1. QCサークル活動のスパイラルアップ
表2-1の喫緊の課題の9番目「離職率が高い」は、折角の縁があって入社した社員が、短期間で離職するという中小企業にとっては深刻極まりない課題なのですが、その背景には、数えきれない要因が存在し、最も難しい経営課題です。ここでは、その数えきれない要因のうち、普遍的で重要と思われる4つの背景を取り上げているのですが、その内の「適材適所配属がうまく行かない」と「社員の育成が社員とかみ合わない」に対する解決策は、それぞれご説明いたしましたので、以降では「自己実現の場がない」に対する解決手段としての「QCサークル活動スパイラルアップ戦略」の説明に入らせて頂きたいと思います。
筆者がQCサークルの導入を主導した頃は全盛期で、QCサークルをやらなければ企業にあらずといった感じだったのが、最近は、低調だと聞くのですが、実は、活動を進めるうちに感じていた問題点がうきぼりになったのではないかと想像されますので、その点にも触れてご参考に供したいと思います。
表2-1 中小企業が抱える喫緊の課題12と課題発生要因17に対する解決策の概要
2. 何故QCサークル活動が必要なのか
1)QCサークル活動が非常に重要
上述しましたように、低調ですたれた感のあるQCサークル活動をお勧めする理由の説明から入りたいと思います。実は、筆者のライフワークテーマ「100年企業を目指す中小企業のための理念経営体系」を追求して行きますと、これからの経営を進める上で、トップマネジメントにとっても、ミドルマネジメントにとっても、社員にとっても、そして、TQMを進める上でも、このQCサークル活動が非常に重要で必要極まりないことが分かりましたので、その点をご説明したいと思います。
2)トップマネジメントの観点から
世の中は、「高度な文明社会」を追求した20世紀から「高度な文化社会」を追求する21世紀へのパラダイムシフトの真っただ中にあり、パラダイムが意味する「ある時代の人々のものの見方・考え方を根本的に規定している概念的枠組み」の通り、社会ニーズも、文明的豊かさ(理性の世界)から文化的豊かさ(感性の世界)にシフトしつつあるといえます。
従って、経営戦略に求められるところも「高機能・多機能」から「高魅力度・高感度」にシフトするだけでなく、戦略対象の主眼も、今までの「顧客・株主・社員・地域」を包含する「文化社会・国際社会」にシフトしているのです。
こういった状況を受けて、企業戦略立案のキーポイントも、市場調査結果をもとにした競争力強化のために自社の弱点を把握して補強するといった従来のものから、市場予測をもとに、把握した自社のCC(コア・コンピタンス:強み)が生きる市場創造に挑戦するとともに、自社のCCを強化するという変化が求められているのです。
この戦略の最大のポイントは、創造した市場が的を射たものであることで、そのためには「市場予測」の的確さが求められるわけですが、それには、シフトした社会ニーズ「文化的豊かさ」を感性という観点からいかに深くち密に把握できるかがポイントになるのです。
ただ、現在の経営陣は、理性には強くても、感性ということになると弱いのが問題で、そこを補強できるのが「QCサークル活動」というわけです。といいますのは、社会ニーズ「文化的豊かさ」を感性という観点から捉えるには、変化の兆しをはらんでいる今の社会と、いろんな側面で自由に接触する感性豊かな若者の“気付き”程貴重なものはないからです。
それらを吸い上げる場としてQCサークル活動ほど相応しいものはなく、そこから手に入る、情報を言語データとして解析することにより、本人たちも思いもしなかった予想市場が手に入ることが期待できるのです。要するに、社会のいろんなところに顔を出す新しい社会の兆しを、感性豊かな若者が接して感じ取ったものほど貴重なものはなく、それらを、バラバラでいいから言語データとして入手できれば、解析して、経営に貴重な情報にすることができるわけです。
そして、こういった形で将来予測に参画しておれば、それを基にしたかなり思い切った経営戦略でも、末端でしっかりと支えてくれることにより戦略の成功が期待できるのです。以上の内容に補足事項を加えてまとめると下記の通りになりますので、QCサークル活動育成の参考にして頂ければと思います。
【21世紀の経営戦略でQCサークル活動が担うもの】
① 市場予測のための情報アンテナ
最前線の現場にこそ将来予測にとって貴重な情報が存在しますし、社会に深く接する本人だけでなく、家族、親戚、友人、知人からの真剣で有用な情報の入手も期待できます。
② 潜在的CC把握のための情報アンテナ
21世紀の経営戦略の勝敗を決するのは、自社の潜...