1. リーダーシップの育成
これまで説明してきた仕事に必要な“能力”(「仕事に関する知識(B)」と「技能者・技能者(C)」)を、職場に生かして成果を出すには、“職場の良い雰囲気”と“リーダーシップ”が必要になります。前者については、そのカギを握る「態度・マナー(D)」の育成ステップを前弾でご説明しましたので、此処では、「リーダーシップ(E)」の育成ステップについて表89-1をもとにご説明します。
2.「リーダーシップ(E)」の育成ステップ
この「リーダーシップ(E)」は、所属グループのメンバーの個々の力を、目指す方向にベクトルを合わせて最高の力を発揮できるようにグループをリードする能力です。この育成ステップは、全員を対象とするものではなく、育成者は、被育成者の適不適の判断を念頭にした育成を心掛け、リーダーシップを期待しないという判断を含めて、無理な育成をせず、本人の適性に合った立場のリーダーシップの育成を心掛けることになります。
そのあたりを、表89-1の備考欄に記載された言葉を使って以下にご説明します。
1)リーダーは無理
リーダーは全く無理と言う状態ですが、このステップで本人のリーダーとしての適性を判断するのは持てる素質を見失う危険がありますので要注意です。
2)サブリーダー
職場の実績に直結するテーマのリーダーは無理だが、リーダーのサポートはできるというレベルで、この立場での働きからリーダーとしての適性を判断することが出来ます。
3)QCサークルのリーダー
QCサークルのテーマは、たとえ失敗しても、職場の成績に直接影響しませんので、リーダーとしての適性を判断するチャンスと言えます。
4)職場内のリーダー的存在
職場の成績に直接影響するテーマのリーダーを任せることが出来るレベルで、係長などの職責を果たす可能性の判断につながるレベルです。
5)係長候補
肝心なことは、本人のリーダーシップとしての資質とともに、周囲が付いて行こうという雰囲気作りが出来ているかと言う点にあります。
表89-1 「リーダーシップ(E)」の育成ステップ例
(注1)仲間とテーマを自分で選べるプライベートなグループにおけるありようを調べ、その中におけるリーダーシップが、仲間もテーマも自分の思い通りに行かない会社におけるリーダーシップにつながるかの判断が必要です。
(注2)ステップ2における観察結果をもとに、ふさわしいテーマを選定して様子を見ることになります。
(注3)複雑と言うのは、本人もある程度勉強する必要のあるテーマで、メンバーとともに挑戦する中でリーダーシップを発揮できるかがこのステップでの判断になります。
(注4)人数が多くなると、指示の伝達が一様で済まなくなるケースが多くなりますので、その点に対する対処がこのステップのポイントになります。
(注5)複雑なテーマの場合、先ず、活動結果が職場の成果に直結しませんが、職場組織をベースにしたQCサークル活動においてそのリーダーシップぶりを観察して判断します。
(注6)QCサークルと言う組織に頼らなくても自力でリーダーシップを発揮できるかどうかがこのステップのポイントになります。判断が難しいですが、重要なステップです。
(注7)上司の指示から、職場の目指す方向を理解して、指示以上の内容を、リーダーシップを発揮して進める力がこのステップのポイントで、「指示されたこと以上」がポイントになります。
(注8)テーマによって、自分のセクションだけでは成り立たないケースが出てきたとき、職場を乱すことなく、与えられた立場の範囲で周囲の協力を得るところまでリーダーシップを発揮できるかどうかがこのステップのポイントになります。
(注9)やるべきことの必要性を説得するためには、本人の理解度が問題になりますので、その点がこのステップのポイントになります。
(注10)2~3人の多様性に対する対応力がこのステップのポイントになります。
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