理念経営基本体系の設計(7) 【快年童子の豆鉄砲】(その19)

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事業戦略

 

5 社会満足充足体系図

下記の図13-2理念経営基本体系(2次迄)の中の「社会満足」の展開、即ち、「社会満足」をどのようにして充足するかの部分「社会満足(SS:Social Satisfaction)充足体系図」を下記します。

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その18)理念経営基本体系の設計(6)へのリンク】

 

事業戦略

 

中小企業の場合、社会とは「所属する自治体」でいいと思うのですが、いざ取り組もうとしますと、自治体により目指すところは千差万別で、とても基本を語ることが出来ませんので、最終的な理念経営基本体系図における「社会満足」の展開結果は「文化的文明的社会貢献」となっています。

 

その通りなのですが、これでは、取り組もうとされる企業にとっては取り付く島がありませんので、お手伝いをした会社の自治体(S市)を対象に展開してご提案した「社会満足(SS)充足体系図」を下記しますので参考にして頂ければと思います。

 

社会満足

図20-1 社会満足(SS)充足体系図

 

この体系図の基本は、社会満足は、「S市政策への貢献」と「地域住民の満足」がなされることにより達成されると言う考えで二項目展開されていますが、結局のところ、前者は、後者に繋がっていますので、その由を矢印で示しておきました。

 

前者「S市政策への貢献」への対応ですが、基本政策の骨格にある中小項目合わせた136項目、と重点戦略プロジェクトの内容を精査し、市と企業がウインウインの関係を築くことが出来る項目を選ぶことになります。

 

後者「地域住民の満足」への対応は、3つの大切にすべき視点の姿が実現することによって充足されるとの考えなのですが、この三つは、S市に限ったことではなく、現在の地方自治体が共通して直面しているテーマと言えますので、そのまま参考にして頂けるのではないかと思います。

 

後、この体系図のポイントは、右端にある、市の目指す姿の具現策7項目なのですが、下記それぞれに対する注記解説を参考にしてご検討願えればと思います。

 

--- 記 ---

(注1) SPライン・SP職場

仕事には、迅速・効率が求められるメイン業務(A)と、小ロット品種生産や試作など、迅速・効率より技術・知識が優先的に求められる業務(B)がありますが、人的資源の乏しい中小企業の場合、AとBを同じラインや職場での対応を余儀なくされ、効率低下や混乱を招きがちです。一方、“B”は、高齢者(SP:Senior Person)に最もふさわしい仕事と言えますので、“B”をメインラインや通常職場体制から外し、高齢者に特化したラインや職場を準備することにより、全体の効率を高めようという発想です。こう言った体制を敷くことにより、地域の高齢者の採用が可能となりますので、地域社会、企業の双方にとりウインウインの関係を築くことが出来るのではないかと思います。

 

(注2) CPライン・CP職場

障害者と言う言葉を使いたくない心境で悩んでいましたら、近年アメリカで身障者に対する呼称をポジティブなものにしようとの動きからChallengedという「神から挑戦を運命づけられた存在」という意味の造語があると知り、CP(Challenged Person)を使うことにして、ハンディキャップを補って余りある才能を引き出し、それを生かして、健常者に負けない成果を生むことのできるライン・職場を準備しようとの思いが込められています。対象とする業務は、こちらも上述と同じです。

 

(注3) 女性管理職の積極的登用

女性の管理職採用の際、男性管理職と同じ目線で判断するのではなく、女性ならではの発想・判断力を経営に生かすという視点での採用を念頭に置いた“積極的登用”をすべきで、最終目標は女性管理職比率50%です。

 

(注4) 完全フレックスタイム制

現在もそうですが、働き手不足はこれからますます深刻になり、特に中小企業の場合、その深刻度は、企業存続の危機に瀕する事態を想定する必要があります。こういった事態への対応に当たって、安易に外国人労働者に頼るのは、別の意味で深刻な問題につながりかねません。ここで注目すべきは、現在の仕事の在り方では働きたくても働けない豊富な主婦人口と引退した高齢者です。この人たちが、働くことができるように、働く時間帯や時間を完全フレックスにできるように仕事の在り方を再設計する体制のことです。全作業は無理にしても、可能性の高い作業から順次具体化するといいと思います。このような体制を敷くことにより、このような体制がないために、退職せざるを得なかった企業の退職女性の採用が可能になり、社会満足への寄与にもつながります。

 

(注5) 保育室の設置

出産後の復帰が遅くなるのは、一般の保育園に乳幼児を預けて働くことに抵抗感があったり、中々保育園に入れないからで、会社に、元従業員の高齢女性が面倒を見る保育室があり、休憩時間ごとに授乳ができるのであれば、かなり早く復帰できるし、女性従業員の出産に対する不安は大きく低減されると思います。そして、女性にとっての企業イメージが高まり優秀な女性社員の獲得に繋がると思います。

 

(注6) 小中学生の職場訪問・体験

SSポールスターにある、「子供たちが憧れる企業」を目指す上で、絶好の機会として市と学校の協力を得て、定期的な開催を子供たちが楽しみにするようになるのが理想です。S市の場合、基本計画の小項目に対する施策「キャリア教育の推進」の中に“職場訪問や職場体験などの体験学習の充実”が謳われているのですが、これは自治体共通のテーマと言え、この政策に対する協力を通じて、企業イメージアップが可能ですので得策だと思います。

 

(注7) 独自のデュアルシステム

デュアルシステム(注)については、(その18)の社員満足充足手段の一つとして取り上げ、で説明していますが、日本のデュアルシステムは対象が専門高校生になっていますので、大学生を対象とするには、自治体と大学と検討の上、独自のデュアルシステムを確立する必要があります。大変ですが、実現すれば、大学生に中々認識してもらえない中小企業の良さ...

事業戦略

 

5 社会満足充足体系図

下記の図13-2理念経営基本体系(2次迄)の中の「社会満足」の展開、即ち、「社会満足」をどのようにして充足するかの部分「社会満足(SS:Social Satisfaction)充足体系図」を下記します。

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その18)理念経営基本体系の設計(6)へのリンク】

 

事業戦略

 

中小企業の場合、社会とは「所属する自治体」でいいと思うのですが、いざ取り組もうとしますと、自治体により目指すところは千差万別で、とても基本を語ることが出来ませんので、最終的な理念経営基本体系図における「社会満足」の展開結果は「文化的文明的社会貢献」となっています。

 

その通りなのですが、これでは、取り組もうとされる企業にとっては取り付く島がありませんので、お手伝いをした会社の自治体(S市)を対象に展開してご提案した「社会満足(SS)充足体系図」を下記しますので参考にして頂ければと思います。

 

社会満足

図20-1 社会満足(SS)充足体系図

 

この体系図の基本は、社会満足は、「S市政策への貢献」と「地域住民の満足」がなされることにより達成されると言う考えで二項目展開されていますが、結局のところ、前者は、後者に繋がっていますので、その由を矢印で示しておきました。

 

前者「S市政策への貢献」への対応ですが、基本政策の骨格にある中小項目合わせた136項目、と重点戦略プロジェクトの内容を精査し、市と企業がウインウインの関係を築くことが出来る項目を選ぶことになります。

 

後者「地域住民の満足」への対応は、3つの大切にすべき視点の姿が実現することによって充足されるとの考えなのですが、この三つは、S市に限ったことではなく、現在の地方自治体が共通して直面しているテーマと言えますので、そのまま参考にして頂けるのではないかと思います。

 

後、この体系図のポイントは、右端にある、市の目指す姿の具現策7項目なのですが、下記それぞれに対する注記解説を参考にしてご検討願えればと思います。

 

--- 記 ---

(注1) SPライン・SP職場

仕事には、迅速・効率が求められるメイン業務(A)と、小ロット品種生産や試作など、迅速・効率より技術・知識が優先的に求められる業務(B)がありますが、人的資源の乏しい中小企業の場合、AとBを同じラインや職場での対応を余儀なくされ、効率低下や混乱を招きがちです。一方、“B”は、高齢者(SP:Senior Person)に最もふさわしい仕事と言えますので、“B”をメインラインや通常職場体制から外し、高齢者に特化したラインや職場を準備することにより、全体の効率を高めようという発想です。こう言った体制を敷くことにより、地域の高齢者の採用が可能となりますので、地域社会、企業の双方にとりウインウインの関係を築くことが出来るのではないかと思います。

 

(注2) CPライン・CP職場

障害者と言う言葉を使いたくない心境で悩んでいましたら、近年アメリカで身障者に対する呼称をポジティブなものにしようとの動きからChallengedという「神から挑戦を運命づけられた存在」という意味の造語があると知り、CP(Challenged Person)を使うことにして、ハンディキャップを補って余りある才能を引き出し、それを生かして、健常者に負けない成果を生むことのできるライン・職場を準備しようとの思いが込められています。対象とする業務は、こちらも上述と同じです。

 

(注3) 女性管理職の積極的登用

女性の管理職採用の際、男性管理職と同じ目線で判断するのではなく、女性ならではの発想・判断力を経営に生かすという視点での採用を念頭に置いた“積極的登用”をすべきで、最終目標は女性管理職比率50%です。

 

(注4) 完全フレックスタイム制

現在もそうですが、働き手不足はこれからますます深刻になり、特に中小企業の場合、その深刻度は、企業存続の危機に瀕する事態を想定する必要があります。こういった事態への対応に当たって、安易に外国人労働者に頼るのは、別の意味で深刻な問題につながりかねません。ここで注目すべきは、現在の仕事の在り方では働きたくても働けない豊富な主婦人口と引退した高齢者です。この人たちが、働くことができるように、働く時間帯や時間を完全フレックスにできるように仕事の在り方を再設計する体制のことです。全作業は無理にしても、可能性の高い作業から順次具体化するといいと思います。このような体制を敷くことにより、このような体制がないために、退職せざるを得なかった企業の退職女性の採用が可能になり、社会満足への寄与にもつながります。

 

(注5) 保育室の設置

出産後の復帰が遅くなるのは、一般の保育園に乳幼児を預けて働くことに抵抗感があったり、中々保育園に入れないからで、会社に、元従業員の高齢女性が面倒を見る保育室があり、休憩時間ごとに授乳ができるのであれば、かなり早く復帰できるし、女性従業員の出産に対する不安は大きく低減されると思います。そして、女性にとっての企業イメージが高まり優秀な女性社員の獲得に繋がると思います。

 

(注6) 小中学生の職場訪問・体験

SSポールスターにある、「子供たちが憧れる企業」を目指す上で、絶好の機会として市と学校の協力を得て、定期的な開催を子供たちが楽しみにするようになるのが理想です。S市の場合、基本計画の小項目に対する施策「キャリア教育の推進」の中に“職場訪問や職場体験などの体験学習の充実”が謳われているのですが、これは自治体共通のテーマと言え、この政策に対する協力を通じて、企業イメージアップが可能ですので得策だと思います。

 

(注7) 独自のデュアルシステム

デュアルシステム(注)については、(その18)の社員満足充足手段の一つとして取り上げ、で説明していますが、日本のデュアルシステムは対象が専門高校生になっていますので、大学生を対象とするには、自治体と大学と検討の上、独自のデュアルシステムを確立する必要があります。大変ですが、実現すれば、大学生に中々認識してもらえない中小企業の良さを知ってもらう絶好のチャンスとなりますし、地方自治体、大学双方にとってもニーズのあることですので、挑戦する価値はあると思います。

 

(注) デュアルシステム(邦訳:二元制学習過程):ドイツを発祥とする、学術的教育と職業教育を3年間同時に進めるシステムです。元は、義務教育を修了した若者が対象で大学教育とは別コースという位置づけであったのが、政府主導のデジタル化計画「インダストリー4・0」に対応した人材育成ニーズから、総合大学や高等教育機関がこぞって導入し始めているとのことです。この制度のいいところは、長期間の実務を伴った職業体験を通じた訓練により、仕事への適正だけでなく企業体質との相性も分かる点で、適正人材採用に有効な制度と言えます。日本でも2004年に専門高校生を対象にした日本版デュアルシステムをスタートさせていて、導入企業、特に中小企業には好評なのですが、使い難いのかあまり普及していませんので、所属自治体と専門学校と検討の上、使い易いデュアルシステムを確立する必要がありそうです。

 

次回に続きます。

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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