事業計画がもたらす問題と対策 中小メーカ向け経営改革の考察(その13)

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 前回のその12に続いて解説します。事業計画がもたらす問題と対策について、今回は、第1回です。
 

1.売上高目標の設定に伴う損失

 info928事業計画に目標売上高が示されていても、その目標を達成するに必要な活動内容が示されていない事例が比較的に多く見られます。売上高は何らかの活動を行った結果として得られる成果であるから、何をしなければならないのか、事業計画とそれに基づく目標管理の活動計画で明示する必要があります。その考え方をしないで売上高の追求に終始し檄を飛ばしていると、担当者は焦り、不安の心理が募り、暗い職場を作り出し成果が上がらないため、さらに檄を飛ばす悪循環に陥ります。
 
 大切な事は、売上高をいくら上げても利益が確保できなければ意味がないということです。利益目標を明らかにしないで、売上高を追求するために抜本的な対策が講じられないままに過ぎ、経営危機を招いている企業もかなり見られます。これらの対策として、事業計画を立案する能力を啓発する事が課題になる企業が少なくないのが現状です。具体的な活動内容や扱い品別の限界利益率の目標を設定できない企業は、これらの問題から取り組む仕組みを作ることを最優先させることが最も重要です。
 

2.事業計画の不適切性による損失

 事業計画は方針を踏まえて策定されるため、将来展望などの目標に視点が偏り、日常発生している問題解決を優先的に課題に挙げる視点が弱くなります。これらが影響し、日常的に様々な機会損失を発生させています。
 
 日常発生している問題の再発防止策を立てることができなければ、それを上回る開発的な問題に取り組めない事は既に述べました。日常発生している品質クレ-ム問題、納期遅延対策に関する問題解決による生産技術の蓄積の経験が不足したままで開発に取り組むと、社内業務が混乱して損失を増大させる事例が実に多いようです。ただし、開発担当者を選任して日常業務と切り離した処置を講じている場合もあるでしょう。そのような場合、少々配慮がいります。
 
 例えば、「生産部門では日常業務で多忙を極めているのに、開発担当者は手伝うこともしないで、のんびりと仕事をしている」と非難の声が上がる事があります。開発業務というのは頭の中でフル回転していても、外から見ると、のんびりしているように見えることからそのような非難の声が出るのです。
 
 このような場合、代表者は「開発は当社の将来を決めるために必要なものであるから、温かく見守るように」と開発担当者にかかる風圧を和らげるように自らが前面に立ち、数年先のため先行投資している事の必要性を説くことは非常に大切です。ただし、開発テ-マを設定した理由、先行投資額の限界、開発の期限などを説明し、定期的に開発経過についての報告を求め、その概要を社内に伝達します。それにより開発を進めやすくする条件整備ができます。
 

3.事例 電子検査機の先行開発

 電子部品の検査装置を受注生産している、従業員25名の某企業の例である。業績は好調に推移していたが、代表者は電子部品業界の技術革新のスピードが早いため、自企業の将来に不安を抱き始めていました。
 
 新規の製品開発に取り組み、将来に備える必要があると社内で説得したが、一向に反応が見られません。「好調に推移しているのに社長は何を言っているのか」その様な冷たい反応が支配的でした。
 
 代表者は電子部品業界の推移を見てますます危機感を持つようになり、従業員の協力が得られないのであれば、代表者単独で開発することにしました。日常業務を極力幹部社員に任せるようにし、開発業務に従事する時間を持つことができるようにしました。それでも、社長としての業務の隙間を縫っての開発であるため、就業時間外に従事する事もありました。
 
 やがて、代表者の熱意に押され、従業員の中に手伝う者も現れてきました。しかし、幹部社員は態度を変えず非協力的でした。状況が変化したのは、今まで得意としていた検査機の受注が減少し始め、代表者が開発に取り組んでいる機械に関連した問い合わせが、取引先からもたらされるようになったためでした。その様な傾向が出てくると社内の空気が変わり、協力体制ができあがりました。
 
 その後、受注の動向は急速に変化して在来製品の受注は減少し、代表者が企画していた開発品の受注が増加す...
 前回のその12に続いて解説します。事業計画がもたらす問題と対策について、今回は、第1回です。
 

1.売上高目標の設定に伴う損失

 info928事業計画に目標売上高が示されていても、その目標を達成するに必要な活動内容が示されていない事例が比較的に多く見られます。売上高は何らかの活動を行った結果として得られる成果であるから、何をしなければならないのか、事業計画とそれに基づく目標管理の活動計画で明示する必要があります。その考え方をしないで売上高の追求に終始し檄を飛ばしていると、担当者は焦り、不安の心理が募り、暗い職場を作り出し成果が上がらないため、さらに檄を飛ばす悪循環に陥ります。
 
 大切な事は、売上高をいくら上げても利益が確保できなければ意味がないということです。利益目標を明らかにしないで、売上高を追求するために抜本的な対策が講じられないままに過ぎ、経営危機を招いている企業もかなり見られます。これらの対策として、事業計画を立案する能力を啓発する事が課題になる企業が少なくないのが現状です。具体的な活動内容や扱い品別の限界利益率の目標を設定できない企業は、これらの問題から取り組む仕組みを作ることを最優先させることが最も重要です。
 

2.事業計画の不適切性による損失

 事業計画は方針を踏まえて策定されるため、将来展望などの目標に視点が偏り、日常発生している問題解決を優先的に課題に挙げる視点が弱くなります。これらが影響し、日常的に様々な機会損失を発生させています。
 
 日常発生している問題の再発防止策を立てることができなければ、それを上回る開発的な問題に取り組めない事は既に述べました。日常発生している品質クレ-ム問題、納期遅延対策に関する問題解決による生産技術の蓄積の経験が不足したままで開発に取り組むと、社内業務が混乱して損失を増大させる事例が実に多いようです。ただし、開発担当者を選任して日常業務と切り離した処置を講じている場合もあるでしょう。そのような場合、少々配慮がいります。
 
 例えば、「生産部門では日常業務で多忙を極めているのに、開発担当者は手伝うこともしないで、のんびりと仕事をしている」と非難の声が上がる事があります。開発業務というのは頭の中でフル回転していても、外から見ると、のんびりしているように見えることからそのような非難の声が出るのです。
 
 このような場合、代表者は「開発は当社の将来を決めるために必要なものであるから、温かく見守るように」と開発担当者にかかる風圧を和らげるように自らが前面に立ち、数年先のため先行投資している事の必要性を説くことは非常に大切です。ただし、開発テ-マを設定した理由、先行投資額の限界、開発の期限などを説明し、定期的に開発経過についての報告を求め、その概要を社内に伝達します。それにより開発を進めやすくする条件整備ができます。
 

3.事例 電子検査機の先行開発

 電子部品の検査装置を受注生産している、従業員25名の某企業の例である。業績は好調に推移していたが、代表者は電子部品業界の技術革新のスピードが早いため、自企業の将来に不安を抱き始めていました。
 
 新規の製品開発に取り組み、将来に備える必要があると社内で説得したが、一向に反応が見られません。「好調に推移しているのに社長は何を言っているのか」その様な冷たい反応が支配的でした。
 
 代表者は電子部品業界の推移を見てますます危機感を持つようになり、従業員の協力が得られないのであれば、代表者単独で開発することにしました。日常業務を極力幹部社員に任せるようにし、開発業務に従事する時間を持つことができるようにしました。それでも、社長としての業務の隙間を縫っての開発であるため、就業時間外に従事する事もありました。
 
 やがて、代表者の熱意に押され、従業員の中に手伝う者も現れてきました。しかし、幹部社員は態度を変えず非協力的でした。状況が変化したのは、今まで得意としていた検査機の受注が減少し始め、代表者が開発に取り組んでいる機械に関連した問い合わせが、取引先からもたらされるようになったためでした。その様な傾向が出てくると社内の空気が変わり、協力体制ができあがりました。
 
 その後、受注の動向は急速に変化して在来製品の受注は減少し、代表者が企画していた開発品の受注が増加する事になりました。この段階になると、幹部社員は代表者に「社長の先を見た開発のおかげで、売上高を低下させずに済んで本当によかったです」と笑顔で話しかけるようになりました。
 
 この例に限らず新規開発で資金と人材を投入する場合、現在の業績が好調であると抵抗する社員が増えることが多い。代表者はそれにひるまず毅然たる態度で対処することが非常に大切です。業績が低下してから開発に取り組むようではタイミングを失する怖れがあります。抵抗者を説得して開発に取り組むことで、業績低下を回避できている例が見られます。
 
 このような場合の説得資料として、製品の売上高は低下していなくても限界利益率は年度を追って低下の傾向を示しているはずであるから、製品別の限界利益率の推移を示した資料を整備するとよいようです。また、所属している業界の、製品変化の年次推移を説明する資料を揃えることも必要です。これらの資料が不足していては、口頭だけの説明で納得させることは非常に困難です。
 
 次回は、事業計画の意味を中心に解説します。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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