クレーム率シングルppmをゼロに(6) 【快年童子の豆鉄砲】(その61)

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仕事

【対策前の効果】

1.はじめに

体質系不具合の原因として、職場体質の欠陥が把握できた時点で効果に言及するのは時期尚早との声が聞こえてきそうですが、実は、この事例が対象としたモデルラインは、3月にプロジェクトを立ち上げた直前の2月に一件の自責クレームを出して以降、事情があって工場が閉鎖された2年半後まで、クレームゼロを達成しているのです。

 

しかも、前述のごとく、原因が体質ですので、対策には時間を要し、最初の対策は4か月後、完了とされたのは一年後ですので、対策前からクレームゼロを続けることができたことを不思議に思い、聞き取りを含めて調査したところ、実に興味深い事実が分かりましたので、対策のご説明前にご紹介する次第です。

 

この事例をご紹介することにした最大の理由は、現在中小企業の皆さんが抱えておられる諸問題解決に欠かせない“言語データ解析の威力のご紹介”なのですが、もう一つの理由が、対策前に顕著な効果を手にすることができた背景のご紹介なのです。

 

この情報発信を契機に、課題解決に挑戦される際、是非、念頭に置いておかれればと思います。

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その60)へのリンク】

【連載記事】・新QC七つ道具 連関図法の使い方

【連載記事】・新QC七つ道具 親和図法の使い方

 

連関図

図41-1 連関図「なぜ誤作業が起こるのか?」のまとめ

結論引き出しに直結するカードを取り出してまとめる:【快年童子の豆鉄砲】(その59)より

 

2.対策前の効果の背景

対策前の効果の背景は、5つあります。前回に引き続き、今回は、4)からです。

 

4)言語データ解析の威力は絶大であった

品質改善の支援は、通常足しげく現場を訪れ、時には現場の人たちとのコミュニケーションをとるなど現状把握にかなりの精力を割くものですが、この事例の場合、筆者は一歩も現場に足を踏み入れることはありませんでした。

 

なぜなら、ことは“職場の体質把握”ですので、職場の体質を肌で知り尽くしている関係者から採取した言語データの解析以外にその目的を達する方法はなく、短時間の現場訪問で手に入る瞬間風速的情報や印象は、ことの本質の理解を妨げることはあっても貢献することはないとの考えからです。

 

現に、この事例で手に入れた職場体質は、事の本質を突いたものだったのですが、現場訪問で手に入るものではないことはお分かり頂けると思います。

 

そういった意味で、2)効果発揮の前提は5年間で培ったチ-ム力でご説明した優れたチーム力の存在が“前提”であることに変わりはありませんが、そのチーム力の的確な発揮先を導き出した“言語データ解析”の威力は絶大であったと言えます。

 

→【教訓4】ことの本質を明確にした言語データ解析の威力は絶大であった

 

5)管理者と作業者の“誤作業(ヒューマンエラー)に対する認識”は完全に一致していた

連関図法の解析結論が、関係者の琴線に触れたことから、結論が管理者サイドにとって問題ないことは明白だったのですが、唯一の懸念は、管理者と作業者の“誤作業に対する認識のずれ”でした。

 

そこで、同じテーマで、現場の作業者から言語データを採取してもらい連関図法による解析を実施したところ、その結果は、紙面の都合上割愛しますが、入手した59の言語データは、管理者のものと全く違和感がないばかりか、作業者が上手く表現しきれていないものが、管理者の言語データが見事にカバーしており、作業者の言語データの解析結果も「作業に集中できない」の一点に絞られ、管理者の言語データの解析結果と一致していたのです。

 

これは、5年間、中でも最後の2年間、クレーム率シングルppmをゼロにするための誤作業撲滅活動を通じて、管理者と作業者の“誤作業に対する認識の一致”が培われたことを示しており、このことが生む“職場の一体感”あっての好結果であることを肝に銘じておく必要があると思います。

 

→【教訓5】関係者の肝心なところでの認識の一致があってはじめて効果的な活動ができる

 

3.おわりに

一般的な成功事例紹介で気を付けないといけないのは、この事例の場合ですと、言語データ解析の威力が前面に押し出され、あたかもそれが全てであるかのような誤解を招きかねない紹介が多い点です。

 

この事例の場合、画期的ともいえる成功の実現は、必須項目“言語データ解析の威力”あってのことではあるのですが、それだけでは無理...

仕事

【対策前の効果】

1.はじめに

体質系不具合の原因として、職場体質の欠陥が把握できた時点で効果に言及するのは時期尚早との声が聞こえてきそうですが、実は、この事例が対象としたモデルラインは、3月にプロジェクトを立ち上げた直前の2月に一件の自責クレームを出して以降、事情があって工場が閉鎖された2年半後まで、クレームゼロを達成しているのです。

 

しかも、前述のごとく、原因が体質ですので、対策には時間を要し、最初の対策は4か月後、完了とされたのは一年後ですので、対策前からクレームゼロを続けることができたことを不思議に思い、聞き取りを含めて調査したところ、実に興味深い事実が分かりましたので、対策のご説明前にご紹介する次第です。

 

この事例をご紹介することにした最大の理由は、現在中小企業の皆さんが抱えておられる諸問題解決に欠かせない“言語データ解析の威力のご紹介”なのですが、もう一つの理由が、対策前に顕著な効果を手にすることができた背景のご紹介なのです。

 

この情報発信を契機に、課題解決に挑戦される際、是非、念頭に置いておかれればと思います。

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その60)へのリンク】

【連載記事】・新QC七つ道具 連関図法の使い方

【連載記事】・新QC七つ道具 親和図法の使い方

 

連関図

図41-1 連関図「なぜ誤作業が起こるのか?」のまとめ

結論引き出しに直結するカードを取り出してまとめる:【快年童子の豆鉄砲】(その59)より

 

2.対策前の効果の背景

対策前の効果の背景は、5つあります。前回に引き続き、今回は、4)からです。

 

4)言語データ解析の威力は絶大であった

品質改善の支援は、通常足しげく現場を訪れ、時には現場の人たちとのコミュニケーションをとるなど現状把握にかなりの精力を割くものですが、この事例の場合、筆者は一歩も現場に足を踏み入れることはありませんでした。

 

なぜなら、ことは“職場の体質把握”ですので、職場の体質を肌で知り尽くしている関係者から採取した言語データの解析以外にその目的を達する方法はなく、短時間の現場訪問で手に入る瞬間風速的情報や印象は、ことの本質の理解を妨げることはあっても貢献することはないとの考えからです。

 

現に、この事例で手に入れた職場体質は、事の本質を突いたものだったのですが、現場訪問で手に入るものではないことはお分かり頂けると思います。

 

そういった意味で、2)効果発揮の前提は5年間で培ったチ-ム力でご説明した優れたチーム力の存在が“前提”であることに変わりはありませんが、そのチーム力の的確な発揮先を導き出した“言語データ解析”の威力は絶大であったと言えます。

 

→【教訓4】ことの本質を明確にした言語データ解析の威力は絶大であった

 

5)管理者と作業者の“誤作業(ヒューマンエラー)に対する認識”は完全に一致していた

連関図法の解析結論が、関係者の琴線に触れたことから、結論が管理者サイドにとって問題ないことは明白だったのですが、唯一の懸念は、管理者と作業者の“誤作業に対する認識のずれ”でした。

 

そこで、同じテーマで、現場の作業者から言語データを採取してもらい連関図法による解析を実施したところ、その結果は、紙面の都合上割愛しますが、入手した59の言語データは、管理者のものと全く違和感がないばかりか、作業者が上手く表現しきれていないものが、管理者の言語データが見事にカバーしており、作業者の言語データの解析結果も「作業に集中できない」の一点に絞られ、管理者の言語データの解析結果と一致していたのです。

 

これは、5年間、中でも最後の2年間、クレーム率シングルppmをゼロにするための誤作業撲滅活動を通じて、管理者と作業者の“誤作業に対する認識の一致”が培われたことを示しており、このことが生む“職場の一体感”あっての好結果であることを肝に銘じておく必要があると思います。

 

→【教訓5】関係者の肝心なところでの認識の一致があってはじめて効果的な活動ができる

 

3.おわりに

一般的な成功事例紹介で気を付けないといけないのは、この事例の場合ですと、言語データ解析の威力が前面に押し出され、あたかもそれが全てであるかのような誤解を招きかねない紹介が多い点です。

 

この事例の場合、画期的ともいえる成功の実現は、必須項目“言語データ解析の威力”あってのことではあるのですが、それだけでは無理で、上記5つが揃ってはじめて可能だったのです。

 

このことは、一般的な事例を参考にする場合、そこに紹介される手段を鵜呑みにすることなく、その成功を支えた背景に思いを馳せ、可能であればその点を調べて導入の判断をする必要性を強く感じた次第で、皆さんも参考にして頂ければと思います。

 

因みに、以上は、モデルラインの状況なのですが、体質改善活動が全ラインに及び始めた8月以降は、モデルライン以外のラインもクレームゼロとなり、工場が閉鎖されるまで、組み立て工程責任のクレームはゼロで、結果としてこの会社のクレームゼロが達成できたのです。

 

 

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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