<出荷エリア> ファブレス小売業の品質保証(その7)

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品質マネジメント

 

特定分野を長期間に渡って学び・経験された方は多いと思います。しかし、同じ製造業でも業界が異なると、慣習や考え方の基準は変ります。ましてや作り手(製造業)と売り手(小売業)では視点やスタンスが大きく異なってきます。「業務委託先がなかなか思うように動いてくれない」と感じたことはありませんか。 電気製品、家具、アパレル、バッグ、スニーカー、食品など様々な工場で品質改善・業務改善に取り組む中で、その工場が知らない、他業界のちょっとした「コツ」や「ヒント」が問題を一気に解決することがあります。ファブレス小売業の品質保証について、今回は、第7回です。

【この連載の前回:ファブレス小売業の品質保証(その6)へのリンク】

◆管理技術を使って工場を点検する<出荷エリア>

具体的に、管理技術を用いた工場評価のポイントを見ていきましょう。ここでは、工場の各工程を逆方向に遡る順番で見ていきます。工場の現場を視察する際、生産する商品の製造工程にあまり詳しくない場合には、完成品から材料へと遡る順番で見ていくと、商品の成り立ちが把握しやすいというメリットがあります。

 

【目次】 

1. 出荷エリア

 ①コンテナへの積み込みは手積みかパレット積みか
 ②コンテナの断面は商品で満たされているか
 ③出荷作業は自社か委託か

 

1. 出荷エリア

完成品をコンテナに積み込む出荷作業をバンニング(vanning)と言いますが、単純に見える出荷作業からも工場の品質、コストに加えて設計能力まで伺い知ることができます。

 

①コンテナへの積み込みは手積みかパレット積みか

手積みでコンテナへの積み込み作業を行う場合、積載効率が高まるというメリットがありますが、バンニング時間や必要な人員が増えるというデメリットもあります。一方で、パレット積みの場合には、バンニング時間や必要な人員が抑えられる反面、少なくともパレットの体積分は積載効率が低くなります。

 

どちらが優れているというものではありませんが、生産地が労働賃金の安い国の場合や商品単価が低い場合には手積みが多く、労働賃金や商品単価が高い場合にはパレット積みが多くなる傾向にあると思います。いずれの場合でも「作業者が商品を大切に扱っているか」「商品の取り扱いに関する教育が作業者になされているか」「作業をしやすい環境になっているか」がチェックポイントになります。

 

□ 作業者が商品を大切に扱っているか
□ 商品の取り扱いに関する教育が作業者になされているか
□ バンニングエリアとトラックの荷台に高低差・段差はないか

 

②コンテナの断面は商品で満たされているか

バンニング作業の確認では、「コンテナの断面が商品で満たされているか」を確認します。上部に隙間が空いていると、輸送中に商品が動いて、荷崩れによる輸送時破損(品質問題)につながる恐れがあります。また、空間があるということは積載効率が低いということです。通常コンテナは、中身の積載量によらず「1本あたりいくら」でコストがかかってきますので、積載効率が低いと商品一個当たりの輸送コスト(コスト)も割高になってしまいます。

 

コンテナはサイズが規格で定められており、断面は「幅2,350mm×高さ2,385mm」となっています。(高さが2,690mmのハイコンテナという種類もあります)商品の梱包サイズをこれに合わせるように設計すれば、積載効率が上がり、商品一個あたりの輸送コストが抑えられますので、コンテナの断面がきれいに商品で埋まっているかどうかで梱包設計能力(設計力)も確認することができます。

 

尚、生産量と出荷サイクルの関係で、コンテナを一杯にできない場合には、他の商品と混載する方法もありますが、生産拠点の統廃合などにより、一つの生産拠点からの出荷量を増やすという方法も検討したいものです。

 

オーダーする小売業の側にも配慮すべき点があります。オーダーする際の数量は、「コンテナの断面を満たす商品数の倍数」または「コンテナ1本の積載数の倍数」にすべきです。コンテナ1本を満たす商品数が仮に850個だったら、850の倍数で注文すれば、商品1個あたりの輸送費は常に最小になるのはお分かりだと思います。

 

販売計画や生産計画、工場への注文数が「1,000個単位」など、きれいな数字になっていたら「非効率なオーダーになっている」と疑うべきでしょう。

□ コンテナの断面は商品で満たさ...

品質マネジメント

 

特定分野を長期間に渡って学び・経験された方は多いと思います。しかし、同じ製造業でも業界が異なると、慣習や考え方の基準は変ります。ましてや作り手(製造業)と売り手(小売業)では視点やスタンスが大きく異なってきます。「業務委託先がなかなか思うように動いてくれない」と感じたことはありませんか。 電気製品、家具、アパレル、バッグ、スニーカー、食品など様々な工場で品質改善・業務改善に取り組む中で、その工場が知らない、他業界のちょっとした「コツ」や「ヒント」が問題を一気に解決することがあります。ファブレス小売業の品質保証について、今回は、第7回です。

【この連載の前回:ファブレス小売業の品質保証(その6)へのリンク】

◆管理技術を使って工場を点検する<出荷エリア>

具体的に、管理技術を用いた工場評価のポイントを見ていきましょう。ここでは、工場の各工程を逆方向に遡る順番で見ていきます。工場の現場を視察する際、生産する商品の製造工程にあまり詳しくない場合には、完成品から材料へと遡る順番で見ていくと、商品の成り立ちが把握しやすいというメリットがあります。

 

【目次】 

1. 出荷エリア

 ①コンテナへの積み込みは手積みかパレット積みか
 ②コンテナの断面は商品で満たされているか
 ③出荷作業は自社か委託か

 

1. 出荷エリア

完成品をコンテナに積み込む出荷作業をバンニング(vanning)と言いますが、単純に見える出荷作業からも工場の品質、コストに加えて設計能力まで伺い知ることができます。

 

①コンテナへの積み込みは手積みかパレット積みか

手積みでコンテナへの積み込み作業を行う場合、積載効率が高まるというメリットがありますが、バンニング時間や必要な人員が増えるというデメリットもあります。一方で、パレット積みの場合には、バンニング時間や必要な人員が抑えられる反面、少なくともパレットの体積分は積載効率が低くなります。

 

どちらが優れているというものではありませんが、生産地が労働賃金の安い国の場合や商品単価が低い場合には手積みが多く、労働賃金や商品単価が高い場合にはパレット積みが多くなる傾向にあると思います。いずれの場合でも「作業者が商品を大切に扱っているか」「商品の取り扱いに関する教育が作業者になされているか」「作業をしやすい環境になっているか」がチェックポイントになります。

 

□ 作業者が商品を大切に扱っているか
□ 商品の取り扱いに関する教育が作業者になされているか
□ バンニングエリアとトラックの荷台に高低差・段差はないか

 

②コンテナの断面は商品で満たされているか

バンニング作業の確認では、「コンテナの断面が商品で満たされているか」を確認します。上部に隙間が空いていると、輸送中に商品が動いて、荷崩れによる輸送時破損(品質問題)につながる恐れがあります。また、空間があるということは積載効率が低いということです。通常コンテナは、中身の積載量によらず「1本あたりいくら」でコストがかかってきますので、積載効率が低いと商品一個当たりの輸送コスト(コスト)も割高になってしまいます。

 

コンテナはサイズが規格で定められており、断面は「幅2,350mm×高さ2,385mm」となっています。(高さが2,690mmのハイコンテナという種類もあります)商品の梱包サイズをこれに合わせるように設計すれば、積載効率が上がり、商品一個あたりの輸送コストが抑えられますので、コンテナの断面がきれいに商品で埋まっているかどうかで梱包設計能力(設計力)も確認することができます。

 

尚、生産量と出荷サイクルの関係で、コンテナを一杯にできない場合には、他の商品と混載する方法もありますが、生産拠点の統廃合などにより、一つの生産拠点からの出荷量を増やすという方法も検討したいものです。

 

オーダーする小売業の側にも配慮すべき点があります。オーダーする際の数量は、「コンテナの断面を満たす商品数の倍数」または「コンテナ1本の積載数の倍数」にすべきです。コンテナ1本を満たす商品数が仮に850個だったら、850の倍数で注文すれば、商品1個あたりの輸送費は常に最小になるのはお分かりだと思います。

 

販売計画や生産計画、工場への注文数が「1,000個単位」など、きれいな数字になっていたら「非効率なオーダーになっている」と疑うべきでしょう。

□ コンテナの断面は商品で満たされているか
□ すき間の出ない梱包サイズ設計になっているか
□ 出荷量がコンテナ一杯にならない場合は、生産品目の追加や生産拠点の統廃合を検討する
□ 工場へのオーダー数がきれいな数字になっていないか

 

③出荷作業は自社か委託か

日本国内でもそうですが、バンニング作業を輸送業者や専門業者に委託する場合があります。その様なケースでは、繁忙期などに作業が荒れてしまい、商品や外装箱を破損するケースが見受けられます。荷捌きを専門業者に業務委託する場合には、商品の取り扱いに関する注意点(直射日光、雨、壊れやすさなど)をわかりやすく掲示したり、教育を徹底することにより、商品の汚破損を防ぐ工夫が必要です。

□ 商品を取り扱う際の注意点はわかりやすく掲示されているか
□ 直射日光や雨、ほこりなどの影響を受けにくい工夫がされているか

 

次回に続きます。

 

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この記事の著者

今澤 尚久

「商品を買う側(小売業)」と「商品を作る側(製造業)」の両方の業界経験をベースに実効性のある経営戦略を策定します。現場・現物・現実の三現主義で現状把握から施策立案・課題解決までの全工程を支援します。

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