特定分野を長期間に渡って学び・経験された方は多いと思います。しかし、同じ製造業でも業界が異なると、慣習や考え方の基準は変ります。ましてや作り手(製造業)と売り手(小売業)では視点やスタンスが大きく異なってきます。「業務委託先がなかなか思うように動いてくれない」と感じたことはありませんか。 電気製品、家具、アパレル、バッグ、スニーカー、食品など様々な工場で品質改善・業務改善に取り組む中で、その工場が知らない、他業界のちょっとした「コツ」や「ヒント」が問題を一気に解決することがあります。ファブレス小売業の品質保証について、今回は、第11回です。
【この連載の前回:ファブレス小売業の品質保証(その10)へのリンク】
◆管理技術を使って工場を点検する<加工工程>
加工工程も、商品や加工する材料によってさまざまな種類があります。加工方法でみれば、切断、穴あけ、切削、塑性加工(曲げ、伸ばし、変形)、鋳造、熱処理、化学処理など多くの加工方法がありますし、同じ穴あけであっても、材料が鉄の場合、木材の場合、プラスチックの場合では管理方法が異なります。また、加工に用いる機械も単純なボール盤(穴あけ用のドリルです)から、コンピューター制御の自動機械まで様々な設備があり、それぞれメンテナンスのポイントも異なります。ここでは、組立工程と同様に、商品や材料、加工方法によらず加工工程に共通する確認ポイントについて書いていきます。
【目次】
①加工方法
②加工後の検査
③NG品の識別管理
④加工工程の5S
①加工方法
組立作業と同様に、加工作業の作業手順が定められ、作業者が確認できるように明示されていることが重要です。作業手順書は、作業者が理解できる言語で書かれ、写真や図入りでわかりやすく、作業場所から動かずに確認できる必要があります。また、加工作業は機械の扱いに慣れる必要がありますので、実際の生産に携わる前に、十分なトレーニングを行うことも重要になってきます。
□ 作業手順は定められているか
□ 作業手順書は作業者の理解できる言語で書かれているか
□ 作業手順は、写真や図を用いてわかりやすくなっているか
□ 作業手順書は作業場所から容易に確認できる場所に掲示されているか
□ 作業者は取り扱う機械設備について、事前に十分なトレーニングを行っているか
□ 治具を活用して、寸法や位置決めが容易に精度高く行える工夫がされているか
②加工後の検査
次工程に不具合品を送らないためにも、加工後に検査を行い、良品のみを次工程に送る仕組みが大切です。また、検査員には、適正や経験、技能を持つ検査員を認定し、認定された検査員のみが担当する仕組みも必要です。寸法や形状などの計測を行う場合は、毎回メジャーで計測するのではなく、治具を利用して簡単にサイズや形状を確認できるようにすると、作業時間が短縮されて生産性が向上します。
□ 検査手順は定められているか
□ 合否の判断基準は明確になっているか
□ 検査は技能や資格を持つ検査員が担当しているか
□ 検査記録は残されているか
□ 治具などを活用して、正確かつ効率的な検査が行われているか
③NG品の識別管理
検査工程でNGと判断された不具合品は、良品への混入を避けるために明確に分けて管理しなければいけません。また、加工不良(位置ズレなどの加工ミス)は、放置すると多発する可能性がありますので、なぜ発生したのかを速やかに確認し、加工設備の調整や治具の工夫によって改善しなければなりません。不具合の発生は、記録され、定期的にレビューされ、発生工程へフィードバックを行い、品質改善につなげることも重要です。
□ 不具合品は良品と明確に区別された場所に置かれ、混入の恐れが無い
□ 不具合品の発生が記録されている
□ 不具合内容を定期的に確認し、発生件数と内容をレビューする仕組みがある
□ 加工不良は速やかに調査され、再発防止の対策を行っている
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