を積むことで得られるのです。この意識付けは非常に重要です。
 
 その根源をなすのが、経営方針に関連付けて作成した事業計画から導き出される<目標管理>です。研修会は、目標管理で設定された課題を解決するために必要な知識を学習するものであるべきです。
 
◆目標管理の運営の流れ
 
a.経営方針の設定(代表者の将来展望が主体になり、開発課題が示される)
   ↓
b.事業計画の設定(将来展望の実現に必要な具体的な課題は管理者の参加で決定)
   ↓
c.部門目標の設定(事業計画の実施内容は各部門長が自主申告し、総合調整の上、部門目標決定)
   ↓
d.小集団活動の目標設定(部門目標の一部を担当するように目標設定)
   ↓
e.活動成果発表会(経営方針と事業計画の課題達成のための活動計画と成果の評価)
   ↓
f.次年度事業計画に反映(活動経過の反省を踏まえて、経営方針の企業像実現のために経営方針の一部
                                      見直しの可否を検討する)
 
 自分の担当業務の質的な向上を図っていくには、次年度の事業計画はいかにあるべきかを考えさせて意見交換を行い、事業計画起案に参加できる能力を向上させるように導く必要があります。意見交換に際して配慮が必要な事は次の通りです。
 
a.全く慣れていない最初は見本を示して教える(次回からは各自の意見を出す事を事前に条件として示
      す)。なぜこのような目標設定が必要なのか、理由も教えます。
 
b.日常業務で発生している問題点の記録集計表を持参させ、どのような改善をすることで事業計画に掲
      げられている目標に近づけるのか、発言を求めます。
 
c.損益計算書・製造原価明細書の推移から、何が問題か説明し理解させます。
 
d.所属業界での自企業の水準から、受注競争力強化のために必要と考え...

1.経営方針と能力開発の関連性

 前回のその20に続いて解説します。経営方針が明確になっていると、知識の習得はその方向に沿わせればいいので、社外研修等での努力目標を明らかにする事ができ、従業員に能力開発の展望を抱かせることが可能になります。事業計画では、経営方針を実現させるために年次別の課題を設定し、その課題を達成するために部門別の目標を設定することで、担当別に克服すべき問題点が明らかになります。
 
 事業計画に示されている課題解決に取り組むことで能力開発が図られ、併せて、業績向上を図ることの両立が可能になります。能力開発(人材育成)を経営の中心に据えている企業では、なんらかの判断の誤りで経営に支障が生じるような事態に遭遇しても、危機を乗り切るのが早く救いがあり、やがて完成度の高い経営方針に磨き上げられていく状況が見られます。
 

2.目標管理の意味

 目標管理では事業計画で示した課題を達成するために、部門別に細分化した分担内容を明らかにして、部門目標を部門長が設定します。その上で部門目標達成のために克服しなければならない問題点を現状調査に基づき明確にし、対策を立案して改善活動を行います。経験不足の管理者がいる場合には、経営層が事前に担当すべき課題を提示することから始めて、課題設定の方法を学習するように導き、漸次自主申告に移行させるのが適切です。
 
 事業計画を踏まえて部門長が起案した分担内容は、部門間の整合性を図り、事業計画が確実に達成される見通しが立つように、代表者を始めとした経営層の参加により調整を行った上で目標管理の課題を決定します。各部門内では、決定した部門目標を更に細分化して班別の役割分担を決め、全社上げての目標管理の取り組みができあがるようになります。決定した目標管理の課題は、更に月次の活動計画に展開され、部門内での役割分担ができあがる。これにより部門上げての活動の基盤が整います。
 
 事業計画に掲げられている目標は、何らかの問題点や障害を克服することで目標達成が可能になります。問題点を見つけ出すことが何よりも大切であり、そのためには現状調査が必要になります。調査なしにいきなり問題解決に取り組む事は無謀です。事業計画の目標達成のために複数の問題点を解決しなければならない場合は、一度に複数の問題を取り上げるのではなく、リーダーが中心になって取り組む順序を決め、ひとつずつ重点的に取り組むようにします。一度に複数のテ-マを掲げて「あれもしなければ、これもしなければ」と焦り、集中的に問題解決に取り組む事ができなくなるような事態は、避けなければなりません。
 
 5S・QC等のグル-プ活動の目標設定では、目標管理の流れに沿って運営されることで全員参加の経営システムができるが、その活性化のためには、グループ活動のリーダー育成を先行させることが欠かせない。目標達成のために克服しなければならない問題点を明らかにし、その解決に取り組むことは能力開発の過程そのものであり、最も有用な方法です。このような認識が希薄で、研修会に派遣する事が能力の向上になると解釈している事例が多過ぎます。研修会などで学ぶ事は基礎的な知識やその応用例でしかありません。実際の応用力は、社内の問題解決の体験を積むことで得られるのです。この意識付けは非常に重要です。
 
 その根源をなすのが、経営方針に関連付けて作成した事業計画から導き出される<目標管理>です。研修会は、目標管理で設定された課題を解決するために必要な知識を学習するものであるべきです。
 
◆目標管理の運営の流れ
 
a.経営方針の設定(代表者の将来展望が主体になり、開発課題が示される)
   ↓
b.事業計画の設定(将来展望の実現に必要な具体的な課題は管理者の参加で決定)
   ↓
c.部門目標の設定(事業計画の実施内容は各部門長が自主申告し、総合調整の上、部門目標決定)
   ↓
d.小集団活動の目標設定(部門目標の一部を担当するように目標設定)
   ↓
e.活動成果発表会(経営方針と事業計画の課題達成のための活動計画と成果の評価)
   ↓
f.次年度事業計画に反映(活動経過の反省を踏まえて、経営方針の企業像実現のために経営方針の一部
                                      見直しの可否を検討する)
 
 自分の担当業務の質的な向上を図っていくには、次年度の事業計画はいかにあるべきかを考えさせて意見交換を行い、事業計画起案に参加できる能力を向上させるように導く必要があります。意見交換に際して配慮が必要な事は次の通りです。
 
a.全く慣れていない最初は見本を示して教える(次回からは各自の意見を出す事を事前に条件として示
      す)。なぜこのような目標設定が必要なのか、理由も教えます。
 
b.日常業務で発生している問題点の記録集計表を持参させ、どのような改善をすることで事業計画に掲
      げられている目標に近づけるのか、発言を求めます。
 
c.損益計算書・製造原価明細書の推移から、何が問題か説明し理解させます。
 
d.所属業界での自企業の水準から、受注競争力強化のために必要と考えられる事項の説明を行います。
 
f.今までにどの程度の改善が進んでいるのか、経過が判る集計表に基づき、反省点を明らかにします。
 
g.日常業務に関する改善(上記b項)で事業計画は既に可能の見込みになるのか、考えさせます。
 
h.これらの説明や意見交換の結果を踏まえ、業務改善の全般的な目標設定に取り組ませる。この場合、
      問題点の指摘をし、答えの一歩手前まで導いても、答えは自身で考え出すようにさせます。
 
i.時間が不足して以上の手順が取りにくい場合には、会議に先立ち、代表者が考えている問題点と対策
      について、一般論と断って概略の説明をします。
 
j.その上で事業計画の目標を達成するために、どのような改善が必要なのか、意見を求める。品質問
      題、納期短縮の問題、コストダウンの問題、技術開発の問題など、広範囲に渡る意見を求める。その
      結果、最初に代表者が説明した内容と同じ考え方であったとしても、「説明を吸収して自分の考えに
      した上での発言」と解釈して聞き入れる事で、意欲を導き出すようにします。
 
 以上の過程を数回経験をすることで、発言する内容は大きく変化し、成長していくことでしょう。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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