エリヤフ・ゴールドラットの詳細ですが、イスラエルの物理学者で、数々のビジネス小説を発表し、制約条件の理論(TOC)、クリティカルチェーンなど、ビジネスにおける新しい理論を生み出しました。(こちらの解説記事から確認下さい。)制約理論の要点はシンプルで、すべてを制約条件に合わせて考えようというものです。世の中の複雑な仕組み全てを管理しようとすると大変な労力です。しかし実態を良く観察すると、どこかがボトルネックになっている場合が多いため、その制約だけきちんと管理すればあとはその他の改善手法による継続的改善でもうまくいくという理論で合理的に手を抜く方法、特徴とも言えます。
80年代日本製造業の成功を仔細に観察したゴールドラット博士が体系づけたステップで、それを紹介した小説「ザ・ゴール」は世界で1000万部、日本だけでも70万部売れたと言われます。
このTOC(Theory of Constraints:制約理論)を一躍有名にした「ザ・ゴール」からレビューしますと、主人公は、ボーイスカウトのハイキングに同行して、その行進の様子から統計的変動を持つ製造現場との類似性を発見します。そして試行錯誤の結果、最も足の遅いハービーに太鼓を持たせ、彼の前には一定の間隔を確保し、先頭者と彼をロープで一定間隔に結ぶというアイデアに至ります。この3つの施策をドラムバッファロープ(DBR)と名づけ、ボトルネックが存在する製造プロセスに応用することで、短い納期と少ない在庫を同時に実現します。
1. TOC(Theory of Constraints)の概要
2. Constraints(制約)とは
3. スループットとは
(2) 在庫(原材料、仕掛、製品など)を低減する
(3) 業務費用(資材費以外の総経費、直接人件費も含む)を低減する
4. TOC開発の経緯
TOCを世に広めた小説「The Goal(ザ・ゴール)」は21カ国語に翻訳され、全世界で400万部近を超える大ベストセラーとなっています。世界に名だたる航空機、自動車、半導体、化学、鉄鋼といった企業やアメリカ軍、自治体、医療機関、幼児教育など多岐に渡る企業がTOCを導入し、その成果もそれぞれにめざましいものがあります。国内でも、富士通、NEC、エプソン、日立ツール、日立金属などの大手製造業を中心に、数十社から目覚ましい成果が報告され、TOCは経営革新ツールとして注目を集めています。
- ゴールドラット博士がスケジューリング手法を開発
- 生産管理用ソフトOPT (Optimized Production Technology) が米国で一躍有名になる
- OPT背後のコンセプトを小説「The Goal」として発表し、200万部以上の超ベストセラーとなる。
- 博士がソフトウェアに次のような疑問を抱く
・1990 ヘイスタックシンドローム
- 博士がOPT販売会社を退職し、AGI (Avraham Y. Goldratt Institute) を設立
- 「The Goal」で説明した手法の教育に専念
- TOCに基づく原価管理手法を開発
- Thinking Process(思考プロセス)を開発
・変化に対する抵抗の問題
・市場制約の問題
・方針的制約の問題 - 1994 Thinking Process を小説「It's Not Luck」として発表
- 1997 クリティカルチェーンプロジェクト管理 ( Critical Chain Project ...
5.制約理論(DBR)適用の留意点
実はボトルネックが常に固定されているケースは少数派で、多品種少量生産の生産工程の場合などでは、日によって製品によってボトルネック工程があちこちに動く方が多いものです。そんな時は、各工程に納期から最短時間を差し引いた日程に対してどれだけ余裕があるかを設定して、その余裕度に応じてアクションを取るS-DBR(Simplified-DBR)を使います。これならボトルネックの位置を気にせず作業に集中できます。
一連の体系の中で最も難しいのは心理的惰性、すなわち人や設備が遊んでいる時につい急がない作業をしてしまうことです。生産スケジューリングに忠実な真面目な人ほど手をつけてしまい、結果として現場に仕掛品が増えて混乱し、不良や納期遅れを作ってしまいます。要らないものを現場から排除しただけで、なぜか多くの問題が解決するのは5Sの効果とも似ています。
ここで重要な概念は、全員一律に能力を発揮するのではなく、ボトルネックとなる一人または二人の能力に焦点を当てて改善することで、全体が速くなるということです。全体が速くなると、どこか別のメンバーがボトルネックとなって、それが全体の速度を遅くします。この新しいボトルネックに対しても同じことを繰り返すと、全体の進行速度(スループット)はますます速くなり、ボトルネックが変化しなくなるまでこれを追究します。
TOC(DBR)を活用することで、生産管理がシンプルになり、全体最適が実現してリードタイムが短縮して、在庫の削減と納期遵守率改善、不良削減が同時に実現可能です。