品質管理の原点から考える多品種少量生産の不良削減

投稿日

 ある一流会社での話です。大量生産ラインでは、不良の発生が非常に低く抑えられている一方で、多品種少量生産ラインでは「ある程度の不良は仕方ない」という空気が蔓延しており、いろいろ対策を打っても一向に良くならない状況でした。そんなある日、物づくり革新実践塾のDr. Practiceが社長を尋ねてきて、「モデルラインを選んで、品質管理の原点に帰って、とことん突っ込んでみなさい。そうすれば、多品種少量生産ラインの品質管理は難しいという先入観は吹っ飛でしまいますよ。」 と話されました。
 
 社長は半信半疑で、まず「品質管理の原点」について考えてみた。品質って何で決まるのだろう?、物を作るには、作業者が、材料を、一定の方法で、機械に掛けて、製品が出来る。その際に、作業者が熟練しており、材料がいい状態で、方法が正しく、機械の調子が良ければ、いい製品が出来るはずだ。不良が出るということは、作業者(Man)が悪いか、材料(Material)が悪いか、方法(Method)が悪いか、機械(Machine)の調子が悪いか、4Mのどれかが悪いからだ、と気付きました。
 
 このことを多品種少量生産ラインのリーダーを集めて話したところ、「理屈は確かにそうだが・・」というリーダーが多い中で、1人のリーダーが「今まで何となく考えてましたけど、確かにそうです。私のラインでやってみましょう。」 と申し出ました。このリーダーは、ラインの作業者全員と数日かけてラインの機械の不具合を徹底的に直し、各作業者は、作業方法をもう一度しっかり確認し、次に、状態のいい材料を選んで、準備を整えた。そして慎重にかつ自信を持って作業を開始した。最初のロットは5個だったが、すべて良品だった。数日間続けて、その成績はこれまで考えられないレベルに向上していました。
 
 日本のものづくりの強みは、“品質を造り込む”ことで品質不良をPPM(100万個に1個, 0.0001%)のレベルにまで下げる技術を確立したことにあります。“ポカヨケ”は造り込みのひとつの方法です。例えば、本体の右と左に同じようだが‘違う’部品を組み付ける場合に、ウッカリ(ポカ)して左右の部品を間違えて組み付けて不良を出してしまうのを、治具を工夫し、右には右の部品しか、左には左の部品しか組み付けられないようにすることが“ポカヨケ”です。
 
 どんな場合にも不良が出る前には、必ずその原因がある(ここでは左右の部品を取り違える)ので、原因となる作業(不良が発生する源:源流)を検査し、異常を検知して対策打てば(左右の部品を取り違えたら組み付け出来な...
 ある一流会社での話です。大量生産ラインでは、不良の発生が非常に低く抑えられている一方で、多品種少量生産ラインでは「ある程度の不良は仕方ない」という空気が蔓延しており、いろいろ対策を打っても一向に良くならない状況でした。そんなある日、物づくり革新実践塾のDr. Practiceが社長を尋ねてきて、「モデルラインを選んで、品質管理の原点に帰って、とことん突っ込んでみなさい。そうすれば、多品種少量生産ラインの品質管理は難しいという先入観は吹っ飛でしまいますよ。」 と話されました。
 
 社長は半信半疑で、まず「品質管理の原点」について考えてみた。品質って何で決まるのだろう?、物を作るには、作業者が、材料を、一定の方法で、機械に掛けて、製品が出来る。その際に、作業者が熟練しており、材料がいい状態で、方法が正しく、機械の調子が良ければ、いい製品が出来るはずだ。不良が出るということは、作業者(Man)が悪いか、材料(Material)が悪いか、方法(Method)が悪いか、機械(Machine)の調子が悪いか、4Mのどれかが悪いからだ、と気付きました。
 
 このことを多品種少量生産ラインのリーダーを集めて話したところ、「理屈は確かにそうだが・・」というリーダーが多い中で、1人のリーダーが「今まで何となく考えてましたけど、確かにそうです。私のラインでやってみましょう。」 と申し出ました。このリーダーは、ラインの作業者全員と数日かけてラインの機械の不具合を徹底的に直し、各作業者は、作業方法をもう一度しっかり確認し、次に、状態のいい材料を選んで、準備を整えた。そして慎重にかつ自信を持って作業を開始した。最初のロットは5個だったが、すべて良品だった。数日間続けて、その成績はこれまで考えられないレベルに向上していました。
 
 日本のものづくりの強みは、“品質を造り込む”ことで品質不良をPPM(100万個に1個, 0.0001%)のレベルにまで下げる技術を確立したことにあります。“ポカヨケ”は造り込みのひとつの方法です。例えば、本体の右と左に同じようだが‘違う’部品を組み付ける場合に、ウッカリ(ポカ)して左右の部品を間違えて組み付けて不良を出してしまうのを、治具を工夫し、右には右の部品しか、左には左の部品しか組み付けられないようにすることが“ポカヨケ”です。
 
 どんな場合にも不良が出る前には、必ずその原因がある(ここでは左右の部品を取り違える)ので、原因となる作業(不良が発生する源:源流)を検査し、異常を検知して対策打てば(左右の部品を取り違えたら組み付け出来ない)、異常は発生しても不良の発生には至らないということです。分ってみれば『何だそんなこと当り前じゃないか』ということですが、コロンブスの卵です。
 
 品質不良の発生源は、Dr. Practiceの寓話で社長が気付いたように、作業者(Man)が悪いか、材料(Material)が悪いか、方法(Method)が悪いか、機械(Machine)の調子が悪いか、4Mどれかにあります。その源を、ベストの状態にし(寓話の成果)、その後は源の不具合を検知して対策を打つことで、多品種少量生産ラインでも大量生産ラインと同じように品質不良を低く抑えられるのです。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

鈴木 甫

「生き残る」のは “強いもの” でも “賢いもの”でもなく「変化に対応できるもの」!「ポストコロナ『DX』の激変する環境に対応する企業支援」に真剣に取り組んでいます!            E-mail: h.suzuki@dr-practice.com

「生き残る」のは “強いもの” でも “賢いもの”でもなく「変化に対応できるもの」!「ポストコロナ『DX』の激変する環境に対応する企業支援」に真剣に取り組...


「品質マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
中国進出での失敗事例 中国工場の品質改善(その3)

       【第1章 中国進出での失敗事例】    前回のその2に続いて解説します。 &n...

       【第1章 中国進出での失敗事例】    前回のその2に続いて解説します。 &n...


品質保証度評価法とは(7) 【快年童子の豆鉄砲】(その34)

  ◆各構成因子に対する係数値の求め方(その2) 5.社内製品設計の不具合発生防止保証度係数“C”の 求め方 ...

  ◆各構成因子に対する係数値の求め方(その2) 5.社内製品設計の不具合発生防止保証度係数“C”の 求め方 ...


KI法(ケイアイ法)、結果が悪いのは工程が悪い・作業が悪い!

 品質問題の解決について以前説明した“ポカヨケと源流検査”は品質不良を起している原因(問題作業)が分っている場合に効果的ですが、新...

 品質問題の解決について以前説明した“ポカヨケと源流検査”は品質不良を起している原因(問題作業)が分っている場合に効果的ですが、新...


「品質マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
QCサークル活動 生産現場の悩みとは

 「忙しいから」「人がいないから」これは、どこの企業も条件は同じです。工夫して時間を捻出している企業が勝ち組となります。つまり、生産性を上げる &rArr...

 「忙しいから」「人がいないから」これは、どこの企業も条件は同じです。工夫して時間を捻出している企業が勝ち組となります。つまり、生産性を上げる &rArr...


品質コストマネジメント導入について

       1. 想定事例  従業員1000人の印刷会社です。会社は、QMSのマネジメントシステムの認証を取得していますが、QMS活動は営業...

       1. 想定事例  従業員1000人の印刷会社です。会社は、QMSのマネジメントシステムの認証を取得していますが、QMS活動は営業...


抜取検査で全数検査と同じ効果を出す 中国企業の壁(その29)

        以前開催した「トヨタ生産方式による工場生産性向上と中国展開セミナー」の中で講師の青木先生は、品質を確保するには抜取検査で全数検査と同...

        以前開催した「トヨタ生産方式による工場生産性向上と中国展開セミナー」の中で講師の青木先生は、品質を確保するには抜取検査で全数検査と同...