【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その10)「言語データ解析七つ道具」とはへのリンク】
1.企業経営の根幹にかかわる理念経営基本体系
表2-1 中小企業が抱える喫緊の課題12と課題発生要因17に対する解決策の概要
この弾から、表2-1 にある「喫緊の課題」のトップ「経営理念が浸透しない」の発生要因「その都度の口頭では全体像が掴めない」に対する解決手段「理念経営基本体系の設計」についてのご説明に入ります。この「理念経営基本体系の設計」を喫緊の課題のトップに取り挙げたのは、下記の様な2つの理由からです。
1つは、現役時代、諸問題が発生した際、問題解決を当面の対処に終わらせず、品質保証体系への反映と言う形で、体制のレベルアップを図ったのですが、内容によっては、直接体系に反映することが難しく、反映対象が体系を支える基盤にならざるを得ず、品質保証体系の限界を感じていたのです。
この点は、ライフワークテーマの根幹にかかわることですので、退職後、腰を据えて取り組んでみて気付いたのは、持論である「品質は経営の発露、いい経営のもとでなければいい品質は手に入らない」からすると、経営体系の一部である品質保証体系に限界を感じるのは当然だということでした。
そこで、経営体系の設計に取り掛かったのですが、すぐ気づいたのは、経営は手段であり、重要なのは、目的である経営理念なので、その具現を念頭に置いた体系設計、即ち、設計すべきは「理念経営体系」でなければならないということだったのです。
もう1つは、購入品の品質不良が原因のクレームが発生したとき、その発生原因が、日頃社長さんから伺っていた経営理念に著しく反する内容だったのでその点を指摘した際の回答が「経営理念の末端への浸透は難しい」だったことから、経営理念を末端まで展開した「経営理念体系」の必要性を感じていたのです。
ただ、経営理念は、各企業それぞれに存在しますので、その点をどうするかなんですが、各企業の経営理念の背景にある根本的経営理念は「企業の永続性」と言えるので、それをトップ事象として展開・設計したものを「理念経営基本体系」とし、それを参考にして、各社の事情に合わせた体系を作ってもらうことにして作成しました。
この「理念経営基本体系」は、企業経営の根幹にかかわるものですので、設計の過程を含めてご説明しますので、参考にして頂ければと思います。
2. 理念経営基本体系の設計
1)はじめに
狙いの一つが、経営理念の末端への浸透ですので、基本的な経営理念を「企業の永続性」として、その具現体系をもれなく末端まで展開することを設計の基本としました。
2)活用手法 →(逐次二項目展開型)系統図法
理念経営体系設計に漏れがあってはいけませんので、トップ事象を漏れなく展開できる“系統図法”を使いました。この系統図法は、【快年童子の豆鉄砲】(その10)「言語データ解析七つ道具」とは で提唱した「言語データ解析七つ道具(L7)」の一つなのですが、漏れのない展開には逐次二項目展開が必要ですので括弧で括って表示しておきました。
3)トップ事象 →企業の永続性
系統図法のトップ事象は、目的、この場合は、経営の目的になります。
理念経営体系なので、トップ事象は、「経営理念」と思われるかもしれませんが、経営理念は、英語でBusiness philosophy と言われるように、経営の目的達成のための企業経営活動を展開する上での指針となる基本的な考え方、哲学、信念ですので、複雑すぎて系統図法のトップ事象にはふさわしくないのです。
では、経営の目的を何にするかですが、ここでは「企業経営の目的はその企業が永続することである」として、トップ事象を「企業の永続性」としました。経営の目的についてはいろんなことが言われていますが、いずれも最終的に「企業の永続性」に行きつくと考えています。
3.おわりに
次弾以降で、逐次二項目展開型系統図法の使い方を詳しくご説明しますが、完成した“理念経営基本体系”が採用された経緯を以下にご説明しますので、ご理解の参考にして頂ければと思います。
品質経営のお手伝いを頼まれた社長さんから、当面の課題が一段落したところで、品質保証体系の再設計をしたいので手伝って欲しいと言われたのです。そこで、品質保証体系は経営体系の一部なので、先ず、経営体系の設計が先だと思うといったところ、その通りだと思うが、経営体系の設計はどうすればよいのか聞かれたのです。そこで、完成していた体系図をお見せしたところ、そのまま採用したいと言われ、その会社の経営理念とビジョ...