今回は、国内の精密加工業に焦点を絞って、加工業の置かれた現状、海外とのコスト競争、受注と価格設定について、加工企業の経営課題を解説します。
1. 加工業に無理難題な製作検討が来た場合
ご存知のとおり、昨今の加工業者さんの技術力は2極化しており、加工技術が高い会社と、技術が維持または退化している会社に分かれ、技術力の高い会社ばかり忙しくなっている状況です。
そのような中、無理難題に対応できる加工業者は、工数管理もきちんとできており、蓄積したデータベースにより、しっかりとした見積もりができています。
逆に、そこまで対応できない会社に無理難題が来た場合は、見積もり条件をつけることが多いようです。例えば、6Fなど加工素材の状態や、加工機械の指定、寸法精度の上限などです。ただし、過度な条件付けは失注の可能性が高くなります。
また、大手企業から手配される図面に対し、逆に自社の得意な加工を活かした設変を提案して受注を得る企業もあります。手配図面には、加工の諸事情が考慮されていないことがあるためです。
2. 海外のコストレベルと太刀打ちするための対策
海外メーカーに対抗するための国内加工業者の取り組みですが、小規模の加工業者ほど、「納期」に付加価値を置いた受注活動を行なっています。海の向こうで半分の金額で受注するメーカーに対抗するには、地の利を活かすしかないと考えているためです。
ただし、こうした方針についても、「技術」の裏づけが必要です。地の利を活かした国内メーカー同士でも競争はあるわけで、「簡単な加工で儲けたい」と考えていては、どんなに短納期で受注しても、採算を合わせるには困難なほど単価が下がっています。
今や国内の加工業者にとって経営を維持させるには、高難易度のものを極めて短納期で受注してちょうどくらいではないでしょうか。しかし、短納期品は、継続受注できるものが少なく、受注の波を解消するための努力が必要になります。
3. 国内の価格競争の中、受注と価格設定について
「自社の最低ラインを割っても受注するか」について、経営の教科書には、新たに追加費用(主に人件費)が発生しなければ、「限界利益がプラスであれば受注してよい」とあります。
私が活動拠点とする中部地方では、相見積もりによる加工手配が極めてひどく、引き合い図面を、他社に相談すれば、ほとんどの図面がいくつか別ルートからまわって来ているといった状況です。発注側が安く仕入れるために、図面をバラマキまくっているのでしょう。
したがって、こうした採算ラインを割ってしまう案件をかき集めなくても安定した受注が得られる方法を考えなくてはいけません。しかし、会社運営には固定費が発生しますので、それを上回る売上を確保するために、個別案件としては採...