【快年童子の豆鉄砲】(その24)

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事業戦略

◆【特集】 連載記事紹介連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

◆自社のコア・コンピタンス把握の必要性と問題点

1 はじめに

今回から、表2-1 にある「喫緊の課題」の2番目「自社の強みを生かせない」の課題発生要因「自社の強みを把握できていない」に対する解決手段「自社の真の強み把握」についてのご説明に入ります。

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その23)理念経営基本体系推進の組織体系へのリンク】

 

表2-1 中小企業が抱える喫緊の課題12と課題発生要因17に対する解決策の概要と記載場所

事業戦略

 

2 自社の強み(コア・コンピタンス)把握の必要性と問題点

成長社会を謳歌した20世紀における経営戦略の起点は、世の中に共通したサクセスストーリーが“正解”として存在し、その“正解”が求めるところに対し、自社の欠点、並びに足らざるところを把握して、それらにどのように対応するかと言う所にありました。

 

ところが、成熟社会となった21世紀では、20世紀に確立された、成長社会を前提とした“正解”は通用しなくなり、各企業それぞれが、“独自の正解”を作り上げることが求められるようになったのです。

 

そこで、他を凌駕する形で21世紀に通用する“独自の正解”を作り上げる必要があるのですが、そのときの起点は、以前のような、存在する正解に対する自社の欠点や、足らざるところの把握ではなく、他社にはない強み、即ち、自社の“コア・コンピタンス”の把握になります。

 

ただ、ここでいう“コア・コンピタンス”は、一般的に認識されている「特許や特定の技術力」といった、すぐに模倣されるようなものではなく、その企業が長年の企業活動を通じて培った、他社がおいそれとまねることのできない“真の強み”なのですが、この点をズバリ言い当てた個所が「マーケティング・アンビション思考」(濱口充輝他:角川書店、2008.11.10)にありますので、少し長いですが肝心なところですので下記に引用致します。

 

『真のコア・コンピタンスは、玉ねぎのようなものだと思う。一見芯があるように見えるが、剥いていくと何もなくなる。コアがない。それこそ、西洋的な要素還元的分析手法では解き明かすことのできないものなのだ。有機的に絡み合って、コア・コンピタンスと呼ばれる強みを作っている。だから、文化とか組織風土とかいった言葉、あるいはコーポレートブランドなどのブランド論に置き換えざるを得なくなる。その強さは、その企業の経営者や社員にも明確に語れない、そうしたものがコア・コンピタンスであると思う。コア・コンピタンスを即物的な特定の技術力や特許、あるいは価格の安さなどととらえるならば、時代とともに、そのコア・コンピタンスが更新され、あるいは拡張されなければ競争優位性を長続きさせることはできない。しかし、コア・コンピタンスを玉ねぎのような有機的な結合ととらえるならば、時代にほんろうされることのない強みとなり、そこから育まれた歴史性を重視した、新たなイノベーションを創造することができるはずだ。』(P31-32:濱口充輝)

 

まさにその通りなのですが、「その強さは、その企業の経営者や社員にも明確に語れない」とか「コアがない」ということでは、経営戦略の起点にできないという点が問題なのです。何故なら、この考えを受け入れたのでは、上述の「“独自の正解”を作り上げるときの起点」を手に入れることができないわけで、結果として「他を凌駕する形で21世紀に通用する“独自の正解”を作り上げる」ことが出来なくなってしまうからです。

 

では、どうすれば良いかなのですが、実は、社員の頭の中には、日常の仕事を通じて、この点だけはどこにも負けないと思う、と言うものが、漠然とではあっても存在しているものなので、それを引き出せばいいのです。それを引き出すには、たとえ企業業績とは関係ない小さなことであってもいいですから、“この点は他社に負けることはない”という具体的な点を社員に提示して「何故そうなのか?」に対する答えを求めればいいのです。そうすることにより、漠然としていたものが具体的な形になるだけでなく、潜在していた思いも引き出すことが出来るのです。

 

ただ、それらは、断片的であったり、感覚的であったり、関連情報不足から独断的であったりして、とてもコア・コンピタンスと言えるものではないのが普通なのですが、それらを"言語データ"として、連関図法で解析することにより、各人の答えの背景に潜在する“無意識情報”をも含有する“真のコア・コンピタンス”を具体的な形で把握することが出来るのです。

 

ここで一番重要なのは、「何故そうなのか?」を社員に問うときの提示内容、即ち、“この点は他社に負けることはないという具体的な点”です。

 

これからご説明する事例のように、企業業績に直結するものが理想ですが、筆者が経験した「何故当社は簡素な組織でやってこれたのか?」と言ったものでもいいのです。

 

これは、TQCの指導講師から「御社は、何故、開発を含む300人を超す部門を課長一人で統括できるのですか?」との質問に対する答えに窮し、思いつくままに要因と思われるものを挙げたところ、意外にそれら相互に因果関係があることに気付き、連関図法で解析したところ、結論を手に入れ...

事業戦略

◆【特集】 連載記事紹介連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

◆自社のコア・コンピタンス把握の必要性と問題点

1 はじめに

今回から、表2-1 にある「喫緊の課題」の2番目「自社の強みを生かせない」の課題発生要因「自社の強みを把握できていない」に対する解決手段「自社の真の強み把握」についてのご説明に入ります。

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その23)理念経営基本体系推進の組織体系へのリンク】

 

表2-1 中小企業が抱える喫緊の課題12と課題発生要因17に対する解決策の概要と記載場所

事業戦略

 

2 自社の強み(コア・コンピタンス)把握の必要性と問題点

成長社会を謳歌した20世紀における経営戦略の起点は、世の中に共通したサクセスストーリーが“正解”として存在し、その“正解”が求めるところに対し、自社の欠点、並びに足らざるところを把握して、それらにどのように対応するかと言う所にありました。

 

ところが、成熟社会となった21世紀では、20世紀に確立された、成長社会を前提とした“正解”は通用しなくなり、各企業それぞれが、“独自の正解”を作り上げることが求められるようになったのです。

 

そこで、他を凌駕する形で21世紀に通用する“独自の正解”を作り上げる必要があるのですが、そのときの起点は、以前のような、存在する正解に対する自社の欠点や、足らざるところの把握ではなく、他社にはない強み、即ち、自社の“コア・コンピタンス”の把握になります。

 

ただ、ここでいう“コア・コンピタンス”は、一般的に認識されている「特許や特定の技術力」といった、すぐに模倣されるようなものではなく、その企業が長年の企業活動を通じて培った、他社がおいそれとまねることのできない“真の強み”なのですが、この点をズバリ言い当てた個所が「マーケティング・アンビション思考」(濱口充輝他:角川書店、2008.11.10)にありますので、少し長いですが肝心なところですので下記に引用致します。

 

『真のコア・コンピタンスは、玉ねぎのようなものだと思う。一見芯があるように見えるが、剥いていくと何もなくなる。コアがない。それこそ、西洋的な要素還元的分析手法では解き明かすことのできないものなのだ。有機的に絡み合って、コア・コンピタンスと呼ばれる強みを作っている。だから、文化とか組織風土とかいった言葉、あるいはコーポレートブランドなどのブランド論に置き換えざるを得なくなる。その強さは、その企業の経営者や社員にも明確に語れない、そうしたものがコア・コンピタンスであると思う。コア・コンピタンスを即物的な特定の技術力や特許、あるいは価格の安さなどととらえるならば、時代とともに、そのコア・コンピタンスが更新され、あるいは拡張されなければ競争優位性を長続きさせることはできない。しかし、コア・コンピタンスを玉ねぎのような有機的な結合ととらえるならば、時代にほんろうされることのない強みとなり、そこから育まれた歴史性を重視した、新たなイノベーションを創造することができるはずだ。』(P31-32:濱口充輝)

 

まさにその通りなのですが、「その強さは、その企業の経営者や社員にも明確に語れない」とか「コアがない」ということでは、経営戦略の起点にできないという点が問題なのです。何故なら、この考えを受け入れたのでは、上述の「“独自の正解”を作り上げるときの起点」を手に入れることができないわけで、結果として「他を凌駕する形で21世紀に通用する“独自の正解”を作り上げる」ことが出来なくなってしまうからです。

 

では、どうすれば良いかなのですが、実は、社員の頭の中には、日常の仕事を通じて、この点だけはどこにも負けないと思う、と言うものが、漠然とではあっても存在しているものなので、それを引き出せばいいのです。それを引き出すには、たとえ企業業績とは関係ない小さなことであってもいいですから、“この点は他社に負けることはない”という具体的な点を社員に提示して「何故そうなのか?」に対する答えを求めればいいのです。そうすることにより、漠然としていたものが具体的な形になるだけでなく、潜在していた思いも引き出すことが出来るのです。

 

ただ、それらは、断片的であったり、感覚的であったり、関連情報不足から独断的であったりして、とてもコア・コンピタンスと言えるものではないのが普通なのですが、それらを"言語データ"として、連関図法で解析することにより、各人の答えの背景に潜在する“無意識情報”をも含有する“真のコア・コンピタンス”を具体的な形で把握することが出来るのです。

 

ここで一番重要なのは、「何故そうなのか?」を社員に問うときの提示内容、即ち、“この点は他社に負けることはないという具体的な点”です。

 

これからご説明する事例のように、企業業績に直結するものが理想ですが、筆者が経験した「何故当社は簡素な組織でやってこれたのか?」と言ったものでもいいのです。

 

これは、TQCの指導講師から「御社は、何故、開発を含む300人を超す部門を課長一人で統括できるのですか?」との質問に対する答えに窮し、思いつくままに要因と思われるものを挙げたところ、意外にそれら相互に因果関係があることに気付き、連関図法で解析したところ、結論を手に入れることが出来たのですが、その結論は、まさしくわが社のコア・コンピタンスと言えるものだったのです。

 

次の指導日に、連関図をプリントアウトしてご説明したところ、その方は、N7提唱メンバーの一人だったこともあり、今書いている本の事例に使わせてほしいということになり、固有名詞などを修正してお出ししたところ「TQCに役立つ 図形思考法」(二見良治著:日科技連)の図29(P62-63)として掲載されていますので、興味のある方は図書館などでご覧になり参考にして頂ければと思います。

 

次弾では、企業業績に直結するテーマの事例をご紹介します。

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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