マズローの5段階欲求の社員の立場に翻訳を、【快年童子の豆鉄砲】(その14)理念経営基本体系の設計(4)で解説しましたが、今回は、翻訳結果を双方対比した形でまとめた、表15-1のB:社員の立場に対する翻訳の説明からです。
表15-1 マズローの欲求の社員の立場への翻訳
3-2 第2段階の欲求:職場の安全安心
【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その15)フェーズ理論へのリンク】
社員満足(ES)にとって雇用の安定に次いで基本的で重要な要素は、職場、作業の安全で、長年の取り組みの結果、今では殆どの企業で達成できているのではないかと思います。ただ、達成できているのは、企業が進めてきた“安全体制(ハードとソフト)”であって、長年製造現場の安全に取り組んできた実体験からしますと、それだけでは、目指すゼロ災には不十分で、“作業者の心理状態”が重要な要素だと思っています。
要するに、前弾で、品質問題を事例にご説明しましたが、安全も同じで、作業者の意識レベルがフェーズⅡ(FⅡ)の状態でないと、折角準備した“安全体制”が十分機能せず、災害に繋がる危険性が高いのです。
以上から、“安全安心”の“安心”は、“意識レベルFⅡの状態”(注17-1)を生む心理状態とご理解いただければと思います。
問題は、そのような状態を手に入れる手段ですが、“ゼロ災サークル活動”だと思っています。今更“ゼロ災サークル活動”でもないだろうと思われるかもしれませんが、チームとして安全に取り組む活動は、安心感醸成に大きく寄与しますので、そこのところを意識してゼロ災サークル活動を指導して頂ければと思います。(注17-1)【快年童子の豆鉄砲】(その15)フェーズ理論を参照願います。
3-3 第3段階の欲求:職場の一体感
表15-1では、マズローの第三段階欲求“所属愛情欲求”を社員の立場で“職場の一体感”と翻訳し、欲求充足手段として“サークル活動”を挙げています。
ここで言う“サークル活動”は、活動テーマと目標の設定を、職場(会社)の目標達成に沿った、しかも、職制とリーダーが相談の上、実力に見合った活動テーマと目標を設定しての活動です。これにより、職場(会社)の目標が達成された時、よくある“やらされ感”の結果とは違い、関係する全サークルの協業による成果という“職場の一体感”を伴った達成感に繋がることが期待できるのです。
この場合、サークルの自主性はどうなるのか心配されるかと思いますが、表2-1の ⑬の解決手段「QCサークル活動スパイラルアップ戦略」(別途、詳しくご説明する機会を作りますが、職制の指導の下、3段階の成長ステップを経て、最終的に自主自立活動態勢に導く戦略です)を基本とした活動により、自主自立活動が、職場の目標達成に寄与する形を目指します。
表2-1 中小企業が抱える喫緊の課題12と課題発生要因17に対する解決策の概要
一般的なサークル活動の場合、日科技連のQCサークル綱領にある「活動の自主性」に則って、テーマの選定までサークルに任せるケースがありますが、この場合、テーマの内容が職場の目標と合致しないこともあり、その場合のサークル目標達成は、単なるサークルの自己満足になってしまう恐れがありますので注意が必要です。
3-4 第4段階の欲求:職場からの評価
個人に対する職場からの評価は、一般的に、年一回の昇給昇格時、もしくは、良きにつけ悪しきにつけ、際立った結果に関わったときに限られ、黙々とミスゼロを続ける作業者には、特に評価されることなく終わるのが実情です。
ところが、この“黙々とミスゼロを続ける作業者”の存在こそが、企業にとって貴重極まりないわけで、そこに光を当て、毎日の作業に対する評価結果をコメント付きで本人にフィードバックしようというのが「QFシート法」です。
表2-1(第002弾)の ⑭ の解決手段として後ほど事例付きで詳しくご説明しますが、作業者のその日の仕事の結果を記入したQF(Quick Feedback)シートを終礼時に各作業者に手渡すことにより、作業者のモチベーションの維持向上を期待するものです。
3-5 第5段階の欲求:提案内容の実現
現場作業者にとっては、ノルマをクリアした時など“達成感”を感じることはあっても、ここで言う“自己実現”を実感する機会はほとんどないのが現実です。
唯一、ここに上げた“改善提案制度”があるのですが、一般的には、提案シートに記入した時点で手を離れてしまい、 提案内容が高く評価されたり、職制の手で実現すると、嬉しく、モチベーション向上にはつながるのですが、“自己実現”を実感するところまでは行かないのが現実です。
その点に対する対策が“提案内容具現への提案者の参画”です。
提案内容が、会社レベルの場合、プロジェクトチームを結成して具現に取り組むのですが、そのチームの一員として、検討会議や時間外や休日における作業など、作業者でも参加可能な時間帯の活動に参加して、提案内容の具現の一翼を担うことにより、実現した際に“自己実現”を実感することが出来るようにしようと言うわけです。
このことは、提案内容レベルに合わせて、サークル活動テーマとして取り組んだり、保全課や技術課の支援の下、自分自身で具現するなど、必ず提案者が具現に参画する体制を敷くことにより、同様の効果が期待できると考えています。
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