経営コンサルタントやSIベンダーが提案する「ソリューション」とは、大仰に言えば経営課題の解決です。ソリューションがもたらす価値は、解決する経営課題(問題)の大きさで決まります。経営課題とまではいかなくとも、私たちは通常の業務の中や日常生活においても、程度の差こそあれ日々「問題」を「解決」しています。
ここでいう「問題」には必ずしも緊急性や重要性はなく、解決すべき事柄を問題と言います。しかし、日々直面する問題は、学校や資格試験などの問題とは違って何を解決すればよいのかが明確でありません。現状がどういう状態で、それが解決したらどういう状態になるのかは、自分で決めなくてはなりません。もちろん、どう解決するのかも重要なのですが、まずは解くべき問題を定義しなければ解決はありえません。
ところが現実には、問題を定義せずに答えに飛びつく場面に出くわすことがよくあります。日常の業務の中では、優秀な社員やベテランほど、すぐに答えを出してしまう傾向が見られます。いささか簡単ですが、例として工場の安全管理を挙げましょう。作業時に工員が安全靴を着用していないとします。だからと言って、安全靴を履かせようとすぐに結論づけるのは性急に過ぎます。安全靴を履かない理由として、靴が古くて役に立たない、靴が衛生的でない、作業場が暑いので足が蒸れてしまう、安全に対する工員の意識が低いなど、様々な原因が考えられ、打つべき対策はそれぞれ異なるからです。
根本原因を突き詰めなければ「好ましくない事象」への対策は必然的に対症療法となってしまい、好ましくない事象が慢性疾患のように何度も再発しては、別の行き当たりばったりの対策を行うということの繰り返しになります。また、その根本原因が生んでいる、他の好ましくない事象へも対策できる折角の機会を逸してしまいます。
根本原因に対処せず、工員に安全靴を履くよう命じるだけでは、一時的には改善してもやがて元の木阿弥になります。仮に安全靴の衛生状態が問題であれば、衛生への対策によって、作業後の手洗いなども同時に改善されるでしょう。
以上見てきたように、ソリューションには適切な問題定義が必要不可欠です。表層的な事象に捉われて対策に飛びつくのではなく、全体の構図を深掘りしていけば、根本原因にたどり着くことができ、最初に着目した事象を含めて、根本原因から発生する事象をまとめて検討できます。そうした検討の結果、問題定義が当初思っていたこととは大きく変わってくることもよくあります。
こうした分析に適しているのが、因果関係に基づく思考法です。国際協力の現場で用いられるPCM(Project ...