監査所見の記録作成、つまり監査の途中での一つ一つの質問に対して、適合か不適合か改善指摘にしたかという結果の記録は、
9.2.2 f)監査プログラムの実施及び監査結果の証拠として、文書化した情報を保持する。において、必須なのではないでしょうか? 何か根拠がないと、要求出来ないので、教えて頂けないでしょうか?
sunrise様
初めまして、木船と申します。ISO,IATFの内部監査員をしていた時に、
以下の管理規定のもと、
内部監査のエビデンスとして
・内部監査報告書(IAR)(ABC-QMS-FM-020)を作成していました。
文書管理及び記録の管理規定(4.2.3、4.2.4)
6.8 記録の管理
17 内部監査の結果の記録(8.2.2)
・内部監査員一覧表(ABC-QMS-FM-014)
・内部監査スケジュール及び実施記録(ABC-QMS-FM-018)
・内部監査チェックリスト(ABC-QMS-FM-019)
・内部監査報告書(IAR)(ABC-QMS-FM-020)
・是正処置依頼書(CAR)(ABC-QMS-FM-021)
・是正処置管理記録(ABC-QMS-FM-022)
参考ですが、以下のリンク先にサンプルがあります。
http://www.scott-m.com/iso9001/samples/fm019.htm
参考になれば、幸いです。
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監査所見の記録において、一つ一つの質問に対しての評価結果が必須かどうかは、迷うことです。
用語の定義では、次と記載されています。
3.18.9 監査所見
収集された監査証拠を、監査基準に対して評価した結果。
注記1:監査所見は、適合又は不適合を示す。
注記2:監査所見は、改善の機会の特定又は優れた実践事例の記録を導き得る。
注記3:監査基準が法令要求事項又は規制要求事項から選択される場合、監査所見は、“遵守”又は“不遵守”と呼ばれることがある。
用語の定義によれば、監査所見という為には、注記1の様に“適合又は不適合”を示す必要があります。
「監査プログラムの実施及び監査結果の証拠」は、次の用語の定義から検討します。
監査プログラム(3.13.4)は、「特定の目的に向けた、決められた期間内で実行するように計画された一連の監査」です。
その為に監査プログラムは、監査実施の案内を監査依頼者(3.13.12)が発行し、関連者に周知し、監査結論(3.13.11)を出し、d)監査の結果を関連する管理層(監査依頼者や管理層の部長や社長など)に報告すること言えます。
また、監査基準(3.13.7)は、「監査証拠と比較する基準として用いる一連の方針、手順又は要求事項」です。
9.2.2 b)では、「各監査について、監査基準及び監査範囲を定める」と要求しています。また、9.2.1では、「a)次の事項に適合している」として、「1)品質マネジメントシステムに関して、組織自体が規定した要求事項」と定められている。この「組織自体が規定した要求事項」が、「プロセスフロー図」に該当していると判断しています。
また、「2)この国際規格の要求事項」として、ISO9001:2015の規格要求事項を、「内部監査チェックリスト」として用いています。
更には、「b)有効に実施され、維持されている」も必要です。
内部監査チェックリストを使用して実施した場合、プロセスフロー図をどのような監査のスタイルを明示していない為に推測します。(最後に記載します。)
監査証拠(3.18.8)は、「監査基準に関連し、かつ、検証できる、記録、事実の記載又はその他の情報」です。
その客観的証拠(3.8.3)は、「あるものの存在又は真実を裏付けるデータ」となります。 そして、「注記1 客観的証拠は、観察、測定、試験又はその他の手段によって得ることができる」と、「注記2 監査(3.1)のための客観的証拠は、一般に、監査基準(3.7)に関連し、かつ、検証できる、記録、事実の記述又はその他の情報から成る」が記載されています。
結論として、「一つ一つの質問の回答の記録」は、次のように考えました。
9.2.2 b)は、「各監査について、監査基準及び監査範囲を定める」と規定されています。監査の目的を達成できたと評価できる為には、定めた監査範囲を網羅的に行い、定めて監査基準で満たしていると評価できる時と判断しています。
ISO9001の要求事項には一つ一つの質問に答えますが、「組織自体が規定した要求事項」には視認する事や文書類の確認で行うこともあり、被監査者に一つ一つ質問しなくても監査者が出来るものもあることを理解します。
更にこの事例の場合は、「プロセスフロー図での監査」の為に「組織自体が規定した要求事項」を入手し、読み込み、検討していると期待しています。
最後に私見だが、監査員が複数の質問・回答で、当該の項目に対する監査基準に対して一つの評価を下している場合は、一つ一つの質問の答えでない場合が考えられます。
「プロセスフロー図」を用いて監査チェックリストを作るとき、該当の工程の作業手順や作業員の力量等を重要性や課題を考慮して特定することがあります。
この「プロセスフロー図」に、見ること、質問すること、確認する事などを書き、得た事をメモします。結果には、適合/不適合/観察の評価と特記事項としてメモを記入しています。
検出した不適合/観察は別紙「是正処置書」を作成し、被監査者に提出します。
このようにして、監査報告書の清書を行うような管理層への業務を削減していました。
また、質問に書かれている「ある監査員から、プロセスフロー図で監査すると言われて、快諾しましたが、監査を実施して、不適合・改善指摘なしの監査報告書だけを提出して終わらせるつもり」は、コロナ禍の時に文書監査として「人的交流なし」の事例もあったのかもしれません。(私見です。)
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